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ひらめきの月曜日
 
別の意味での「鳥人間コンテスト」

●切磋琢磨しあう鳥人間たち

  続いてのフライトは工藤さんだ。林さんの熟練したハトのあとに、どんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。


静かにイメージを膨らませるフライト前

 いよいよ飛翔、というタイミングになると工藤さんの表情が変わった。気持ちを集中させているのがよくわかる。

 確かに本家の鳥人間コンテストでも、フライト前のパイロットは緊張で引き締まった顔をしている。やってることが全く違うとは言え、このあたりは共通しているのではないかと思う。

 さあ、旅立ちの時は今だ。


エントリーNO.3「名もなき鳥」

 すごい。声がすごい。どんだけ練習してきたんだ、という発声だ。

 しかし練習について聞いてみたところ、まったくのぶっつけ本番であるとのこと。それでこの鳥っぽさ。そもそものメンタリティが鳥に近い人ということなのかもしれない。

 特徴として挙げられるのは、これまでのエントリーがモチーフとした鳥がはっきりしているのに対し、工藤さんの鳥はあいまいだということだ。はっきりしたモデル鳥はないとのことだが、それは決して鳥っぽさとして劣ることにはならない。鳥という概念を抽出して凝縮した上で、個性ある形で表出されているからだ。

 (こういう風に適当なことを考えて、それぞれ審査員気分で読んでいただけると幸いです)

 動画終盤では工藤さんの声に反応したのか、カラスの鳴き声も聞こえてくるではないか。


カラスも反応する鳥っぽさ

 動きも過剰にわかりやすい鳥らしさを前面に押し出すのではなく、抑制をきかせつつもあくまで鳥、という匙加減。

 これまで何度も会ってきたとき、工藤さんの中に鳥を感じたことはなかったのだが、今回のことでそのポテンシャルに打ちのめされた格好だ。終盤の動きにやや迷いが見られるあたりも逆に味わい深い。

 このコンテストの見どころは、鳥っぽさの演技に加え、鳥人間が普通の人間に戻る瞬間にもある。鳥と人間の端境にしか見られない、瞬間のはにかみがそこにはある。そういう意味でも、工藤さんのこのエントリーは趣きがある。

 本家「鳥人間コンテスト」でも、ライバルがいるからこそ燃えてくる気持ちというのはあると思う。あのチームに負けたくない、という思いを翼に乗せて彼らは翔ぶのだと思う。


心静かに燃える鳥人間

 それは今回の大会での私にも同じことが言える。2人に触発されて、もう一回挑戦したくなってしまったのだ。言い出しづらかったのだが、その旨を伝えると林さんも工藤さんも快諾してくれた。

 私たちはライバルであると同時に、鳥人間としての同志でもある。コンテストだからとギスギスすることなく、自由な気持ちで鳥になれるのもこの大会のよさだと思う。

 単に「勝手にすれば」ということなのかもしれないと頭をよぎったが、ここは前向きに仲間たちを信じたい。


エントリーNO.4「海で見た鳥」

 どうだろう。自己評価としては1回目よりいい感じに飛べたと思っている。まだ恥ずかしさのあった1回目よりも大きな鳴き声が響く。自分の中の鳥の殻が破れたのだと思う。

 モチーフは「海で見た鳥」。以前海の近くに住んでいたときによく見ていた鳥をイメージした。動画だとややわかりづらいが、途中で葉っぱをくわえているのが確認できただろうか。


葉っぱを食ってる人

 この演出は飛ぶ前から決めていたことではない。飛んでいるうちに「なんか足りないな…」と思いついて、とっさに葉っぱをくわえたのだ。ひらめきが生んだ行為だったのだ。

 「落ちてる葉っぱくわえちゃって汚いんじゃないか」と、人間の僕の気持ちが一瞬よぎったのだが、鳥であろうとする気持ちの方が勝って躊躇はなかった。動きにもよどみがないのがおわかりいただけるだろう。

 完璧とは言えないが、出せる鳥は出せた気はする。

 さて、ここまで男性が演じる鳥を見てきたが、女性の鳥も見てみたい。違った観点からの演技が見られるのではないだろうか。


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