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フェティッシュの火曜日
 
冷麺以外の盛岡名物を食らう


盛岡といえば「盛岡冷麺」がまず思い浮かぶ。
最近では居酒屋のメニューにあるほど全国的に広まったご当地グルメだ。
このほかに「盛岡じゃじゃ麺」というのもある。
その手のテレビ番組でよく紹介されているので、知っている人も多いと思うが、これはまだ全国に普及していない。
そして、もうひとつの盛岡名物に「薄焼き」というのがあるらしい。
名前だけではどんなものか全く想像できないが、昔から伝わる食べ物だということだ。

工藤 考浩



ジャージャー麺とは違うもの

盛岡じゃじゃ麺と聞いて、まず思い浮かぶのが中華料理屋さんのメニュー「ジャージャー麺」だ。
汁のない麺の上に肉味噌やキュウリがのっている、あれである。
それなら僕も何度か食べたことがあるが、盛岡のはちょっと違うらしい。


盛岡にやってきた

北海道出身で数年前から岩手県に住んでいる当サイトライターの櫻田さんに盛岡じゃじゃ麺がどんなものなのか聞いたところ、「すごくぼんやりしてますよ」とのこと。
盛岡冷麺のようにはっきりした特徴のある味でもなく、わんこそばのようにダイナミックでもない、ぼんやりとした食べ物だというのだ。
「三回くらい食べると、きっとおいしさがわかります」という言葉に、ますます謎と期待を深めつつ食べに行った。


メニューに食べ方の説明が

しきたりがある麺

お店にはいると店員さんが「じゃじゃ麺ははじめてですか?」と僕に聞いた。
大きな荷物を持っていたので観光客だとすぐにわかったのだろう、親切にじゃじゃ麺の食べ方を説明してくれた。

テーブルの上には酢、ラー油、塩、コショウ、にんにく等の調味料と、ボールに入った生卵が置かれている。
まずは麺を食べて、食べ終わったその皿に生卵をとき、そこに熱いゆで汁を注いでスープにして飲むというのが盛岡じゃじゃめんの食べ方なのだ。


麺はうどんのような感じ
肉味噌は、一般的なジャージャー麺ほど甘くない

早速そのしきたりにしたがって、まず麺を食べた。
ジャージャー麺とはちがってうどんのような麺だ。
肉味噌がそれほど甘くなく、僕は一般的なジャージャー麺よりもこの盛岡じゃじゃ麺のほうが好みだ。
ただ、非常にシンプルな味付けなので、テーブルに並んだ調味料を自分の好きなように加えて、味を作ってゆくのが地元の人の食べ方らしい。
僕もニンニクとお酢とラー油を入れて食べてみたところ、そのまま食べるのとは大きく違う、別の食べ物といってもいいくらいの変化があった。
これはこれでまたおいしい。

麺を食べ終わったところで、おもむろに卵を割り入れてとき、「すいません、チータンタン(鶏蛋湯)お願いします」と言うのだと櫻田さんに教わっていたので、それに従った。
店員さんはお皿を持って厨房に入り、数十秒後にふわふわ溶き卵汁の入ったお皿を持ってきてくれた。
なんだかものすごく楽しい。
アトラクション性のある食べ物だ。
この状態で汁に味はついていないので、また自分で肉味噌なり塩コショウなりを加えてからいただく。

うちのおじいちゃんは、ご飯を食べたあとの茶碗にお湯を入れて飲んでいた(その延長なのか、食べ終わったアイスの容器にお湯を入れて飲んでもいた)が、このチータンタンというのはそれに似ている。



食べ終えた皿に卵を入れ
ゆで汁を注いでもらう

また食べたい

「ぼんやりしています」という櫻田さんの言葉にうなずける部分もあるが、僕はじゃじゃ麺をとても気に入った。
味としては確かに特徴的なものはないが、あとで思い返すとまた食べたい。


つづいては薄焼き

薄焼き・どんどん焼き

そしてもう一つの盛岡名物「薄焼き」を食べてみよう。
「どんどん焼き」とも呼ばれるこの食べ物は、東北地方でお祭りなんかの時に食べるもので、お好み焼きやもんじゃ焼きの系統の、いわゆる「粉もの」のおやつらしい。


肴町アーケード
ひらがなだと洋品店なのに鮮魚店っぽくなる

縁日で売られている食べものだが、肴町アーケードというところに店舗があって、そこで食べられるというので向かってみた。

薄焼きは昭和初期にはすでにあったものらしく、歴史のある食べ物だ。


薄焼きやさん発見

アーケードを歩くとすぐに「盛岡うす焼き」というのぼりが見えた。
お店の前には何人かお客さんがいた。
薄焼き以外にもおやきやおこわなども売っているようだ。
お客さんがとぎれるのを待って薄焼きを購入し、お店の人に話しを聞いた。


うす焼きは250円
リレーのバトンくらいのサイズ

狭い範囲で人気の食べ物

昔から食べられているおやつということで、駄菓子屋でおばあちゃんが焼いているイメージだったのだが、店の中にいたのは古田新太に似た感じのワイルドなお兄さんだった。
東京の人が買いに来るのは珍しいと驚かれたが、ローカルのテレビ番組では取り上げられることも多いそうだ。

てっきり学校帰りの中高生なんかが買ってゆくのだと思ったら、主なお客さんは年配の人とのことだ。
それも街の中心部に住むお年寄りがほとんどだそう。
郊外の新興住宅地に住んでいる人たちは食べないというのだ。


巨大ヨックモックのようにも見える

説明を聞きき終わって「はい」と手渡されたのは、リレーのバトンをひとまわり小さくしたくらいの、筒状のあたたかいものだった。
今までこういうものを手にしたことがない。
冷めないうちに食べよう。


木の皮で包んである
クレープとお好み焼きの中間みたい

ライトお好み焼き

調べたところ、この薄焼きはもんじゃ焼きから派生したものとのことだが、生地の焼き加減はしっかりしていて、キャベツを外したお好み焼きのクレープ風といった感じだ。
味付けはしょうゆ味で、小エビの風味が香ばしい。
生地はモチモチしていて、食べごたえがある。
刻んだ紅ショウガとネギがアクセントになっていて、お好み焼きよりもさっぱりしている。
これはおやつに最適だ。
なぜ盛岡の若者はこれを食べないのか、もったいない。


シンプルだけどそれがまたおいしい

いいコピーだと思った

じゃじゃ麺はかなり不思議な食べ物だ。
食べ方といい味といい、独特なのだが奇をてらっている風でもなく、完成されている感じがする。
薄焼きの方も、外でそのまま食べられるようにくるっと巻いてあり、合理的な工夫がされている。
じゃじゃ麺は東京でも食べられる店があるらしいので、食べに行ってみようと思う。
薄焼きは東北地方にいろんなバリエーションがあるようなので、そちらもぜひ食べてみたい。



 
 

 

 
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