デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


ちしきの金曜日
 
刀研ぎ師の仕事場を訪ねてきた

企業秘密の粉を塗って、肌にしっとり感を出す

藤代:刃艶、地艶を終えたら、油で溶いた秘密の粉を刀身に塗って、綿でぬぐいこんでいきます。こうすると潤いが無かった刀の肌がしっとりします。



加藤:あ、この壷に入っている赤茶色い奴ですね。
藤代:あ、それ撮らないでください。一応うち独自の配合でやっているので、藤代の企業秘密ってことで。
加藤:じゃ、僕のファイルで隠して撮らせてください。


秘密の粉は「ぬぐい」と呼ばれるそうです。


加藤:ところでさっきから気になってたんですが、ここにある飾り物、日本刀の元になる鉄ですか?
藤代:あ、そうですね。それは玉鋼(たまはがね)といって、日本伝統の製法で作った鉄です。
加藤:藤代さんは自分で刀も作ったりするんですか?
藤代:いや、作らないです。僕は研ぎしかやりません。それ、よく間違えられますね。この仕事を始めてしばらくは、友達にも覚えてもらえなくて、久しぶりに会うと「よっ! いい刀できた?」なんて聞かれたりしましたが、作りません。


これは刀匠が刀を作る元となる「玉鋼(たまはがね)」


加藤:そうなんですか。あれ、じゃあ研ぎ師と刀匠は全然別の仕事なんですね。
藤代:そうですね、全然別です。他にも、さやを作る職人や、柄を作る職人もいて、それぞれ別の仕事です。でも中には、研ぎを自分でやられる刀匠の方もいます。

どうやら、かなり細かく専門化された世界のようだ。
ここまで聞けばさすがに、包丁は研がないんだろうな、ということは分かってきた。そういえば、まだ互いに独身で一人暮らしの頃、藤代さんちで鍋会をやったとき、藤代さんちの台所にあった包丁は驚くほど切れなかった。あれはたぶん、研いでいなかった。

 

見ていてヒヤヒヤする最終工程

藤代:最後に、刃の側からこうやって刃文を取っていきます。


刃側で素早く指を動かす


加藤:うわ! それ指切らないんですか!?
藤代:よく言われるんですが、大丈夫です。指は刃に当たっていません。これで一応簡単に全工程が終わりですが、何か聞きたいことありますか?
加藤:あれ、ルパン三世で石川五右衛門がぽふぽふやってるアレが出てこなかったけど、アレは使わないんですか?
藤代:ああ、アレですね。あれは砥石の粉をまぶして、余分な油を取るための作業です。でも今は、メガネ拭きがあるじゃないですか、あれでも取れるんですよ(笑い) だから、僕は使ってないです。


※写真と本文は関係ありません


加藤:メガネ拭きですか! そう、五右衛門といえば、五右衛門の斬鉄剣ってコンニャク切れないじゃないですか。あれって本当に切れないんですか?
藤代:えーと、切れます。あたりまえでしょ(笑) 包丁で切れるのといっしょです。それ、よく聞かれますね。あと「逆刃刀ってあるんですか?」ってのもよく聞かれますね。(※逆刃刀はマンガ「るろうに剣心」で主人公の持つ刀)それ聞かれたときは、もう知らないふりします。「え、なんですかそれ? え、マンガ??」って。
加藤:(笑) たしかにそのほうが早く済みそうですね。
藤代:他には質問ありますか?
加藤:例えば僕が今、「日本刀を家に欲しい」って思ったら買えるんですか?
藤代:あーそれは、ちょっと長くなるんだけど……

 

このあと、上記の続きに加えて、藤代さんがこの道に入ることを決めたきっかけ、メトロポリタン博物館で実演してきた話など、もう少し聞いてきた。
あと少々お付き合い下さい!


< もどる ▽この記事のトップへ つぎへ >
 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.