人の気持ちというのは目には見えないもの。もしもそれを簡単に可視化する道具があったなら、世紀の発明といってもいいだろう。
そう思うのだが、そんな道具がファミレスのレジ横コーナーで売っていた。「マジックカラーリング」という指輪だ。
値段は473円と安い。ハイテクや世紀の発明という感じがない価格設定。これを使えば、いろんな状況で自分はどんな気持ちでいるのか手軽に調べることができる。
そういうわけで、自分をさまざまな条件に置いて、どんな感情でいるのか確かめてみました。
(小野法師丸)
心を見つめることなく、指輪頼みで自分探し
つけている者の気持ちがわかるという、すごい機能をもった指輪。ファミレスで同行者が会計をしている間、レジ横で売っているのを発見した。
なぜだか気になるものが多いファミレスのレジ横コーナー。目が釘付けになっている子供を見かけることも多いが、今回は大人である自分がひっかかった。
「リングの色であなたの今の気分がわかるかも?」と書いてある。どうやら指輪の色が変わることで、気持ちがわかるかもしれない的なことを言っているようだ。
とは言え、ついてきた説明書の1行目には「マジックカラーリングは温度で色が変化する指輪です」と書いてある。「色の変化のイメージはあくまで参考です」ともあり、本気度はかなりマイルドに。
それでも色と感情との対応が書かれていて、試してみたくなる感じもかもし出す。指輪の色と気分の対応はこうだ。
6色の変化がそれぞれの気持ちに対応しているわけだ。本気にするかどうかはともかく、実際に試してみよう。実は、先日当サイトで公開した記事「勝手に食べ放題」に参加した際に、この指輪をつけて臨んだのだ。
私は大好きなハンバーグを担当。普段は葛藤しながらせいぜい2個くらいにしているハンバーグを、この日は食べたいだけ食べていいというルール。
それは気持ちが高ぶるというのも無理はないだろう。指輪の反応はどうなのだろうか。
食べているうちに指輪が示した色は青。興奮を意味する色である。確かにそうだ、僕はハンバーグをいっぱい食べて、ものすごくエキサイティングな気持ちになっていた。
もしかしたらこの指輪、結構当たるんじゃないだろうか。他の感情になるようなシチュエーションに自分を置き、全色制覇を狙ってみよう。
まず始めに狙ってみるのは、黒(冷静)にしよう。普段から落ち着きがないと言われる自分には、冷静さが必要なのではないかと思う。
ではどうすれば冷静になれるのか。どうしたらいいのかわからず、悩んだ果てに思いついたのはこれだ。
手にしたのは仏壇に置いてあったお経。これを声に出して読むことで冷静になりたい。
平常心を求めてたどたどしく読んでみる。しぱらく読んで指輪を見てみると、なんとも複雑な色合いに。緑がかってもいるが、中心に見えるのは黄色ということでよいだろうか。
黄色は安穏であるらしい。狙っていた黒(冷静)とは異なるが、お経と安穏というのはつながりがあるように思える。
お経では意図せず黄色(安穏)が出てしまったが、今度は意図的に安穏を狙いたい。
「安穏」を辞書で調べてみたところ、「心静かに落ち着いていること」と出てきた。そういう状態は、最近買って気に入っているあれにくるまっているときがまさにそうだ。
腕を通す袖が付いたブランケットだ。これにすっぽりくるまってゴロゴロすると、大変気持ちがいい。あたたかくてまさに安穏。ではやってみよう。
立っているときはオットセイ的な生き物にも見えた私だが、ゴロゴロしている写真を見て、ときどき道ばたで見かけるブツを思い出した。
ともあれ、指輪の色はまたも複雑に。色の表の中から最も近いものを挙げるとすると、橙(不安)か。いや、ゴロンゴロン転がって気持ちがいいので、決して不安ではないつもりだが…。
指輪の色と気持ちとのズレを感じつつあるが、続いては緑(活発)を狙って行動してみよう。楽しくダンスでも踊って、活発な気持ちになろうではないか。
今回は実家の母が考案した「アップルダンス」を披露しよう。母がリンゴを運ぶときに踊ったことで、家族にほのかな笑いをもたらしたダンスである。
「アップルプルプルプル!」のところでビクッと止まるのがコツであるこのダンス。やってみるとわかるが、とっても楽しい気持ちになる。さて、指輪の色はどうだろうか。
示した色は黒(冷静)。おかしい。アップルダンスはあんなに楽しいのに、指輪は真っ黒だ。ダンサブルが足りなかっただろうか。
いよいよおかしくなってきたが、続いては橙(不安)を狙ってみたい。ブランケットにくるまったときに出た色ではあるが、自分の気持ちとシンクロしていなかった。きちんと自分を不安に陥れた上で、橙を出してみたい。
どうすれば自分を不安に追い込めるか。上の写真でもすでにそうなっているのだが、写真だけでは伝わらないだろう。手軽な不安として思いついたのは、パンツを履かないで外出するという方法だ。
新鮮な感触はかなりの不安を呼び起こす。気持ちを不安にもっていくことに成功している実感はある。
それでも指輪が示した色は緑(活発)。パンツがなくってスースーするのに、活発ってことはないだろう。
自分の気持ちがわからない。パンツレスな感触が、自分の奥にある野生を無意識のうちに呼び起こしたのだろうか。確かに野生動物たちはパンツを履いてないし、そして活発だ。
狙った通りでもそうでなくても、ここまで出てきた色は黒・橙・黄色・緑・青の5色。残る1色は紫(悲哀)なのだが、どうやったら出せるのかがよくわからなかった。
ところで、パンツはなくとも腹は減る。そういうわけでパンツレスのままロッテリアで食事。指輪の色についてはどうしたものかと考えながらハンバーガーを食べ終わったところで、気がついた。
指輪が紫(悲哀)になっているのだ。なぜだろう。
ハンバーガーを食べ終わってしまった悲しみだろうか。確かにそうだ、食べてるときはおいしいが、食べ物は食べるとなくなる。満足よりも、もうそこにハンバーガーがないという悲しみが心の内にあるのかもしれない。
「おっ!」と思わせたり、「全然違うよ!」と感じさせたりと、こちらの気持ちを揺さぶってくるかのようなマジックカラーリング。信憑性はともかく、結構めまぐるしく色が変わるので、見ていて普通に楽しいです。