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フェティッシュの火曜日
 
突撃!ブログの晩ごはん

ブログの晩ごはんを食べにやってきた

取材に同行していただいた編集部の工藤さんと電車内で合流し、「へー、ちゃんとした格好できたんですね」といわれた。企画意図を説明しておいた工藤さんにすら、私はヨネスケに見えないということを理解した。

慣れないことはするもんじゃないなと、初めてズボンの裾をブーツにインした日みたいになんだかモヤモヤと恥ずかしい気持ちを内に秘め、ドキドキしながら目的地のチャイムを押す。


ヨネスケと違って、突撃ではなく、事前連絡をしての訪問なので、出迎える方も特にリアクションとかはない。これはヨネスケではなくて、「 くいしん坊!万才」の松岡修造の守備範囲なのではと、今気がついた。

せっかくこんな格好をしてきたので、シャモジを持って家の中をうろつかせていただく。


「これご主人が釣ったメジナ?え、野球の城島選手の!奥さんがファンなんだー」(ヨネスケの声に変換して読んでください)
「奥さん、晩ごはんこれから作るの?これイカ?ちょっと味見していい?」(本当につまみぐいする勇気はありません)

なんてやっているときに、奥さんから「記事のイメージと違って、ちゃんとした格好できたんですね。」といわれた。ここまでやってもヨネスケを意識していることは伝わらないのか。シャモジ持っているのに。

「いや、この格好はヨネスケの真似でして、今朝床屋にも…」という恥ずかしい説明を、顔を真っ赤にしながらしたのだが、旦那さんから「ヨネスケの髪型とか、俺わかんないわー」と追い打ちをかけられる。

ヨネスケのキャラで通すことはあきらめた。

 

キッチンブロガーインタビュー

別に今回の記事は「ヨネスケになりたい」という話ではなくて、ブログをみてうまそうだと思った晩ごはんを食べさせてもらうこと、そしてその人へのインタビューなので、今までの話は忘れていいです。

できたての料理を一品ずつだしていただくスタイルで、憧れていた晩ごはんを楽しみながら、ゆっくり話を伺った。


奥さんは写真は恥ずかしいということで、ご自宅にあったもので、一番イメージが近いものを載せておきます。 釣り好きの旦那さんなので、釣った魚を捌いたりは、ご自身で担当されるそうです。

  まずお二人って、何者なのでしょう。ブログを見る限り、料理とか写真とかを仕事にしているんですか。
奥さん

いえ、私は普通の専業主婦で、旦那も普通の会社員ですよ。今のデジカメはきれいに撮れるからそう思うだけで。

  いや、だったら私の料理も、もっときれいに撮れるはずなんですけどね。このブログをはじめたきっかけはなんだったのですか。
奥さん 最初は作った料理の備忘録。主人が毎週のように釣りにいくから、魚料理をいろいろと作るでしょ。それを忘れないように残していきたいっていうのがスタートですね。もちろんせっかくやるんだから、人に見てほしいっていうのもありますけど。

料理上手の人って、こういうナゾの機械を使いこなしますよね。 あと食卓に必ず「いい塩」がある気がする。これはユタ州の塩らしいです。久しぶりにケント・デリカットを思い出した。


サンマが食べられない生活


  釣りって、同じ魚が大量に釣れることが多いので、料理のレパートリーが必要ですよね。私はなんでも天麩羅か干物にしがちですけど。
奥さん そう、一回の釣りでカワハギ30匹とか、カツオ5匹とか。今の時期なら毎週アマダイばっかり釣ってくるの。そうなると、なかなか普通は作らないような料理も作るようになるから(注:高級魚のアマダイで練り物をつくったりする)、レシピを載せることで、誰かの役に立てばという思いもあります。でも自分の勉強のためっていう意味合いが一番ですね。やっぱりブログに書く前に、間違いがないか調べたりするから、ノートにメモするのとは違います。
  確かにただ作るのと、レシピを文章にして公開までするのとでは、自分の理解度が全然違いますよね。読む側からすると、釣り人にとって役に立つレシピが多くて、見ていて勉強になります。そのレシピを再現をする自信はないけど。

タコの大船(たいせん)煮。生きたタコを買ってきて作ったという大作。箸で簡単に切れるほど柔らかい。 海老塩麹焼き。隠し味のゆず胡椒の風味がうれしい。殻ごとバリバリ食べられる。

奥さん レシピっていっても、魚ばっかりだけど。生臭いブログでごめんなさいね。
  奥さんは釣りしないんですか。
奥さん いえ、私も釣りが好きなんだけれど、二人でいったらそれこそ食べきれないから、最近は全然いってないの。私、サンマが大好きなのに、もう何年も食べていませんよ!
  サンマは釣れませんからね。じゃあホッケとかも食べられませんね。
旦那さん いや、ホッケは毎年三月、青森にいって釣っているから大丈夫!

豆腐の塩麹漬け。ブログで塩麹を使った料理がおいしそうだったので、何品かお願いしますと私がリクエストしておいた。 いかしゅうまい。釣り人の家らしくスミイカと卵白のみと超贅沢。新鮮なエビみたいなムチムチした食感。上に乗っているカラシがかわいい。


酒のつまみはつくるけれど、お酒は飲まない夫婦


  ブログの料理をみていると、お酒に合いそうなのが多いですね。
奥さん

そう、酒のつまみみたいなのばっかり作っているんですが、私は全然飲めないし、主人も「家で酒を飲むくらいなら、そのお金で釣りに行く」っていうタイプなので、普段の食事はお酒なし。

  えー、なんだかもったいないですね。こんな料理でお酒を飲まないなんて。
旦那さん ところで今日は何を飲みますか?ビールと焼酎ならありますけど。
  いや、今日は取材なのでお茶でお願いします。
旦那さん じゃあとりあえずビールにしますか。
  はい、お願いします。

我々にうまい魚を食べさせるために、昨日、今日とご主人はアマダイを狙ったけれど、こういう時に限って釣れたのは小型が一匹と外道だけで、献立が変わってしまったらしい。 「今度カツオの一本釣りなんてどう?」「いいですねー、ぜひお願いします」 奥さんが料理を作っている間に延々と釣りの話をする。後日メバル釣りにご一緒させていただいた。

あれだけ「酒に合いそう」を連発しておいて、「お茶でお願いします」っていっても、説得力ゼロですね。なんだか催促したみたいですみません。



写真は旦那さんの担当


  あの写真は旦那さんが撮っているんですか。
奥さん

最初は私が撮っていたんだけれど、料理を作って、撮影をしてってやっていると、どんどん冷めちゃうから、主人が撮るようになったの。

  料理の写真って、それがありますよね。アツアツを食べてほしいのに、自分が撮影している間に冷めちゃうのが悲しい。揚げものとか特に。
旦那さん 俺がぱぱっと撮れば、その分熱いうちに食べられるから。
奥さん

主人が撮った方がおいしく見えるみたい。だから二人のブログなんです。

  でた、旦那自慢。ところでカメラは一眼レフよね。
旦那さん いや、キヤノンのG7というコンパクトカメラ。あとは小さい三脚と、レフ板代わりの白い板だけ。
  それであんなにきれいな写真が撮れるんですね。
奥さん

テーブルとかライトとか、たまたま組み合わせがうまくいったみたい。


このようにして、あのうまそうな写真は撮影されているそうです。絶対一眼レフと簡易スタジオみたいなのを使っていると思ったのに。 ちなみに今日の写真は編集部工藤さんの撮影。「あのブログに負けないよう、機材をいっぱい持ってきたんですけど、写真撮らないでご飯に集中してもいいですか?」 だめです。

あのうまそうな写真はコンパクトカメラだったとは。奥さんは「たまたま」というが、盛り付けの美的感覚と写真の腕がないと、ああいう写真は撮れないと思う。

よくよく聞いてみると、照明のランプを料理が映えるものに変えたり、カメラの絞りやホワイトバランスをいろいろ試した結果が、あの写真の美しさに結びついているようだ。

とりあえず、私の頭の中にある買いたいものリストの中に、「レンズの大きいコンパクトカメラ」が太字で書かれた。


いか揚げしゅうまい。さっきのいかしゅうまいを食べているとき、「これ、揚げてもおいしそうですね」といったら、「用意してますよ」と、これがでてきた。さすが。 アマダイのウロコ揚げ。うろこがついた状態で引いた皮を素揚げしたもの。パリパリの食感と皮の旨みが最高。本当は身をつけて揚げたかったけれど、不漁につき皮だけだそうです。


レシピはオリジナルになっていくもの


  さっきから私が食べたことのないような料理ばっかりでてきますけど、普段からこういう晩ごはんなのですか?
奥さん

まさかー。手の込んだ料理とか、盛り付けに気を配るのは、ブログの写真を撮る用に一、二品作るだけで、あとはあるものですよ。だから食卓全体の写真は載せないんです。

旦那さん でもまあ、普段からこんなもんですよ。
  おおでた、女房自慢。

奥さんの料理をカウンター越しに、ご主人がニコニコしながら待っている姿が印象的でした。 薩摩揚げ。主な材料はトラギスなどの釣った小魚。山芋を入れてふわふわに仕上げてある。

  こういう家庭科では習わなそうな料理のレシピって、どこで覚えるんですか。
奥さん

私は別に料理学校とかを出たわけではないので、普通に本とかサイトとかで見たのを作りますよ。料理の本が大好きで、一部屋丸ごと書庫になっているくらい。でも自分の好みだったり、家にある食材だったりにあわせてつくるから、やっぱり自分のレシピになっているんだと思います。

  それがブログに載るわけですね。
奥さん

ブログに載せると、同じように料理を載せているブロガーさんからのコメントやトラックバックを通して、さらに料理の幅が広がったりするのが楽しいですね。食材の使い道に関して、固定観念に遊びができました。


砂肝の塩麹焼き。塩麹というものを使った料理は今日はじめて食べたけれど、これはぜひマネしようと思った。 ベビーリーフとトマトのサラダ。ベビーリーフとか、変わった形のトマトって、お店以外でも食べるんですね。

  そういう仲のいいブロガーとかと、実際に会ったりはするんですか。
奥さん

実はブログを通して誰かとお会いしたりということは、今回が初めて。もちろんコメントやトラックバック、メールなどのオンラインでのお付き合いはさせていただいていますけど。あと 釣りすぎた魚を送ったりはあります。

  そういうもんなんですね。ブログのコメント欄が華やかなので、オフ会とかでみんな実際に会っているんだと思っていました。

モツァレラチーズと酒盗。酒盗は旦那さんが釣ったカツオで作った自家製。これを食べてカツオ釣りに連れて行ってもらおうと心に決めた。 カプレーゼと自家製オリーブ。オリーブはベランダの鉢植えから収穫したもの。これを食べてオリーブの苗木を買おうと心に決めた。


これからについて


  これからもブログは続けていくんですよね?
奥さん

そうですね。最初は正直ブログのために料理するっていう感じでしたが、今は少し余裕ができて、ちょっとネタになる料理をしたからブログに載せるっていう感じで、無理なくやっています。

  ごちそうさまでした。とてもおいしかったです。アマダイは私も釣るのですが、料理法が全然違うので勉強になりました。

アマダイ木の芽寿司。ご飯が最後にでてくるっていうのが、お店っぽい。うちでは絶対最初にでる。黄色いのはカラシではなくてユズ。 アマダイとオニカサゴの兜汁。シメにこういうのが出てくると感動しますね。塩で旨みを引き出し、さらに炙ってから昆布だしとあわせた最高のスープ。

お店だったら勘定が怖い料理だった。

話を聞いていて、食べてくれる人に「おいしい!」っていってもらう延長線で、ブログを見てくれた人に「おいしそう!」って思ってもらえたらいいなという気持ちが、モチベーションになっているのかなと思った。

私も自分のサイトに料理を載せたりしていたが、サメの料理をサイトにアップしたことで「あぶかも」のご夫婦と知り合うことができたので、やっててよかったなと今更ながら思った。ウナギ釣りの話をきっかけに知り合った友人も多い。

料理もおいしく、釣りの話もたのしく、すっかり長居をしてしまった。


「あ、もう終電ないみたいだね」「…え!」

取材協力:あぶかも

 

ここで話はヨネスケに戻るのだが、ヨネスケの場合、突撃したお宅に次の突撃先を紹介してもらって、次々にお邪魔するというのが定番である。

知らない人の家で食べる晩ごはんは、食べたことのない料理が出てくるし、初対面の方と話す緊張感が楽しかったので(取材という大義名分がなければやりませんが)、「あぶかも」の奥さんから、お勧めのブロガーさんを教えてもらい、後日もう一軒お邪魔することにした。


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