「北風と太陽」の話が好きだ。北風と太陽が旅人のコートを脱がす競争をし、北風は風圧でもって脱がそうと試みるが失敗、太陽は逆に暖かく照りつけるだけで脱がせることに成功する。
ところで、ゲームの敵キャラクターで、たまにこういうものがある。
「いかにも悪そうな、モンスターみたいな風貌」
ではなく、
「はかなげ、あるいは冷徹な、女人の姿をしているが、ひとたび牙をむくととてつもなく恐ろしい」
というパターン。ちょうど、「北風と太陽」のような対比だ。
そして、その手のキャラクターはしばしば、「花」的要素を伴って出現する。花といえば通常、愛すべき可憐さや優しさを感じさせ、心和むもの。しかしその花があることで、その敵の妖しさ、冷酷さがかえって大きく浮かび上がってくるのだ。大好き、そういう「太陽的アプローチ」。
ある日、道端で華麗に花が咲いているのを見て考えた。そんな花に敵キャラっぽいものを添えたら、実世界でも違う風景が見えてくるのではないか。
(乙幡 啓子)
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