シンプルな塩味が、でしゃばりすぎずに新米の味を引き立たせてくれた。何よりも日本人である幸せを感じさせてくれる一杯に仕上がったと言ってもいいだろう。新米の季節である今の時期、なおさらにその甘味と深みが感じられる逸品だ。
シンプル過ぎるんじゃないのか。
そのカクテル、シンプル過ぎではないか。そんな声が僕のところへ聞こえてくる。そう、たしかにシンプル過ぎるかもしれない。戦後じゃないんだから、塩ご飯は無いだろうと。
オーケー、かしこまりましたお客様。
シンプルすぎず、派手すぎず、かつ華やかなスタイルで、日本の美を僕がカクテルグラスの中に表現しましょう。僕は心の中でそうつぶやき、10年ぶりとなるシェイカーをその手にとって振った。 |