ネコを探して谷中を歩く
夕やけだんだんを離れて谷中の街でネコを探してみることにした。夕やけだんだんは人が多く、ネコを怖がっている自分が少し恥ずかしかったのだ。 少し歩くとそこは商店街でネコの置物があった。谷中と言う街全体がネコを愛していることがわかる。
谷中の街並みは古く細い路地にはネコがよく映える気がする。しかし、僕の探し方が悪いのかなかなかネコが見つからない。僕の認識では谷中はネコがあぶく銭のようにぶくぶくとわいていると思っていたのだけれど。
秘策! マタタビ作戦
ネコはマタタビが好きなのだそうだ。人間で言えば白い粉的なポジションだろうか。そして世の中は便利なものでマタタビパウダーなるものがペットショップに行ったら売られていた。しかも国産マタタビだ。外国産との違いは分からないけれどネコにとっても国産の方が響きがよいのだろう。
これを自分の体に香水のようにまぶせばネコが自然に寄ってくるのではないだろうかという作戦だ。ネコがこれでもかと言うくらい押し寄せ「順番、順番」と僕が言う展開を期待している。本当にそんなにいっぺんに寄ってきたら怖いのだけれど。
マタタビをまぶしてしばらく歩いたけれどネコは一向に寄ってこなかった。僕がネコを怖いと思っているのと同様に向こうも僕が怖いのかもしれない。動物には人間のそういう気持ちが分かると聞いたことがある。
再びだんだん、やがて猫カフェ
夕やけだんだんに戻ってくると猫がちょうど僕の目線のところでのんびりと日向ぼっこをしていた。彼にとっては今日という日はとても平和なのだと思う。しかし、ネコが怖い僕にっては全然平和ではない。でも、平和をもたらすために僕は谷中にやって来ているのだと思いネコに手を伸ばす。
手を伸ばしてみるもあと数センチが遠い。噛まれるかも、ネコパンチをくらうかも、と中東の石油並みにふつふつと不安が沸いてくる。結局後ずさりすると、そこには別のネコ好きな方がやって来てペタペタと腕利きのマッサージ師のようにネコを触り始める。
分かっているのだ。人間になれているネコだろうから噛まないことなんて。現に他の人が触っているのだから全然危険なんてないのだろう。しかし、どうしてもあと一歩を踏み出すことができない。恋愛ドラマなどを見ていると「もう好きって言えよ!」ともどかしく思うけれどそれと一緒だ。野良は怖い!