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ロマンの木曜日
 
普段見れない歯科器具をじっくり見たい


このライトが点いても、ヒー!と思わなくなる、かも。

つい数ヶ月前まで歯医者さんに通ってました。あのキュイーン!というドリル音は三十路になっても馴れるもんじゃない。しかも口の中にいろいろ入れられるのに、何ひとつ自分では治療風景が見れないというのが不安、というか妙な感じなんですよね。そりゃ治ればそれでいいんだけど、過程が見れない分どうも納得してないというか。

昔に比べて歯科医さんは治療の説明はしてくれるようになった気はするけれど、器具自体はいまだよく分からない。器具を知ればあのキュイーン!音にも優しくなれるかもしれない。ということで歯科器具のショールームに見学に行ってまいりました。

大坪ケムタ



キュイーン!の正体はこのドリルだった

言うまでもない話かもしれないが、自分は歯医者は嫌いだ。「言うまでもない」って前置きは失礼かもしれないけども、「歯医者大好き!」って人も会ったこともないし、好きになる要素もなかなかない。昨年重い腰を上げてたぶん10年ぶりくらいに通い始めたけど、まぁ馴れることはない。歳月の進化か、子供の頃に比べて痛みが少なくなった気はするけども。


奥の方は銀歯だらけですが、見せられてもね。


治療器具は進化してるんだろうけど、通ってもせいぜい数年に一度程度だろうしあまり実感はわかない。具体的にはどんな部分がどうなってるのか?一度あの器具をまじまじと見せていただきたい。

ということで、今回歯科器具について教えていただきにうかがったのは、タカラベルモント(株)さんのショールーム。普通の車やキッチンなんかのショールームと違い、基本的には要予約の歯医者さん専用です。


綺麗なショールームにはあの診療用椅子がいっぱい。

椅子+器具ほかいろいろなデンタルユニットが10種類近く。


展示用なのでフル稼働するわけではないけども、様々な歯科用椅子が並んでるのは妙に新鮮。タカラベルモントさんはもともと理美容事業の歴史が古く、歯科器具の中でもこうした椅子や大型のデンタルユニットが中心だそう。そういえば美容室の椅子と歯医者の椅子って似てますね。

椅子も気になるところですが、まずは口の中に入れられるアレの事を知りたい。ということでタカラベルモント(株)デンタル事業部の小藤田さんに解説してもらいました。


時に痛い動画も見せて説明してもらいました。ひー。


まずじっくりと見せていただきたいのは、歯医者の音といえば?と言ったら10人中9人はモノマネしそうな「キュイーン!」なアレ。言うまでもなく歯を削るためにあるこのドリル、「エアタービン」と呼ぶそうです。


お世話になるんだけど、憎っくきアイツでもある。


先はドリル部+穴がちょこちょこ。
実際はこういうダイヤモンドチップが。

「中に風車みたいなパーツがあって、送られた空気で先のドリルを回転させるんです。あのキーン!って音は風車が回転する音なんですよ」

−−へ〜、電気じゃなくて空気なんですね。

「電気で回るものもあるんですけど、こちらのエアタービンの方が多く使われますね。エアタービンは1分間に40万回転という速さでバーが回転するんです。歯の一番外側はエナメル質といって、人間の組織の中で一番堅いんですが、それを削るのに向いてます」

−−あ、この電気のヤツは見た目似てますけどサイズは大きいし重いですね。

「電気のものは『マイクロモーター』とか『電気エンジン』と呼んだりするんですけど、歯を削る以外に歯の根の治療に使われたりしますね。あとゴムを先につけてクリーニングしたりとか」


上3つがエアタービンで一番下がマイクロモーター。


同じ口の中に入れるにしろ、手前と奥では入れられるサイズも違う。ということでエアタービンもマイクロモーターもサイズ大小揃えてるのが普通だとか。

あらためて精密機械だなー、と思うのが、聞いたとおりのドリルを回転させる空気はもちろん、熱を冷ますための水、そして明るくするためのライトがこの機器に通じていること。穴のひとつひとつが小さい小さい。


ドリル周りの小さい穴が水、その下の窓がライト。
空気・水・電気が通じてるんですねー。


どちらのドリルも先のアタッチメントもいろいろ。
歯の表面を磨く用のものも。


工具っぽいんだけど、日曜工具に比べると断然細かい。落として芯が曲がったりすると危険なだけに、メンテナンスや管理は細かくする必要があるんだとか。口の中に入れるもんですもんね。

自分が歯医者にかかってる姿をイメージすれば分かると思うけれど、治療の時というと右手に歯科医、左に歯科助手がいて口の中に2本くらい常に何か入ってる状態が頭に浮かぶはず。先に書いたエアタービンやマイクロモーター以外に入ってくるのが、口内を洗浄する水とエア、それとバキューム。


洗浄用の水+エア。両方でミスト。
こちらはバキューム。ガポガポ音しますよね。


口の中で水を出したり吸ったり。よく考えてみると、施術そのものはそれほど変わってないような。最近では「無痛治療」なんてのもあったりと、過程は多少違ってるかもしれないけど。

−−治療法自体は昔とそんなに変わってないんですか?

「そうですね。ただ昔は虫歯になる方が多くて、歯医者さんもある程度数こなしていかないと間に合わなかったので悪くなりそうな部分も多めに削って埋める、という傾向だったんです。でも今は極力自分の歯は削らずに残していこう、という時代になってます。あと素材なんかも変わってますね。歯につめものする時、光をあてられた事ないですか?」

−−あー、何かあった気がします。

「最初は柔らかいんですけど、特定の光をあてると硬化する樹脂があるんです。コンポジットレジン、略してレジンとかCRって呼んでます。こういった材料や接着剤などがどんどん良くなってます」


動画で見せてもらいました。固まる!


なるほどなー。普段見れない口の中ではこういったモノたちが活躍してたんだなあ。さらに削る系アイテムはこれだけじゃないんです。治すだけが歯科医の仕事じゃないんです、今は。

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