もっと人のいるところで
さて、押ボタン式信号機で待っていてもなかなかサンプル数が集まらないうえに、無邪気な子供に持ち帰られる危険性もあるため、大人がドシドシやってくる場所に移動して検証をつづけたい。
おりしも『いしがきミュージックフェスティバル』という野外音楽イベントが開かれていた日。ミュージシャンはマイク、俺は赤べこと握るものこそ違えども、熱い志という点で、ぼくらはお互いを理解し合えていた。
さて、この駅において、大人がたくさん集まり、しかも立ちどまる場所といえば、
そう、切符売り場である。
さあ大人たちよ、思う存分揺らすがいい!
観察しているあいだに松谷くんのいる左端の券売機で切符を買った人が16人。そのうち松谷くんに触ったのはなんと0人。真横に傘まで引っ掛けて期待させておいてのノータッチである。そんなのアリですか。
もしかしたら、まわりに人の目が多すぎて、触りたいけど我慢しているのではないか。そう考え、比較的人の少ないもうひとつの改札口の券売機へとまわってみた。 さて、今度こそどうだ。
まわりに人が少ないにもかかわらず、ぜんぜん触る気配なしである。いっそ近づいていって「これ、触っていいんですよ」と、声をかけようかと思ったそのとき、
これはまずい。無茶するタイプの人がやってきてしまった。 今回ばかりは「気づきませんように」と、祈るような気持ちで成り行きをみつめる。
ここで必殺「券売機に叩きつける」という無茶にでた少年。いかん、このままでは松谷くんが。
いつのまにか控えの選手まであらわれ絶体絶命に。「ここでタオルか」と、足をふみだそうとしたとき、少年の母親が「いくよ」の一言。 順番待ちの少女の手に渡るまえに慌てて救出したのだった。