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ひらめきの月曜日
 
パイプでハードボイルド入門


そこにあるだけで、ハードボイルドを醸し出すパイプ煙草

当サイトではオーバーオールなどを着る機会の多い私だが、一方で、北方謙三さんの小説を読んだことがあるなど、ハードボイルドな一面も持ち合わせている。

とはいえ、小説を読んだだけではハードボイルドを名乗る資格はないかもしれない。私自身、特別ハードボイルドな社会に身を置いて生きているわけでもない。

しかし、そんな非ハードボイルドな私の日常にもハードボイルドを簡単に引きこむことができるアイテムを発見してしまった。

それはパイプ煙草である。

手元にあるだけでハードボイルド感がぐっと増す、パイプ煙草。その奥深い世界の入口を少し覗いてきました。

※本稿で使用されている「ハードボイルド」という言葉は“かっこいい”とほぼ同義語です。

榎並 紀行



ファッションとしてのハードボイルド

男子たるもの最終的に到達するべき(と、僕が勝手に思っている)はハードボイルドというステージだろう。

そんな憧れてやまないハードボイルドの定義は以下の通りである。

「感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情、精神的・肉体的に強靭、妥協しないなどの人間の性格を表す言葉となる(Wikipediaより)」

まさに男が惚れる人物像だ。この定義に自分が当てはまっているかどうかは分からない。とりわけ精神的・肉体的な強靭さを試されるような日常を送っているわけではないからだ。

ただしファッションとしてのハードボイルドはわりと身近なところにある。パイプ煙草をはじめ、さまざまな喫煙具を販売する老舗「銀座 菊水」を訪ねた。


銀座の表通りに店を構える、明治36年の老舗「菊水」

恥ずかしながら、パイプ煙草に関して何ひとつ知識がない。いくつかの店に取材を申し入れたところ、こぞって「菊水さんがいい」と推薦されたのだ。

菊水はパイプ煙草とともに1世紀以上の歴史を歩んできた老舗である。店内には有名ブランドから個人作家の作品、菊水オリジナルのパイプまで常時約1200本が取りそろえられている。


オリジナルパイプも多数
材質に石を使ったメシャムパイプ

価格も2500円から揃っていて、店員さんが予算に応じておすすめ品を出してくれるので、初心者も安心して入門することができる。ハードボイルドの入口は意外と至れり尽くせりだ。

取材中にオーバーオールのお客さんが来店して、呪いかと思った

今回取材に応じていただいたのはベテラン店員の小林さん。まずは予算一万円前後で初心者におすすめのパイプを選んでもうことにした。

ブッショカン・ミラージュ(フランス製) \8,715円

スタンウェル・ルリーフ(デンマーク製) ¥12,600

スタンウェル・リーガル(デンマーク製) \10,500

百万円のパイプ

分かりやすくいうと「ブッショカン」や「スタンウェル」はメーカー名で、「ミラージュ」「ルリーフ」「リーガル」はパイプのグレードを指す。同じパイプメーカーでも細かくグレードが分かれているらしい。

材質はどれも同じ(ブライヤーというツツジ科の植物の根)だが、木の状態によって値段が変わってくる。

あまり手を加えず、天然木の状態に近いものの方が価値があるようだ。いやらしいとは知りつつも一番高いパイプを出していただいた。


これが菊水で最も高価なパイプ

ひゃ、ひゃくまんえん?

自然の木目が縦に幾筋も入った貴重な品であるらしい。僕からすれば冗談みたいな金額だが、こういうのをポンと買えるようになれば一人前のハードボイルドといえるだろう。

木ではなく「海泡石」という石が材質のメシャムパイプ
小林さんも愛用。丁寧に使うと、味わい深い色味になる

また、材質に石を使ったタイプもある。メシャム(海泡石)と呼ばれる石で、しっかりと手入れすれば写真のような味わい深い色味となるようだ。

それにしても使い込まれた小林さんのパイプは何とも渋い。

出来ればこれを譲ってほしかったが、それではハードボイルド泥棒になってしまうので、ぐっとこらえた。


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