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ひらめきの月曜日
 
できたての味の不思議・横浜銘菓工場見学


超繁忙期でした

12月のある日、かの「ハーバー」がわっしょいわっしょいと製造される神奈川県藤沢市の工場へとやってきた。

こちらの工場に限らずお菓子業界というのは12月が一番の繁忙期なのだそうだ。

お歳暮があって、クリスマスがあって、年末年始の帰省のお土産やらお年賀やら、12月のお菓子の需要のハンパなさは素人の私にも簡単に想像できる。

今回おじゃました工場も、伺った朝10時にはすでに工場全体からもうもうと湯気が立って全体から活気が沸いていた。

こんな時期におじゃましちゃっていいのか。二回りほど体を小さくするイメージで中へ。


この中でお菓子が続々と作られていると思うと! 迎えてくださったお二人(製造現場突入直前のため、マスクに白衣でがっちり準備万端です)

普段の3倍以上作る勢い

迎えてくれたのは、前ページで「出来たては美味しくない」という衝撃のサービストークをしてくださった堀越さん(写真右)と、開発と製造を取り仕切る牧島さん(左)。

聞けば、通常は1日〜2日に2万個のペースで製造している「ハーバー」をこの時期はその3倍以上作るのだそう。

3倍以上というと6万個超か! 私が1日に1個食べても164年以上かかる「ハーバー」を1日で作ってしまうのだ。164年てすごいぞ。そんなに生きてられない! でも1日2個食べれば82年で……そこまで生きられるかどうか……と完全に余計なことを考えていた。

ちなみに以前、従業員の休暇のためお盆に1日だけ休んだところ、倉庫の在庫がすべてなくなってしまったこともあったそう。以来、とにかく繁忙期は毎日工場を動かしているという。うっかり、「土日もですか」と聞いたら

「……? あ、ああ! ええ、土日もです」

とのお返事だった。そもそもこの季節に土日休むという質問自体に「?」マークが出てしまうくらい、毎日の工場の稼働は当たり前なのだ。すごい。


私も白衣を借りました。なんとなく頼みづらくて鏡越しに撮影。この時点ではまだかなり緊張してます かなり気になる「研究開発室」の横を抜けて、いざ製造ラインへ!

騒がずにはいられない現場

甘い匂いがただよう工場の中は、ただただ興奮のひとことだった。実際かなり「わー!」「おおー!」「ひゃー」などの奇声を上げてしまったと思う。

ものすごく多忙な現場だというのに今思うとこれぞまさに「お騒がせ」という図式であった。でも、従業員の皆さんがまた丁寧に挨拶をしてくれたりして気持ちのいい方ばかりなのだ。

甘えてまた「これはすごい!」「いっぱいある!」「おいしそう、おいしそうだー!」などと騒いだ。改めてすみません。

寝かせたら、あとは一気に焼き上がりまで

興奮は押さえて、「ハーバー」の製造の様子だ。まずは素材を合わせて餡と生地をそれぞれ2日間ほどなじませる。


【半製品】という説得力 浴槽ぐらいの大きさがあるんですよ、これ!

素材の準備ができると、なんとあとはスムーズに一気に焼き上がりまで行ってしまう。

なんと、包装工程まで一切人の手が入らないそうだ。

包餡機(“ほうあんき”。業界人でない限りなかなか使わない用語!)で機械の名前どおり餡が生地に包まれると、成形して照りを出す卵液を吹き付けて焼いて型からはずして……とテキパキと機械が動いていく。


餡と生地に分かれていたのが…… 包まれて……

こんな形になって…… あっという間にこうなった!

鉄板に入ると卵液を塗って オーブンから出てくると、もうこんな状態に!

それ専用の機械がそれ専用の工程をになって次へ送る。じゃんじゃん製造される様子が見ていて気持ちいい。

これは未来だと感動したのだが、牧島さんによると、やはり材料や焼き加減の調整はそれこそ日によって変えないと同じ味は出せないそうだ。

機械だけど、手作り

そう、この牧島さんがいかにも職人さん然とした格好いい雰囲気を持っていらして、「ハーバー」の味が人の手で作り上げられているという印象を強く強く受けた。

普段は製造ではなく販売の現場を取り仕切っている堀越さんも、この一環の製造ラインを前にしながらしみじみ

「『ハーバー』は、手作りなんですよねえ」

と言っていて、聞いたときは「こ、こんなに完璧に機械化されてるのに、手作りって!」と心の中で静かに静かに突っ込んだものの、よくよく見学してみると確かに「手作り」の感じが伝わってきて、最後には納得していた。


確かに仕込みの段階では鍋に火がかかっていたりとすごく手作りの感じ 調合の様子は家で手作りお菓子を作ってる風情が

焼きの行程、縦12メートルのオーブンの中を16分くらいかけてじっくりと移動しながら行なう。こうして途中の窓で焼き加減を確認 順調に焼けてます!

そうだ、焼きたての味の話だ

すっかり工場内の様子に夢中になってしまったが、そうだ、調査せねばならないのは「焼きたての味」なのだった。

上の写真にもある、12メートルのオーブンの中からゆっくりと出てきた直後のハーバーを(まだ型から出ていないところをカパっとはずして!)、食べさせてもらった。

本当に、美味しくないのか。


おもむろにひとつ手にとる牧島さん 写真に湯気が写らず残念(しかも興奮でブレました!)

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