事件は12月2日に起きた。渋谷の東急ハンズで「プープーテレビ」の撮影用に風船を買った直後、レジの前で動きが取れなくなってしまったのだ。原因は持病の椎間板ヘルニアである。今から16年前に椎間板ヘルニアの手術を受けて以来、しばらく調子が良かったのだが、今年になって腰に違和感を感じるようになっていた。そのヘルニアが再発したのだ。ハンズで風船を買った後に。
一緒にいたスタッフの肩を借りて邪魔にならない場所に移動して、腰の回復を待った。しかし、しばらくじっとしていても一向に良くなる気配がしない。これは大変だ、と心配したスタッフが別のフロアで杖を買ってきてくれた。風船を買いに来たのに杖を買うことになるとは…、人生は不思議だ。
更に困った事に、僕の腰痛はどんどんひどくなっていく。杖を使っても歩行が困難だ。
「救急車を呼びましょうか?」
スタッフが携帯を取り出す。
「いや、それはやめておこう」
僕はスタッフを制止した。
これからも頻繁にお世話になるであろう東急ハンズである。大きな騒ぎにしたくなかったのだ。救急車を呼べば店員さんたちにも迷惑がかかる。今後、ハンズで買い物をする度に店員さんから「あ、救急車の人だ」と思い出されたら恥ずかしい。きっと「救急車」とあだ名がつくだろう。
結局、スタッフが救急センターに電話をかけて、今すぐに診てもらえる病院を紹介してもらいタクシーで向かう事になった。
杖とスタッフの肩に支えられて、何とかタクシーに乗り込んだ。
ここまで、2、3時間くらい時間を費やしたように感じていたが、後からスタッフに聞くと10分、15分の出来事だったらしい。意外と短い。
紹介された病院に向かう車中、少しでも揺れると顔が歪み「うっ」と小さく声がもれる。
バックミラー越しにその様子を見ていた運転手さんが、揺れる度に「あっ」と言っていたのを覚えている。
そんなこんなで何とか病院に到着し、早速先生に診てもらった。 レントゲンの結果、やはり椎間板ヘルニアが再発したようだ。
「痛み止めの座薬を入れて、30分しても痛みが治まらないようだったら入院です」
と、先生から言われた。
つい1時間前までは「プープーテレビ」の事を考えていたのに…、僕は今、看護婦さんに座薬を入れてもらっている。人生は本当に不思議だ。
結果、30分経っても痛みが治まる事はなく、そのまま入院となってしまった。
今回の記事では、その入院生活についてレポートしようと思っている。
何故、こんな写真なのか? それは、すぐに分かります。
(text by 住 正徳)
「古畑任三郎」シリーズは好きで良く見ていた。スマップの話のDVDも持っている。 しかし、この病院が「古畑任三郎」という名前の元になっていた事を、僕は退院してから知ったのだ。
事前に知っていれば、もっと高いテンションで入院生活を送れたのに…、残念である。
とにかく、古畑病院と古畑任三郎の関係を全く知らないまま、僕は208号室に入院する事になった。
ちょっと東急ハンズに買い物に出たまま、気付いたら入院である。 財布と風船しか持っていない。
会社に連絡をして、とりあえず通勤鞄だけは持って来てもらう事にした。通勤鞄の中にはノートPCが入っている。ノートPCさえあれば何とかなるだろう。
車椅子で病室に移動して、介護士さんに手伝ってもらってベッドに横になった。 時計を見ると17時半。
これからどうしよう?
まだ入院の実感が沸かないまま、ぼんやりと入院案内を眺めていたら、座薬を入れてくれた看護婦さんがご飯を持ってやって来た。
「夕飯ですよ〜」
まだ17時半なのにもう夕飯!
この先が思いやられる。