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ひらめきの月曜日
 
包んだり包まれたりする赤飯と饅頭
お赤飯のおにぎりではなく、中におまんじゅうが入ってる

赤飯に包まれたまんじゅう、というものがあるそうだ。埼玉県の一部の地域の郷土菓子である「いがまんじゅう」である(愛知県にも同じ名前のいがまんじゅうがあるが、これとは別もの)。

逆に中身が赤飯というまんじゅう、というのもあるらしい。これは京都を中心に全国的にあってたいていは「赤飯まんじゅう」と呼ばれてる。

お赤飯は大好きだが、これまた大好きなまんじゅうとそんなに寄り添った関係だとは知らなかった。私のあずかり知らぬところで包んだり包まれたりしていたのだ。

いが饅頭と赤飯饅頭。長いこと憧れていて、いつか食べなければと思っていた。いつかっていつだろう。あ、今だ。

(text by 古賀及子

しまった、さいたまがダイソーの商品みたいになってしまった

スーパーには普通の和菓子しか見当たらない……

花の栽培しつつ、ずらずら鉄塔が並ぶ風景が印象的でした

2種類のおまんじゅうを巡るツアー

あんこのまんじゅうが赤飯に包まれた状態の「いがまんじゅう」は全国的にも埼玉県の行田市、鴻巣市、加須市、羽生市付近ににほぼ限定されて見られるお菓子。今は鴻巣市である旧川里町が発祥と言われているようだ。

というわけで、北鴻巣駅にやってきた。ここから川里地域に向かうバスが出ている。今日はいがまんじゅうのふるさとである川里の2軒のお店をめぐりつつ、最後に珍しく東京近県でまんじゅうの中身が赤飯という「赤飯まんじゅう」を扱っているお店がある桶川に寄るツアーを組んだ。参加者、私。ひとり。

ひとりだがテンションは高い。赤飯とまんじゅう。私にとっての大好きと大好きのぶつかり合いなのだ。みなさんも大好きな食べ物が目の前でがっぷりよつという様子を思い浮かべて欲しい。うち奮えはしませんか。今わたしはまさにその状態なのだ。ぶるぶるぶる。どちらのおまんじゅうも写真では見たことがあるが実際には食べたことも見たこともない。ぶるぶるぶる。

ちなみにバスに乗る前に、実際いがまんじゅうってどの程度地域に根付いてるのさと駅近くのスーパー2軒の和菓子コーナーを覗いてみたがそれらしいものは見つからなかった。和菓子屋さんにしかないもののようだ。

1軒目いがまんじゅうの「一福」さん

鴻巣は地名がかなりかっこいいのと、埼玉県民(筆者 古賀は埼玉育ち)の間では免許センターがあることで大変に有名な場所であるが、実際は花とお人形の生産が盛んな地域。バスに乗っていたらハウス栽培でパンジーらしい花がたくさん生産されていた。

そして花を縫うようにかなりたくさんの鉄塔が並んでいる。自分の記憶にはちょっとない光景。

と、旅気分満載でお送りしておりますが、バスは淡々と進み順調に一軒めのお店に着いた。まずは いがまんじゅうのその姿を写真でどうぞご覧ください。どーん。


もう1軒にくらべて赤飯の層が厚かった。写真だと まんじゅうの皮も厚そうだけど、これは表面が写っているだけで実際は皮はかなり薄く あんこががっちり入っている

普通の住宅にカポっとお店がはまったような一福さん

売り切れ間近! 商品はほとんど いがまんじゅう

専用の包装紙をつけたのは、県外からのお客が増えてきたごく最近のこと

慣れない者には何かの間違いのように見えます

がーん(美味しさにショック)

感覚で300個〜500個つくり、そして売れる

まんまるで、でかい。1個がかなりずっしりしている。帰ってから測ってみたら一つ160グラムくらいあった。ああ、数字で聞いてもでかいのかそうじゃないのかわからない。だいたいコンビニのおむすびの50%増しぐらいの感じだろうか。このサイズどこかで……と思ったら、硬式野球ボールだった。

お店、一福はちゃきちゃきしたおかみさんが店を仕切っていた。自転車や車で乗り付けるお客さんがゆるやかに途切れない。

40年のお店の歴史の中で、いがまんじゅうは30年作っているそうだ。最初はきれいな上生菓子なども売っていたのが、だんだんと いがまんじゅうにシフトしていったのだそう。今はいがまんじゅうを1日に300個から500個作っているという。

作った分は毎日たいてい売り切れているというからすごい。早いと午前中で売り切れるらしいことがお客さんの「あ、まだあるわ、よかった!」という11時現在のコメントで知れた。

でも、毎日売り切れるとしたら300個から500個の製造数って結構差があるよなあ、と思って聞いてみたら。「まあ、そのときの感じで」作ってるそうだ。すてきすぎるアバウト。

まんじゅう15個を勢いで購入

実は、事前に電話で簡単な取材のお願いをしたついでに売り切れると困るので私も少なくて悪いかなと思いつつも「3つ」予約していた。これがおかみさんは「3パック」と解釈したようで、なんと1パック5個入りを3パック、つまり15個用意してくれていた。じゅ、じゅうごこ……。

他のお客さんを見るとどうも車で来て大量買いをするのが普通のようだった。おかみさんが3パック、と思ったのも無理もない(そしておかみさんは、私も当然車で来たのだと思っていたことが後の会話で分かった)。

見ればものすごくおいしそうだし、なにしろ長年の憧れの いがまんじゅう。ややひるんだ私だったが、せっかくだから買います! と15個全部買ってしまった。われながら豪儀。言っておくが、一つが野球ボール大である。「言っておくが」って誰に言っているのかといえば、私自身にである。

するとおかみさん、私の豪儀に答えてくださった。「若い人だしサービス」と、さらにお赤飯を1パックくれたのだ。わーー!! ありがとうございます!

「ほら、スポーツでもそうじゃない? ちょっとしたことで流れが変わるのよ。商売も同じだから。サービスひとつで流れが変わるのよねえ」

??? と思いつつ、お赤飯をいただいた嬉しさで「そうですよね!」と朗らかにレスポンスしてしまった。しかし、がばがばだった私のリュックはいきなりぱつぱつだ(左上のショウケースの写真のおまんじゅうのパック3つと奥のお赤飯のパック1つがリュックにおさまりました)。嬉しいが大丈夫なのかこれ。

味はどうなのさ

次のバスまで時間があったので、バス停の前(つまり道ばた)に座って早速たべてみた。

お、しょっぱい。赤飯にはゴマがついてなかったが、しっかり塩気がある。二口目であんこに到達すると、あまじょっぱさできゃー! となった。きゃー! おいしい、おいしいわー!

いがまんじゅうは今まで私の憧れのおまんじゅうだったのだが、食べてもこれは私のアイドルだ。きゃー、きゃー。

お赤飯のしょっぱさとあんこのあまさがかなりしっかりしている上にボリュームもあるので1個で相当おなかに来る。でも、おなかにガツンとたまりながらももう1個! となってしまった。

本気で2個目を食べてくれようかと思ったところでバスが来た。次のお店でまた1つ食べること、その後じわじわと満腹になってなかなかお腹がすかなかったことを思うと、ここで2個食べていたら旅は中断されたであろう。よかった。


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