僕はネコが怖い。 ネコの写真を見ているとかわいいとは思うけれど、いざ触るとなるとそこには大きな壁の存在を感じる。 噛まれるのでは? ツメで引っかかれるのでは? などの不安が絶え間なく僕を襲い触れることができないのだ。
しかし僕はネコが嫌いではない。むしろ好きなのだ。怖いだけなのだ。できることならばネコをこの腕でギュッと抱きしめたいと思っている。
そこで、ネコが怖いを克服しに出かけることにした。
(地主 恵亮)
僕がネコを怖い理由
むかし公園で野良ネコが雀をくわえているのを見た。 ちらちらと見えたネコの牙はとても鋭かった。僕もあんな牙であの雀のように噛まれたらどうしようと考えてしまうと、もうネコを触ることができない。また、空を飛ぶもの捕まえるその俊敏さにも恐怖を感じる。
いつだったか大人しそうなかわいいネコがいたので、僕は触ってみたく手を伸ばした。すると、ネコパンチをくらってしまった。僕の手にはネコの爪あとが付いていた。ネコはツメも鋭いのだ。ライオンだってトラだってとどのつまりネコだ。その辺のネコだってそれに通じるものがあるのだ。決してネコを甘く見てはいけないのだとこの時に気が付いた。
これはネコに限った話ではないが人間の言葉が通じないところにも恐怖を感じる。「噛まないでね」と満面の笑みで僕がネコに言ってもおそらく通じない。気まぐれに噛んでくるだろう。 彼らはどこかで野生だからこっちにそんな気がなくても危険を感じれば噛む。これが恐ろしいのだ。僕は痛いのは嫌なのだ。
野良ネコを触りに出かける
ネコは怖いけれ嫌いではないしかわいいと思うわけだから、やはり触りたいという願望は常々ある。だから、この恐怖を克服するためネコを触りに出かけることにした。家の中でいくらネコへの恐怖をなくす方法を考えても机上の空論。勇気を出して実際にネコと触れ合っていれば何かネコへの恐怖をなくす糸口が見つかるかもしれないと思ったのだ。
東京の谷中という場所では多くの野良ネコが生活しているとのことだったので、まず行ってみることにした。その情報通りに谷中の夕やけだんだんと言うところに着いたとたんにネコがいた。あ〜遠めに見るネコはなんてかわいいのだろうと思う。
触ろうと近づくとネコに逃げられた。これに少しホッとしている自分もいる。いきなり擦り寄ってこられたらどうしようという気持ちもあるのだ。好きだけれど嫌いみたいな安く無駄に淡い恋愛小説の主人公のような気持ちだ。
勇気を出して近づくもやはり怖い。家に帰り写真を確認すると、僕の腰はこれでもかと言うくらい逃げていた。怖いのだ。噛まれたら、引っかかれたら…というマイナスのイフが僕の頭の中をよぎっては消えて行く。