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ロマンの木曜日
 
コンクリートのダイヤモンドヘッド

これを読めばあなたも中空ダム博士!

 僕はダムを見てまわるのが好きで、暇を見つけては全国各地のダムに足を伸ばしています。
(いつかリードにこの一文を書かなくてもいい日が来るといいな)

ダムのおもしろさは「水を貯める」という共通の目的の中で、地形や地質、そして予算に対応させるため、ダム本体の形式にいくつかの種類があるというところだと思っています。

そして、その形式のひとつに「中空重力式コンクリートダム」というものがあります。その名の通り、ダムの中に空洞があるのです。

そんな話を聞いたら、その空洞の中、見てみたくなりませんか?

萩原 雅紀



重力式と中空重力式

日本におけるダムのもっともポピュラーな形式として知られているのは、「重力式コンクリートダム」というもの(とは言ってもふつう知らないですよね)。これは読んで字のごとく、重力、つまりダム本体の重さによって、貯めている水の圧力を抑え込んでいます。

簡単に説明すると、谷間にどんと置かれたコンクリートの塊の重さで、その背後に貯められた水を支えているのです。

これに対し、同じ重力式ダムながらコンクリートを節約するために、水圧に対抗する重さを損なわない程度に内部を空洞化した「中空重力式コンクリートダム」が考案されました。


重力式コンクリートダムの断面図 中空重力式コンクリートダムの断面図

この形式が採用された1950年代から60年代はセメントが高価で、内部を空洞にしたのは少しでもセメントの使用量を減らすための工夫なのですが、その後セメントの価格が下がり、逆に構造が複雑なので設計や施工にかかる人件費が上がったため、現在では採用されることはなくなりました。つまり構造に凝っているヒマがあったら、コンクリートをひたすら詰め込んだ方が安上がりになったのです。

 

中空重力式の見分けかた

ところで、重力式と中空重力式は内部構造こそ違いますが、外観にそれほど大きな違いはなく、ヒヨコの雄雌と同様、専門的な知識のない人が見分けるのは非常に困難とされています。

しかし、僕は長年ダムを見てきて、中空重力式を簡単に見分ける方法を発見しました!今日は特別に、ここで皆さんにそれをお教えしようと思います。

何気なくダムを見た時に、「あれ、これ中空じゃない?」などと呟くことで、一緒に行った女の子からは一目置かれ、ダムの職員さんからは「よく知ってるねえ、ちょっと中見てく?」などと声をかけられることうけあいです(効果を保証するものではありません)。

さて見分け方ですが、重力式コンクリートダムにはたいてい、堤体のいちばん上の部分に、マニアの間で「襟」と呼ばれる横一直線の白い帯が入っています。


水不足で大変な早明浦ダムも 豪快に放流する下久保ダムにも襟がある

ところが、中空重力式にはほとんど襟がないのです。


「小さく前へならえ」してるっぽい高根第二ダムや すぐ手前に民家の建つ諸塚ダムには襟がない

もっとたくさんの重力式ダムの写真を並べて実証してみましょう。左側に中空重力式ダム、右側にふつうの重力式ダムを並べてみます。


北海道の金山ダムは中空でほとんど襟なし 室生ダムはふつうの重力式でばっちり襟つき
横山ダムも中空なので襟なし 似てるけど襟つきの長島ダムは重力式
いきなり登場する河本ダムも襟ほとんどなし キリッとそびえ建つ境川ダムは襟つき
すごく変わった形でしかも襟なしの穴内川ダム 朝日ダムはかなりベテランだけど襟の白さが際立つ
細い道を延々登った先にある中空の木地山ダム 冬の北海道で凍えながら撮った糠平ダム
到達難易度は最高クラス、大森川ダム 僕の記事でDPZ3回目の登場、小里川ダムも襟はくっきり

これでとつぜん重力式ダムに出くわしても、中空かそうでないかはバッチリ分かりますね!

ただし、日本全国にあるダム約2900基のうち中空重力式は13基しか存在しないので、実は出会う可能性はかなり低いのですが…。

ところで、ここまで延々中空重力式ダムの基礎知識みたいなことばかり書いてきましたが、いい加減もう皆さん飽き飽きだと思うので、そろそろこの記事のタイトルである「コンクリートのダイヤモンドヘッド」に話を進めます。

ダイヤモンドヘッド。それは、中空ダムの中に入って、全面をコンクリートで囲われた空洞の中で見ることができます。


 

 
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