年明け早々、友人の一人から写真が届いた。そこに写っていたのは去年、区画整理のために家を立ち退くことになった写真家「中川さん(この人)」だった。
荒涼とした更地にたたずむ彼の姿からは今にも消えてしまいそうな危うさがあった。これは放ってはおけない、と思い話を聞きに行った。
(安藤昌教)
ついになにもなくなっていた
一年ほど前、区画整理の対象となった地域につて「消えゆく街に暮らして」というタイトルの記事を書かせてもらった。沖縄で進む開発の現状を、この地域に暮らす一人の若者にスポットを当てて取り上げた記事だった。
その時話を聞いた彼から年明け早々に写真が届いたのだ。それが下の写真だ。
空き地にたたずむのは写真家「中川さん」。一年前に取材させて頂いたときには、確かこのあたりに彼の家があったはずだ。
左の写真が一年前のもの。
あのときも玄関から細い路地を隔ててすぐそこまでショベルカーが迫ってきていたのだが、今年の写真を見るとあのとき中川さんが手をかけていた門から先が更地になっていることがわかる。
いよいよ壊されちゃったのだ。
中川さんは一人暮らしのご老人の家の一部屋を家賃1万9千円で間借りしていた(実際は2万円だが、一ヶ月いい子にしていると家主のおばあちゃんがお小遣いとして千円くれるので1万9千円)。
そんな思い出深いあの家はもう跡形もない。中川さんの部屋は、そして家主のおばあちゃんはどこへ行ってしまったのか。
人道的見地からも放ってはおけないと思い、中川さんに連絡を取ってみた。すると
「では、原宿で会いましょうか」
と言われた。なぜだ。
沖縄にいるはずの彼との待ち合わせがなぜ原宿なのか。詳しい話は聞かぬまま、指定されたカフェに行くと、確かに彼はそこにいた。
店内の一番日当たりのいい席に座っているのが写真家中川さんだ。こぎれいな服装をしているからか、去年会った時よりも全身から余裕を感じさせる。
なんだ、何があったんだ。
一年前丸刈りだった青年の頭には短いながらもパーマが当てられていた。おしゃれなカフェで肘をついた彼の腕にはオメガが光る。
なにがどうしてこうなったのか。なんとなく予想はつくのだが、そう、つまり立ち退きってこんなに「いい」ものなのだろうか。
ぶっちゃけた話を聞かせてもらった。