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ロマンの木曜日
 
東京大学で講演してきた

人生でいちばん肩身の狭い一日

さて、いよいよ会場の山上会館にたどり着きました。

会場入りしたとたん、僕は今回の講演を引き受けてしまったこと、そして当日の服装について何も考えてこなかったことを激しく後悔しました。

会場が「山上会館会議室」と聞いて、僕はもっと小ぢんまりとした、折り畳みテーブルとパイプ椅子が並んでホワイトボードがあるような会議室を想像していたのですが、そこは国連の決議でも行なわれるんじゃないかというような、少なくとも同時通訳や速記が入っていてもまったく違和感のない、大会議場といっていい場所でした。


会場間違えましたか そしてうっかりセーターにジーンズで来てしまった…

ざっと見回してみたところ参加者の年齢層は決して低くなく、配布された参加者名簿によると学生はもちろん、省庁関係者をはじめ、建設会社、コンサルタント会社、電力会社などの方々も多く、肩書きも「室長」とか「常務理事」、「理事長」、「主席参事」、「顧問」、「相談役」、「主任研究員」など、いかにも偉そうな方々ばかり約70名。おそらくこの会場に飛行機が墜ちたら日本のダム技術は半世紀くらい戻ってしまうかも知れない、という顔ぶれ(適当です)。

そして自分の目線を下げてみると、よれよれのセーターに薄汚れたジーンズ。実は、講演でスクリーンに映すネタを徹夜で作っていたため、普段スーツを着ない生活をしている僕は何も考えずにいつもの服で出かけてしまったのでした。

ああ、間違いなくこれがKYというやつだ。人前に出る格好じゃない。パネラーに配られた赤いリボンが似合わないことといったら!

たぶんあの瞬間、僕は日本一赤いリボンがふさわしくない人物でした。ただでさえプログラムに書いてある肩書きが「ダムファン」で、「きみは誰なんだ」という空気が会場に充満していて息苦しかったのに。

息苦しさで窒息しそうになりながら、ダム工学会シンポジウム「語りべの会」がスタートしました。


プロの講演を聞いて震える

今回の講演は、ダムのプロ、そしてダムファン、それぞれの視点から見たダムの魅力について語る、という内容。

まずはプロの目として、国土交通省の研究官で、25年以上にわたってダムの仕事をされている川崎さんの講演。川崎さんとは以前、NHK-BSの番組に一緒に出演させていただいたことがある間柄です。テーマは「ダムの用・強・美」で、主にアーチダムの歴史とその美しさの変遷、それを造り上げた技術者の紹介といった、今までに聞いたことのない濃い内容。


いよいよ始まった 最前列ですごい講演を聞く

使われている写真も見たことのないものが多く、知らなかった事実が多数明かされ、非常に充実の講演内容。僕はこんなすごい講演を最前列で聞けたことで震えました。もういちど、もっと時間を使ってゆっくり聞きたいと思いました。

続いて、ダムファンから見たダムの魅力についての講演。今回は僕と、「ダムマニア」というサイトを作っている宮島さんが一緒に講演することに。いよいよ出番になり、もう東大とかセーターとかダムファンという肩書きとか川崎さんのすごい講演とか、あまりに場違いすぎて吹っ切れ、逆に平常心を保ったまま喋ることができました。

ちなみに講演のタイトルは、ずっと「ダムの魅力」としておいたのですが、前夜にネタを作っていて急に閃いてしまったので、当日予告なしに「このダムにひとこと言いたい20連発!!」と変えてしまいました。まさかこんな堅い会場だと思わなかったから…。これも吹っ切れたひとつの要因。


ドン引きされるかと思いきや受けた 調子に乗って言いたい放題

内容は、宮島さんと僕が気になるダムをそれぞれ10ダムずつピックアップして、「このダムはいい」だの「このダムはどうなんだ」だの、好き勝手にコメントをつけるというもの。言うなればプロ野球の監督やコーチに向かって素人が居酒屋の野球談義をするようなもので、今思えばなんて恐れ多いことをしてしまったのか、と思いますが、思ったより受けたので調子に乗って言いたい放題したところ、終了後に名刺交換した方から「あれ実は私が設計したんです」などと言われ平身低頭することになったりしました。


メルヘンチックな装飾のダム全否定 僕はいったい何をやっているんだろう

そうして、誰にも怒鳴られることなく、何とか講演も終了。後半にはパネルディスカッションが行なわれ、その後無事閉会となりました。

これだけの恥をさらしたので、もし今後こういう機会があっても、もう東大という名前にビビることはないでしょう。許されるのか分かりませんが、今度はほかの用事がないときに「東大の建物を見る」という企画でまた中を探検してみたいと思います。

本気で大人失格だと思った

前半は東大の雰囲気に圧倒され、後半は会場の雰囲気に圧倒されて疲れましたが、今回気づいたことをまとめますので、もし今後東大で講演する、という方は参考にしてください。

  • 本郷三丁目は「ほんさん」と略される
  • 赤門は勝手にくぐっても怒られない
  • 構内はうんこくさい(時季による)
  • 人前に出るときは身なりに気をつける
  • 少なくともジーンズはないだろう

…たぶん身なりにさえ気をつければ何とかなると思います。

安田講堂は三浦雄一郎さんの講演会だった

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