何かの用事でどこかに旅行に行くとき、そこでどんなものを食べようかとあらかじめ調べていくことが多い。地元の名店の味や、ご当地食を食べてみたいからだ。
先日、埼玉北部へ出かける前に見つけたのは、「ピザライス」なる食べ物。知ってるようで知らないメニュー。
「ピザ」も「ライス」も知っている。でもそれがつながった「ピザライス」は初耳だ。なんだか気になる響きのある言葉だとも思う。そういうわけで、実際に食べてきました。
(小野法師丸)
不思議と魅力的な名前の食べ物「ピザライス」
ローカルフードとしても聞いたことがなかった「ピザライス」。このメニューを出す店はいくつかあるようだが、今回やってきたのは、埼玉県深谷市の「Holly」という喫茶店だ。
決して大きなお店というわけでなく、来訪時はマスターが一人で切り盛りしていた地元の喫茶店。レンガ、観葉植物、人工芝。昔ながらの喫茶店という感じが構えにも漂う。
店の前に置いてあったボードにも「ピザライス」の文字が。もしかしたらその実態はドリアと変わらないのではないか思っていたのだが、ドリアはドリアで別に書いてあることから、違う食べ物であろうとわかる。
明るい雰囲気で落ち着いた感じの店内。調度品は年季を感じさせながらも、それがしっとりした味わいをかもし出している。さて、メニューを見てみよう。
そこには確かに「ピザライス」の文字が。しかもいろいろと種類がある。「ピザライス」という言葉だけでも惹かれるが、「納豆シメジピザライス」などとなると、さらに不思議な魅力が出てくる。「ピザライス」が「パラダイス」にも見えてくる。
単品もあるようだが、お店のおすすめはセットメニュー。サラダ・スープ・ドリンクがついてお得な880円。この中から今回は、スタンダード的な「ミックス」と、異彩を放つ「納豆」を注文してみた。
本棚にあるたくさんのマンガの中から、「女仕置き人 ゼブラ」を選んで読みながらピザライスを待つ。カウンターの向こうから響く音を聞いていると、材料のカットも注文を受けてからするようだ。手作り感が伝わってくるひとときだ。
しばらくしてやってきた「ピザライス」は、一見したところグラタンやドリアと変わらないように見える。まずはミックスの方から試してみよう。
お皿に盛ったごはんの上に、ハム・玉ねぎ・きのこなどを乗せ、チーズをかけてピーマンをトッピングしてオーブンで焼いたもの。この食べ物を説明すると、そういうことになる。それはうまいだろうな、とわかっていただけるだろうか。
そして気がついただろうか、トマト味のいわゆるピザソースは使われていないのだ。マスターによると、使ってみたところ味としてまるで合わなかったとのこと。
しかし、ライス部分はただの白ごはんではない。醤油・だし・バターで味がついているのだ。和風なのが意外だ。
ベースの味付けは納豆ピザライスの方も同様。納豆・玉ねぎ・海苔などが具としてチーズと一体化し、意外な組み合わせながらも違和感なくおいしい。ドリアと異なりホワイトソースがないので、シンプルであっさり目とも言える。
マスターによると、30年ほど前から出しているメニューであるらしい。思った以上に歴史がある。
「この辺りのお店ではよくあるメニューなんですか?」と訊いたところ、「いや、あんまり聞かないねえ」とのこと。調べてみるといくつかあるようなのだが、地元の人も地域独特の食べ物だという意識はなさそうだ。
※「ピザライス」がメニューにあるお店 埼玉県上里町埼玉県本庄市群馬県高崎市
なんだか気になる響きのあるメニュー「ピザライス」。確かにピザ的、でも和風味で、ホワイトソースがないところがドリアとは違う。ピザともグラタンともドリアとも微妙に違うところのあるメニューだった。
セットのコーヒーと一緒に、常連のお客さんが差し入れに持ってきていた温泉まんじゅうをくださった。このあたりも町の喫茶店ならではの味わい。ごちそうさまでした。
「Holly」 埼玉県深谷市稲荷町1-19-21