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フェティッシュの火曜日
 
スノーボードができるに決まっている

やっぱり高い!

さあ、やるか、よっ、こうやって、こう
あっ、ちがう?こうか

こうか、こうっ
こうっ
あ、こっち?

慣れたプロたちはパキパキパキと履いていく。この時「おれはスノボを履けないが滑ることができる」というとんち状況に。

すいません、これどうやってつけるんですか?

ボードのつけかたが分からない。周囲のプロたちは待ちきれない!とばかりにカチャカチャやってサッと滑り降りていくのだけども、こちとら「おやあ?これはなんだろう?」である。

「パカパカするよ」「こっちはカチャカチャするよ」と頭の中の妖精さんたちがささやいてる。いっそこのままつけられなければいいのに…もうここで帰ってもいいのかもしれない。邪念が頭をよぎる。

しばらく注意深く隣の人のを観察してたら、なんだか履けた。あーあ、つけちゃった。さあ、行くか。


さあ行こう!もうできたも同然!


行け!大北行け!思ったよりかっこわるい姿勢だけど行け!

そうだそうだ!ひざを使って腰を落とすんだ
お、そこまで落とす!?うん、いいかも!いいかもしんない!

いった!2mでこけた!人とかぶって写真に映らず

なんじゃこりゃ

あ、痛っ。2mでぐらぐらどっしんものすごいかっこわるい。

硬いぞ、雪面が硬い。スノーボードも硬い。ブーツも硬くて全体的に硬い。イメージではふわーっとしたところにシャーッ、なのだが実際はガリガリガリ!ギャーッ!なのだ。確実に人一人くらい轢いている。

硬いもん同士がぶつかりあうので不安定なことこの上なくて、ひとつも落ち着かない。みんなが手を横にして必死にバランスとるのもわかった。フーラフラだわこれ。

もっと平たいところでやればいいのに。なんで斜面?もう一回よく考えてみればいいんじゃない?よし、その言い分はもっともだ。新聞に投書しよう。。


立ち直るも
ターンか!?大北、ターンか!?
いや、こけた!

こけつづけて滑り降り、また上ってきたあとの顔

しりもち10年分ゲット!

大人はそんなにしりもちをつかないので十年分くらいのしりもちをいっぺんについた気がする。おしり痛い。手も痛い。「変な手のつき方して」という常套句骨折もこの延長線上かと実感できた。しりもちに対してぐっと造詣が深くなった。

スノボをやる人はやらない人に比べ10倍しりもちに詳しい。こういった言説もあながち間違いではなさそうだ。

しかしそもそもこれはなんで一枚の板なんだろう?硬いボードに硬い固定で、足はばっちり動かない。これからスポーツやろうってのにこの拘束はどういうことだろう?継母に幽閉され鉄仮面かぶせられ、スノーボード履かせられ。そのレベルだよ、これは。


ひざもいいけど、やっぱり手が大事なんですよ。イメージトレーニングを繰り返す、ばっちり、またできる気復活!

できない!
できない!
できません!

すいませんでした!本当にすいませんでした!水あめなめたのもぼくでした!桜の木折ったのもぼくでした!
手が、手が、ほらここ、えらいことになってて

はい!無傷!思いすごし!

もちろんだんだんうまくなっていく

バランスに集中しているとこける回数も減ってきた。しかし心の中の声が「よっ!はっ!ほっ!」というこれスポーツか?はしご芸の方が近いのではないか?という声なのである。

滑るという感覚でなかった。バランスをなんとか保っているとずりずり落ちていく、というのが実感だった。もう少し上手くなれば違うのだろうか?

悩みながらも何度も繰り返す。うまくいった部分を思い出してまたもう一度あれを、と挑戦する。おお、だんだんうまくなってってる気がする。しまった、ふつうにスポーツしてる。今日のこれ、ほんとに記事になるんだろうか?


今日の成果をゴンチチのようなさわやかな音楽とともに

降りてくるとにやつきが止まらないんですよね

ハマる気持ちもなんとなくわかる

しかしなんだか笑っている。失敗しても滑り終われば大体笑っているのでよくわからなくなってくる。どういうことだかわからないが、さわやかになっているのだ。

スノボ、できませんでした。おれが間違ってました。これは改心のさわやかではないか。民話だ。竜神さまをバカにした村人のせいで洪水が頻発、でも一生懸命謝ったので村が平和になった。そんな教訓めいた民話が今だ。

スノボ地蔵さま!おらが悪うございました!と叫んだところで、なぜ若者のイケてる趣味が日本昔話になってしまったのかわからなくなった。


スノーボードをあきらめこのまま滑っていくという競技に突入しかけたりもしたけれど
今後の人生これほどさわやかにメガネを光らせることもないだろう。さよなら、さわやかなおれ。
 

そして改心して真人間に。この後大検受けて夜学→起業の道へ。

へろへろで痛い。おしりも痛いし手首も痛い。バランス感覚が元に戻らない。何より筋肉痛がひどい。えらい目にあった。こっぴどくしかられた(スノボに)。

しかしスポーツを何の知識も手助けもなしで始めたのは貴重な体験だった。手探りで器具をがちゃがちゃやるのはおもしろい。基本動作を知らないで斜面を降るのは相当スリリングだった。

こうして今読み返してみるとただスノーボードしただけだった。スノボをしてる人なら全部知ってるよ!という記事になってしまっただろう。スノボ地蔵?知ってる知ってる!ということなので、スノボ帰りの人にはお地蔵さまの話をすると話が長持ちしますよ。


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