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フェティッシュの火曜日
 
巨木銀座? 府中を行く
巨木!
(写真は日比谷公園のイチョウ・2005年当時の写真)


人には意外な一面のひとつやふたつぐらいあるだろう。

この記事の筆者にとっての意外な一面は「巨木フェチ」という点だ。大きな木が好きなのだ。『巨木・保存樹木鑑賞会』という会合も行っている。誰に言ってもあまりピンと来ないみたいなのだが、当サイトでも何度か巨木に関する書いてきた。

都会の巨木・保存樹木鑑賞会(2005年)
都会の巨木・保存樹木鑑賞会・おかわり(2006年)

気がつけば前回の巨木関係の記事から2年の月日が経ってしまっているが、今回は、巨木が多く存在するという巨木マニアの憧れの地、東京・多摩は府中市に向かいました。

巨大で雄大なアイツを見に行こう。

(text by 梅田カズヒコ



取材日前日、住所と簡単な見どころを調べ、行きたい巨木に蛍光マーカーをつけていく

序章 『府中市の謎』

巨木マニアにとって、情報源となるサイトがいくつかあるのだが、僕が参考にさせてもらっているサイトに、巨木名木探訪というサイトがある。このサイト中の東京都の巨木・巨樹リストというものを見ると、ここで紹介されている東京都の巨木のうち、実に半数以上が府中市のものであると分かるだろう。

なぜ府中市にこんなに巨木が密集しているのか?

今回はこの疑問をぜひ調査したい。周囲の人に上記のサイトを見せながら「ねえねえ、なんで府中には巨木が多いんだろうね?」と聞いたら、「このサイトの管理人さんが府中に住んでいるんだよ、きっと」と釣れない返事を返されてしまった。でも、僕は信じない。信じたくない。府中市に巨木愛好家としてのロマンを感じてしまったのだ。

というわけで、1日で最大限の巨木を回れるように事前に地図で巨木の所在地を入念にチェックして、床についた。明日は巨木をたくさん見てやるぞ。むふふ…zzz。(←眠っている)

 

翌日朝 府中駅

珍しく早起きして府中にやってきた。普段は仕事であろうと寝坊をしてしまう困った筆者なのであるが、好きなことのためなら早起きできるものだ。

さっそく、府中の街に降り立ったところ、府中は巨木の街説を裏付ける看板に街のいたるところで出会った。

府中の看板は樹木だらけ!

なんで僕の気持ちが分かったんだろう!
なんで僕が巨木を見ることを府中の人は知っていたんだろう!

これは、巨木・保存樹木鑑賞会にとって追い風だ。さっそく“巨木銀座”府中の巨木たちを見ていくとしよう。

 

01 菊地稲荷のエノキ


きくちいなりのえのき
府中市宮町1-25-8 (府中駅徒歩4分)
樹高12.5m 樹周2.9m
ニレ科エノキ属 
落葉高木

元気度:★★★★☆

 

駅前の立地ゆえに、周囲はタワーマンションだらけ。でも、どうどうとした咲きっぷり。こういう立ち居振る舞いをしていたいと思わせてくれる。
稲荷なので、祠はあるにはあるが、稲荷をのぞけばこのスペースは巨木のためだけにあるといっても過言ではない。

駅前一等地のブレないアイツ

京王線の特急以下すべての電車が停車する大きな駅、府中駅前から歩くことわずか4分。早くも巨木が僕の前に姿を現した。

駅前立地。拝みやすい巨木である。周辺の高い建物に押され、少し小さく見えなくもないが、コケを生やしながらのびのびとはえる様子は、気高さすら感じる。

この土地はほぼ、この木のためだけに残っているような区画で、周囲はすべて駅前の住宅になっている。ということは、この木は府中の大地主である。いいなぁ。この土地、譲ってくれないかなぁ。

人間のルールだとそういうことになるが、巨木はただそこに生えているだけである。 駅前だろうと郊外だろうと関係ないのだ。京王線の電車がこの地に走ったのは1916年のことらしい。ということは、多く見積もって100年である。

おそらく、この木は京王線がこの場所に走る前からはえていたのだろう。駅も、住宅も、みんなみんなあとからやってきたのだ。

僕が巨木にあこがれる理由は、『この土地の地価はいくらだから』的な人間の欲深いルールを無視してただ単に咲いているところである。欲の固まりが歩いているような人間界の僕としては、ただそこに生えているだけの巨木のような存在になりたい、と強く思う。

僕が樹木に求めているのは、そういう“不動”な感じである。

 

02 大津家のカヤ


おおつけのかや
府中市宮町1-9-4 (府中駅徒歩3分)
樹高20.0m 樹周3.5m
イチイ科カヤ属
常緑針葉樹

元気度:★★★★☆


真下から

 

もじゃもじゃっとした小枝。ぼくには毛細血管みたいに見える
自然崇拝

シネコンの看板を隠すまっすぐなアイツ

こちらも駅前一等地の、駐車場の奥にある。駅前に立地するシネマコンプレックスの隣。駅と反対方向から見るとちょうど看板をさえぎっているように見えなくもない。周囲には祠のようなものがあり、古くからこの木は自然崇拝の対象になってきたのだと分かる。

僕は思う。樹木と日本人のルーツには、仏教ではない何かがあると思う。古くから樹木は自然崇拝=自然の神様として祭られてきたが、古い日本人はこの木に神様的な存在感を感じたのだろう。今みたいに、ビルのない時代ならなおさら巨木は大きく見えたに違いない。

木の周辺は無造作に石が置いてある。気の周辺でうろうろしながらシャッターを切って、メモを取っていたら、周囲の人に不審がられた。地上げ屋とでも思われているのだろうか。

 

 
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