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ちしきの金曜日
 
ドミニカに野球留学した男

まずは草野球からスタートだ

大人はソフトボール、野球は子供のもの!というのにカルチャーショックを受けつつも、やはりアチコチで野球は行われてたとか。といっても子供も大人も混じってやるような草野球。


「雨が止んで晴れ間が見えたら広場で野球してましたね。ホントもう遊びのレベルですけど。ホテルの近所にあるコルマードってなんでも屋が酒も飲めるようになってて、近所の人が集まるんですよ。そこに顔出すようになると『お前も野球やるか?』みたいな」

−−結構溶け込んではきたわけですね。

「でも、そこでやっててもマズイなって思ったんで、その頃出来てた友達に『どこに行けばちゃんとした野球教えてもらえるんだ?』って聞いたんです。そしたらセントロオリンピコって神宮外苑みたいな競技場があって、そこに行けば野球チームあるよと」

−−ちゃんと指導してくれるチームが。

「あっちは学校の部活とか町内会チームとかはなくて、全部私立のチームなんです。『××野球教室』みたいな。そのセントロオリンピコに行ってたら練習してるチームが居て、頼んだら入れてもらえたんです」

−−チームメイトは?

「下は10歳くらいで上は16、7歳くらいかなぁ」

−−そこに29歳の日本人が(笑)。でも大リーグでも日本人活躍してるし大歓迎じゃない?

「最初は凄かったですよ!『守備はどこだ?ピッチャーか?とりあえず投げてみろ』って。向こうはビジネスとしての見方が凄くて、いい選手がいてメジャーにでも行けば手数料ガッポリみたいな野球ゴロみたいなのも多いんですよ。でも投げて打つとこ見たら、皆さん落胆ですよ(笑)」

−−出版社リーグのFクラス出身ですからね(笑)。

「でもまぁ、それはそれで歓迎してくれて明日月謝持ってこいと。500ペソ(1700円)くらいかな」


ここがセントロオリンピコ。野球場が6面あるそう。

チームメイトが出来ました!

と、なんとか地元の野球チームに潜り込んだイワシタさん。しかし、日本ではないユルい入団だけに練習開始もサラリとは行かなかったようで。


「それで翌日練習に来たら誰もいないんですよ!他のチームがいたから『あれ?オレ時間間違えてきたかなぁ?」ってフラフラ歩いてたら、そのチームが『お前野球やるのか?』って聞いてきて、また『ちょっとやってみろ』って言われて、またテストみたいなのやって、また落胆されて(笑)」

−−二度もイチロー扱いされて、ガッカリされて(笑)。

「でもこの時方がヤなチームで『月謝100ドル持ってこい!』とか言うの。あと『ジュース買ってこい!』とか」

−−金巻き上げられてパシリ扱いって!

「さらに『今からお前を入れるかどうか検討するから走ってろ』とか言われたんだけど、一時間くらいしたら自分のチームがズラズラやって来て。一時間くらい遅れても当たり前なのがドミニカタイムらしいんですね。それで結局最初の所に戻ったんですけど」

−−後者のタカる気マンマンな月謝額からしても、前者が絶対信用できそうですもんね‥。

「ホント運良くいいチームで。強くはないんだけど。試合も出してもらえましたしね」

−−実際試合や練習してみて、自分はそのチームの中で力量はどのくらい?上の方?

「いや、もう全然ですよ!身体能力がぜんぜん違いますもん。細かい技術とかは日本の方が上だと思いますけど、肩の力とか全然上!」

−−なるほどねぇ。

「でもサボリ癖あるんですよね。グラウンドを丸く走ってても、監督いないといつの間にか円が小さくなってたり(笑)」

−−子供だねぇ〜。日本流の指導者がいれば凄く伸びるかもしれない?

「でも後で広島カープのアカデミー*2に行って支配人にいろいろ話聞いたんですけど、やっぱりサボリ癖はあるんですって(笑)」

*2広島カープのアカデミー:正式名称は「広島東洋カープアカデミーオブベースボール」。その名のとおりドミニカでカープが運営するプロ選手育成のための野球学校。アルフォンソ・ソリアーノ(シカゴカブス)は同校出身。


確かに手足スラっとしていかにも打ちそう。

カープアカデミーは連絡すれば見学出来るそうです。
ユニフォームなんかはお古。

適当なところがある意味国民性なんでしょーか。とはいえ、先に書いたとおりイワシタさんは入ったチームに恵まれたようで、月謝だけでユニフォームやTシャツももらえたりしたそう。ま、良いことだけでは無かったそうだけども‥それはのちほど。


−−三ヶ月いて成果ありました?

「守備は上手くなったし、一番は肩が強くなりましたね。でもバッティングはダメですねー。もともと打つのは苦手だってのがあるんですけど、守備は身体で覚えられるのに対して、打つのは言葉の理解力がないと難しいですね」

−−では現地でいい思い出は?

「うーん、野球とは関係ないんですけど日本からの移民の人に会いに行ったことですかね。コンスタンザってのどかな田舎なんですけど、コロニアハポネスって日本人街があって。そこにいきなり行ったら結構相手してもらえて、鶏のスキヤキを食べさせてもらいましたね」

−−牛じゃないんだなぁ。結構日本人の移民って多いんですか?

「お世話になった人は60歳くらいで中学生の時にこちらに来たそうで、最近まで裁判になってたらしいんですけど。*3『楽園だー』とか言われてあちこちの国に移植させてた時代の話ですよね。もう解決したらしいですけど。わざわざ作ってくれて嬉しかったですね」

*3最近まで裁判になってた:1950年代に日本海外協会連合会がドミニカ移住者を募集。1300人近くが渡航したが、宣伝とは全く違う荒れ地を与えられ悲惨な移民生活を強いられた。00年に移住者が国を相手どり提訴、06年に和解している。


バッティング練習などに使うネットは手作りだそう。

−−では、悪い思い出は?

「こっちは野球の話なんですけど(笑)、監督が町議か市議か忘れたけど議員なんですよ。それが対面だけ気にする人なんですよねぇ。基本的にお世話になったし、いい人なんですけどセコい所があって。プロテスタントだから酒もタバコも吸えないんだけど、影でちょっと飲んでたり」

−−大人も適当だなぁ、議員なのに。

「あと、日本に帰る間際にみんなの写真撮ったんですけど帰る直前に『写真を俺らにもくれ』って言うんですよ。それは全然いいんだけど『明日でいい?』って聞いたら俺がそのまま日本に帰っちゃうと思ったみたいで『ダメだ!』って言い出して。最後には『写真あげなきゃ(帰りにあげるつもりだった)ユニフォーム渡さないぞ』とか言い出して」

−−子供の喧嘩だ(笑)。

「帰る直前にグローブくれよとか言い出すし(笑)。最後に心付け渡そうとは思ってたけど、先に言われるとあげたくなくなっちゃいますよね。最終的にお金は渡したけど。1000ペソ、4000円くらい」

−−最後はカネカネだったんですねぇ。

「まぁ、金とコネの社会だなーとは思いましたね。金持ちは日本人なんかより数段いい生活してるし、下は川縁でトタン屋根の家住んでる、みたいな。まぁ最後揉めたけど(笑)、また行きたいとは思いますよ。あの人たちに会いたいって」


ドミニカまでの航空券が往復で約16万、3ヶ月間暮らして航空券込みでかかった費用は約60万円。これを高いと見るか安いと見るかはその人次第だけども‥個人的には妥当だと思うなぁ。別にプロじゃなくても、異国のチームで野球するなんてフツーないもの。しかも三ヶ月。


このユニフォームが手元にあって

こういう思い出があるんなら、

体験は額じゃないよね。とか思わされる所に旅行の面白さと恐ろしさがある。まぁ燃料費高騰は腹立つけど!

ドミニカ野球少年が目指すスタジアムだとか。いわば東京ドーム。

まぁ実際は危険もあるんだろうが

しかし聞けば聞くほど海外行きたくなるなー。今やPC一台あればどこでも仕事が出来る!なんて言うけど実際ムリだしね。話で満足するとします。

ということで、今回のような珍しい国に留学や何か体験をしてた人がいましたらぜひお話聞かせてください!チベット仏教修行とか、南アフリカ危険体験とか聞いてみたい。


 
 
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