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土曜ワイド工場
 
世界で唯一エジソンの電球を作っている会社


竹が光るってかぐや姫みたい

エジソンが電球を発明したのは1897年のことだ。

その電球のフィラメントには京都の竹が利用されていた。
その後どんどんと改良された電球は現在、フィラメントは竹ではなくタングステンが使われている。そのためエジソンの作ったフィラメントが竹という電球の明るさは、もう目にすることはできない。

と思っていたら、世界で唯一そんなエジソンの電球をいまなお作っている会社があった。ぜひ見たいと思いその会社に行ってみることにした。

地主 恵亮



エジソンの発明した電球

ロウソクと違い電球は風が吹いても消えない。それは単純だけれどとてもありがたいことだ。そんな電球を作ったのは発明家のトーマス・エジソン。彼は家にたまたまあった扇子の骨組みに使われていた竹を見て、フィラメントに竹を使うことを思いついたそうだ。


普通は扇子を見てもそんなことを思いつかないからエジソンはすごい!

エジソンの電球のフィラメントには京都の竹が使われた。
それは、京都の竹は節から節までが長いことや、茶せんの職人が多くその竹をフィラメントになるほどに細く細く削れる技術があったためだ(その他にも、土に鉄分が多かったことや気候などの理由もある)。


フィラメントとは矢印の部分です

エジソンが最初に作ったこの電球は、どんどんと改良が進みフィラメントが綿になり、タングステンになりと明るさを増していった。そのため、いまはエジソンが作った竹の電球はなかなか見ることができない。しかし、世界で唯一そんな電球を現在でも作っている会社があった。それは東京は品川にある「浅田電球製作所」という会社だ。


浅田電球製作所

エジソンハウス

品川の青物横丁駅から10分程度歩いたところに「浅田電球製作所」はある。一本奥まった道に入ればそこは昭和の香りを感じずにはいられない街だ。そんな場所にある浅田電球製作所の本社ビルは「エジソンハウス」と名づけられている。


エジソンが社長を務めたGE(ゼネラル・エレクトリック)に納品実績があるため命名を許可された

今回は取材をお願いしていたのでエジソンハウスのドアを開け社長からいろいろとお話を伺った。社長の写真を撮ってもいいかたずねると写真はNGと言うことで、なんとなく電球を持った自分の写真を載せてみた。


僕です(内容とは一切関係ありません)

 

エジソンの電球を復元

1997年4月に「浅田電球製作所」の浅田社長がエジソンの電球を復元した。それまでは竹のフィラメントを使った電球は昔作られていたものがわずかに残るだけで、フィラメントの寿命の問題等でその電球の光を見ることはできなかった。しかしこの復元により現代でもその光を見られるようになったわけだ。


これが復元されたエジソンの電球(フィラメントは竹)

浅田社長がエジソンの電球を作ったのはNHKの子供番組で焼き鳥の串でフィラメントを作れないかと依頼を受けたのがきっかけ。これが見事に成功し、後に竹のフィラメントを作ることになったそうだ。


これがその焼き鳥の串の電球

何でもフィラメントになる!

僕のような素人の考えではエジソンが使った竹も先に書いた焼き鳥の串も、そもそも光ることが考えられない。何で光るの? 何でフィラメントになるの? 何で燃えないの? とただでさえ分からない古典の授業をスワヒリ語で受けている時のような気持ちになってしまう。


これに入れればいいらしい(めちゃくちゃ重い)

上の画像の入れ物にフィラメントになる素材を入れ、周りにカーボン粉をぎゅうぎゅうに詰める。そして1000度以上で約7時間も蒸し焼きにし炭化させることでフィラメントになるそうだ。浅田電球製作所ではこの要領で作られたパスタやゴム、タコ糸などをフィラメントにした電球が飾られていた。社長いわく「植物ならだいたいフィラメントになる」のだそうだ。


パスタを使った電球

ゴムを使った電球

昭和初期の電球はフィラメントの部分に綿が使われていたことを考えるとフィラメントが竹やタコ糸などの一見燃えてしまいそうなものでも大丈夫なことが頷ける。ちなみに今現在は見る機会が無くなった綿の電球もこの浅田電球製作所ではいまなお作られている。


綿のフィラメントの電球

当時の綿の電球は暗かったそうだけれど、浅田電球製作所ではフィラメントに特殊な加工をすることでより明るい綿の電球を実現している。こちらは3000円で販売されており、若い女性なども「彼氏へのプレゼント」などで買いに来ると社長は言っていた。社長いわく「こういうのは3000円くらいだと欲しくなるでしょ」とのこと。確かに絶妙な値段設定、欲しくなります。


うどんの電球もあった

話はエジソンの電球に戻ります >
 

 
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