アットホームなお店でした
横を通り過ぎる車の風を感じながら、「てっちゃん」の中に入った。 店内にお客さんの姿はなく、ママらしき人が僕をむかえてくれた。
「ちょうどさっきお客さんが帰って一息ついてたところよ」
と、ママさんが気さくに話しかけてくれた。
店内を見渡すと、カウンター席が5席、奥に7、8人が座れる座敷席がある。ママに促されてカウンター席に座った。目の前には常連さんたちのボトルが並んでいる。
いい匂いのおしぼりで手を拭きながら、生ビールとつまみのウインナーを注文した。 すぐに凍ったジョッキに入った生ビールが出てきた。キンキンに冷えている。これだけでも歩道ぎりぎりに歩いて来た甲斐があるというものだ。
ママさんにお話を伺うと、この場所にお店を構えて5年、外の車通りは確かに怖いがもう慣れたとのこと。今まで酔って外に出て事故にあった人はいないという。皆さん緊張して飲んでいるのかもしれない。現に僕も酔っぱらわないように気を張っている。
そんな事を考えているうちに、常連さんが2組やって来た。
みんなちっとも緊張していない。というか、このお店に来る前に一杯やっているらしく、既に酔っぱらっていた。
カウンターの常連さんは焼酎をグイグイ飲みながら次々に歌い、座敷の常連さんは「鶴の恩返し」には続編がある、という話しを始めた。
座敷の常連さんは僕に若い歌を歌えと何度も言って来た。
「サザンを歌えサザン、さざんかの宿でもいい」
と、どっちを歌えばいいのか分からない指示を出してくるので困っていると、「もういい俺が歌う」とマイクを握った。
常連さんたちと楽しい時間を過ごし、ビールと焼酎を結構飲んでしまった。 それでも僕は酔わなかった。やはり緊張していたのだ。
会計を済ませて外に出た。 常連さんたちは更に酔っぱらっていたが、大丈夫だろうか?
「てっちゃん」の外に出て反対側からもう一度お店の写真を撮った。 お店からはカラオケの音が漏れている。常連さんたちはまだまだ飲み続けるようだ。 本当に大丈夫だろうか?
酔っぱらうと危険な居酒屋は、アットホームで安くておいしい居酒屋だった。常連さんたちの様子を見る限り、慣れれば酔っぱらっても大丈夫そうだ。
何度か通えば何の心配もなく酔っぱらう事が出来るかもしれない。そう思ってボトルを入れておいた。