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フェティッシュの火曜日
 
羽根のペンと骨のペン

骨をきれいに


お願いしま〜す

サンマが美味しい季節になりましたね。今日のはとくに脂がのっててよかったですよ。
そんなわけで食べおえたサンマの骨をペンにすべく、まずは綺麗にしていく。
かつて土屋遊さんが書いた記事『魚のガイコツを作りたい』の手法に則り、歯ブラシを使って骨を洗っていく。


あ、鳥の羽根っぽい

無理やり言ってみた。

 

ペン先に加工できるのか

とりあえず余分な小骨を切り落とし、中骨にハサミを入れてみる。
羽根の軸とは違って、中身が詰まっている。そしてなにより問題なのは、この中骨が1本の長い骨ではなく、短い骨骨(ほねぼねと読んでください)の集まりだということだ。


いじればいじるだけ崩れてゆく骨骨

うわあ、ダメっぽい。 諦めかけたそのとき、またも妙案が閃いた。


羽化直後のセミのような色あい

尾ひれ側の小骨が密集する箇所、その隣り合った2本の小骨をひとつのペン先に見立てたらよいのではないだろうか。
さっそく尾ひれに近い2本の小骨だけを残してハサミを入れる。


2本を残してカット

残した2本にもハサミを入れ、先端の位置が揃うように整えた。


言うなれば神が与えたペン先(大げさ)

さあ、サンマの骨ペンは、果たしてインクをうまい具合に吸ってくれるのか。


ペリカンのインクに魚類を浸すというご乱心

染み込んだ!

ペン先はしっかりとインクを保持した模様。さて、書き心地は……


ザ・ソフトタッチ

なんともいえぬ柔らかい筆の感触。ふにゃふにゃと捉えどころがなく、そのくせ指に骨が刺さって痛いという新感覚のペンである。


まるで筆ペンを使ったかのようなソフトな筆致に

なんという力弱い字。これも味というのだろうか。アジじゃなくてサンマだけど。

 

書き比べ

というわけで、出来あがった3本の習作を見比べてみよう。


同じグループ

驚いた。ひとつだけ魚類なわけだが、ぜんぜん違和感がない。


煎茶と番茶の違い、と言えばわかりやすい

それぞれに特徴的な、昔ながらの3本のペン。では改めて書き比べてみたい。


上から、万年筆・カラス・鳩・サンマ

カラスは万年筆に劣らぬしっかりとした筆致。鳩は細く鋭い線が描けるが、使いこなすには慣れが必要な、やや上級者向けの羽根ペンだろう。サンマに関しても、普段の筆跡で書くには慣れが必要だが、冠婚葬祭の記帳の際にはサンマ(場合によって筆ペン)が準備されていることが多く、大人のたしなみのひとつとして使いこなしておきたいところ。
ちなみにカラスとサンマに関しては、途中でインクを補充することなく書き切ることができた。

 

やっと残暑見舞いを

そうだった、残暑見舞いの葉書きをしたためるのであった。
最終的にぼくが選んだのは、柔らかさが際立つサンマの骨ペンだ。

手の生臭さなど微塵も感じさせない清涼感である。

カラスに鳩にサンマということで、ビジュアル的には地味なラインナップではあったが、憧れだった羽根ペンを一気に身近なものとして感じることができた。この原理であれば、伸ばした自分の爪だってペンにすることができる。爪ペン男。うわ、カッコいい。

幸い葉書きは生臭くない

 
 

 

 
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