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フェティッシュの火曜日
 
初めての野宿入門

かとうさんは、なぜ野宿をはじめたのか

今日の野宿は、近所だし野宿といっても初心者体験コース程度の難易度。のんびりと河原でビールを飲みながら、かとうさんから野宿についてのエピソードをいろいろ聞かせていただいた。話をしている最中でも、ウナギ釣りの竿先に付けた鈴が鳴るたびに、会話がストップするのが申し訳ないなと思いつつ。

以下、かとうさんの話がおもしろすぎて、書いていてちょっと長くなってしまいました。


  かとうさんって、いつ頃から野宿をしているんですか?
かとう

初めての野宿は、高校一年から二年に上がる春休みで、それは横浜から熱海に歩いていく小旅行でした。

  私だったら迷わず電車でいく距離ですね。
かとう 友達と二人で、道路の横の側溝に寝たのが私の野宿初体験です。戸塚でした。
  強烈な初体験ですね。なぜわざわざ側溝で。
かとう まだその時は野宿のノウハウがなくて。その次が高校三年の夏。
  私もはじめてキャンプでテントに泊まったのが高三の夏でした。男3人で奥多摩に2泊。
かとう 熱海に行った友達と二人、本州を歩いて縦断しようとしたんですけれど、新潟で友達と仲違いして、そこからは一人旅です。大好きなトイレ野宿に目覚めたのがこの時です。
  トイレ野宿?
かとう トイレでする野宿です。いいんですよ、水もあるし、屋根もあるし。第一トイレを探さなくていいから。
  は、はあ。
かとう これが初めての長期の野宿旅行でした。たぶんここですっかりはまりました。
  野宿をしようと思ったきっかけみたいなのってあるんですか?
かとう うーん、「野宿」というものがしてみたかったからです。
  なにか憧れていた映画とか本とかあったんですかね。
かとう とくに記憶にないのですけど……。「イージー・ライダー」とか? ……嘘っぽいですねえ。
  その映画をみたことはないのですが、なんだか違うなっていうのはわかります。

カメラマンが雑誌用の撮影。野宿撮影会。

  下世話な質問ですが、デートとかも野宿だったりするんですか?
かとう 大学の頃、初めてお付き合いした人との初デートが野宿だったんですよ!
  初デートで、野宿、ですか。
かとう 青春18切符で鈍行に乗って長野県の松本までいって、松本城のまわりをぐるぐるまわってベストな鑑賞ポイントを探して、そこで野宿をしました。ロマンチックでしょう。
  はぁ。私は山形の映画館で「Shall We ダンス?」とかでした。彼氏はそのデート、嫌がっていませんでした?
かとう うーん、どうなんだろ。結局その人とは長続きしなかったんですよね。最近になって、野宿と恋愛は両立しないって気がつきました。

かとうさん、発する言葉が全ておもしろい。野宿っていうと旅の途中で泊まるところがなくて、仕方がなくするものっていうイメージだったのだけれど、かとうさんにとっては野宿そのものが旅の目的になっているようだ。

 

なぜ野宿をするのか

かとうさんが野宿を好きなのはとてもよくわかった。ではどこがかとうさんにとってのツボなのだろう。

野宿野郎になぜ野宿をするのか、という、登山家になぜ山に登るのか、と同じくらいに焦点が定まらなそうな質問から、野宿の楽しさを探ってみよう。


天然鰻と養殖鰻の食べ比べとかをしつつ話は進みます。

  ざっくりな質問ですが、野宿の目的ってなんなのですか?
かとう うーん、嬉々として、無為に時間をつぶすのが目的でしょうか…。はい。
  時間を使ってなにかをするとかではなくて、時間を使うこと自体が目的なんですね。移動手段は?
かとう 私は車もバイクもないので、大きい移動は電車とか船で、毎日の移動は徒歩です。
  元気ですねー。
かとう 徒歩が一番合ってますかねー。
  野宿をしている間は、どういうタイムスケジュールで行動するんですか?
かとう 野宿にいくと生活リズムが昔の人みたいになります。太陽が昇ったら起きる。歩いたりお昼食べたりして、15時くらいには今夜寝る場所を考え始める。そして夕飯を食べて、暗くなったら寝ると。
  おお、健康的。太陽の動きに合わせた生活ですね。
かとう 野宿ですから。

だんだん野宿というよりは、花見に近い宴会状態になってきた。かとうさんが座っているのはエアマット。私が座っているのが手前のゴザ。この差が後で響く。

  野宿には基本的に一人で行くんですか?
かとう 長い旅行は一人ですね。あ、でも2日間くらいなら人ともゆけます。井の頭公園とかで。
  長いってどれくらい?
かとう 最低2週間!(即答)。それくらい時間があると、ようやく体のリズムが野宿に合ってくるんですよ。
  社会復帰ができなくなりそうな長さだ。
かとう そうなんですよねー。

川縁で七輪を囲みながらみんなでビールを飲み、お互いの話(野宿とかウナギとか)を聞きあう。 普段かとうさんがしている野宿とはだいぶ違うようだけれど、これはこれでおもしろい。

でも話を聞いていて、だんだん一人野宿にいってみたくなってきた。最低2週間は無理としても、二泊くらいはやってみたい。

HOW TO 野宿

もう来週にでも一人野宿にでもいってみようかという気になってきたので、今度は具体的な野宿のノウハウを教えていただこう。


  野宿にはどんな道具を持っていくんですか?
かとう 寝袋とマット。後は着替え、自炊用の火器、などなど。
  テントとかは持っていかないんですね。
かとう 夏場なら基本的にテントなしですね。だから雨の時はとくに寝る場所に困ります。
  あー、雨が降っちゃうと最悪ですね。
かとう でも、いい屋根を見つけた時はよろこびもヒトシオなんですけど。
  砂漠でオアシス、みたいな。
かとう その日一日がいい旅になるかどうかは、寝る場所を確保できるかが一番のポイントですからね。

本日私の使命であったウナギが釣れて一安心。ビールの量が加速していく。

  食事はどうするんですか。
かとう 人からなんかもらったらそれを食べます。
  裸の大将みたいなこといいますね。けっこう食べ物ってもらえるものなんですか?
かとう もらえますよー。さりげなくおなかをすかせた顔をしていることが大事です。
  さりげなく…ですか。現地の人と仲良くなれるもんなんですね。
かとう どうなんでしょうか。私の姿が同情を誘っているのかもしれません。
  なんとなく想像がつきます。
かとう それ以外は、袋ラーメンを作ることが多いです。もやし入れるのが好き。あとは、野宿地リサーチをかねて、地元の定食屋さんなんかに入ったりもします。

またアカエイ釣っちゃった。

  旅の間、お風呂はどうするんですか?
かとう やっぱり毎日は入れませんが、とりあえず移動しながら温泉や銭湯を探します。
  いいですね。徒歩で移動して、ご飯食べて、お風呂入って。
かとう お風呂もときどき人が貸してくれます。
  え、貸してくれるんですか!
かとう 「この辺に銭湯か温泉はありませんかー?」って聞いてみると、近くにない場合、ときどき貸してくれたりします。わたしが臭かったのかも。
  なんだか江戸時代の旅人みたいになってきましたね。別に父親の敵討ちの旅とかじゃないのに。
かとう あとは多目的トイレで体拭いたり頭洗ったり。最近は立派なトイレがどこにでもあるから。
  洗濯はどうしているんですか。
かとう やっぱり多目的トイレの洗面所で洗います。そして日中ザックにくくりつけて乾かす。
  多目的トイレの使い方がまさに多目的ですね。
かとう トイレ大好きです。

どうもかとうさんは、生きることの能力がとても高いらしい。この人の話をそのままマネして行動したら、自分だと失敗するだろうなというのが簡単に想像できる。

 

野宿の危険性

最後に私が一番心配なこと。かとうさんの話を聞く分にはとても楽しそうな野宿なのだが、実際にはいろいろ大変なこともあるのではないだろうか。特に女性の一人野宿ともなればなおさらである。


  女性の一人旅、しかも野宿なんですよね。危ない目にあったりしないんですか?
かとう 幸いにあってません。貴重品は寝袋の中にいれちゃえば大丈夫だし。警察に家出と間違われ捕獲されたり、ヤンキーにからまれたり、酔っぱらいにからまれたり。それくらいかなあ。
  それはそれで十分イヤです。
かとう でもそんなことのほうが、不思議と思い出深かったりします。
  かとうさん、懐が深いですね。

突然の通り雨。やっぱり屋根は大事である。なんだか人が増えてきて、より混沌としてきた。

  旅先で怪我とか病気の経験は?
かとう 私、基本的に丈夫みたいで。あ、でも北海道を徒歩で一周していたときに足の甲を骨折しちゃって。すごい腫れちゃったんで病院にいったら、お医者さんはギブスで固めるっていうんですよ。
  そりゃいいますね。骨折だもの。
かとう でもそれじゃ旅は続けられないじゃないですか!
  あ、まだ旅を続ける気だったんですか。
かとう その病院からはとっとと帰ったんですが、さすがに徒歩での旅は無理そうだったので、ママチャリを買いました。しばらくテントで休んだら痛みも引いたので、自転車を漕いで野宿して、自転車を漕いで野宿してっていう生活をしていたら、すっかり骨折も治っりました(えっへん)。
  なるほど。薄々は感づいていましたが、見かけによらず基本的に無茶な人なんですね。
かとう あはは。
  最後に一つ。お金に余裕があっても、やっぱり野宿をするんですか?
かとう いっぱいお金があったら、野宿して、そのお金でおいしいものを食べます。もっともっとお金があったら、ちょっと考えちゃう。もんのすご−くいっぱいあったら、夢と野宿の国「のじゅランド」を建設します。
  でかい野望ですね。
かとう あはは。私、酔っていますかね。
 
 

 
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