●野菜と人間との間に愛は成立するか

　 続いては、ファービーよりワンランク抽象度をレベルアップさせて、ナスに告白してみたい。

　ご存じかと思うが、ナスは野菜である。いろんな野菜がある中でも、ナスが飛び抜けて好き。ルックスでも味でも、ナス以上に好きだと思う野菜はない。

　以前料理番組で、料理の先生がいろいろな食材の栄養を解説しながら調理を進めるという場面を目にしたことがあった。ニンジンにはカロチン、レタスにはビタミンＣなど次々に話していく中、ナスについては「特にこれといった栄養はありません」と言い放った。

　そうか、ナスにはあんまり栄養ないのか…。料理の先生が続けて言うには、「でも、おいしいですよね」。そう、おいしいよね、ナス。

　その頃からナスに対して、他の野菜とは違った特別な感情を抱くようになったと思う。

　しかし、告白の対象はナス。いろんな意味で心配だ。ここは信頼できる人生の先輩に、告白について相談してみようと思う。

　父である。今年で66歳。人生という年輪をここまで重ねてきた人に尋ねることで、自分がやろうとしていることの価値を確かめることができると思う。

　そういうわけで、内容は事前に知らせずに相談に乗ってもらってみた。

　父の言っていることをまとめると、「意味がわからねえ」ということになると思う。

　自分のやろうとしていることについて相談して、答えは「意味がわからねえ」。仕方ないと思う、私がやろうとしていることは野菜に告白するということなのだから。

　しかし、相談した意味がなかったかと言うとそうではない。周囲に理解されず、乗り越えるべきものがある愛こそ実らせたくなるというものだ。むしろナスへの思いは募る。

　やっぱりナスに告白しよう。こういうことは迷っているよりも行動した方がよいはずだ。