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聖地で迷う
商店街を離れ、住宅街を歩くこと約20分。教えてもらった場所は確かにこのあたりなのだけれど、まったくCDショップらしきものが見あたらない。路地は入り組んでいて角を曲がる度に方角を見失う。
こうなったらしらみつぶしにすべての路地を曲がってやろうと3つめくらいの角を曲がってみると、路地の奥に「CHIYAMA」の看板が見えた。CDショップというくらいだから派手に看板が出ていると思っていたのだが、CHIYAMAは一見人のお宅かと思うくらい控えめな外装だった。 |
お、遠くに看板発見。 |
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これが茅ヶ崎のレジェンド、CHIYAMAだ。 |
こちらが当時桑田さんが通っていたという伝説のレコードショップ「CHIYAMA」。サザンが茅ヶ崎を歌った歌、my little home townの詞にもこの「CHIYAMA」が登場する。
当時の桑田さんはどんな人だったのだろうか。CHIYAMAの店主さんに聞いてみた。
「いやあそれがまったくわかんないの。」
なんと!
当時CHIYAMAに通ってレコード棚とにらめっこしていた学生はたくさんいたのだとか。桑田さんもその中の一人だったようだ。桑田さんからしたらCHIYAMAは思い出深い青春の場所にちがいないのだが、店主さんからしたらお客さんの中の一人にすぎないのだ。
しかしなんというかそういう思い出を作り替えることなく、桑田さん?知らん、と言ってしまう店主はただ者ではなさそうに見える。いろいろとお話をうかがった。 |
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ずらりとならんだCDは。 |
やはりサザンが中心。 |

すごい値引きされてる! |
CHIYAMAとは
「最初はね電器屋だったんですよ、かれこれ40年以上前の話ですね。それから店舗を引っ越しして、だから桑田さんが通っていたっていう頃の店舗はここじゃないんです。」
店主の山本さん(茅ヶ崎の山本=CHIAMAなのだ!)は生まれも育ちもここ茅ヶ崎。65歳になるのだが、物腰が柔らかくて語尾がやさしい。言葉とか動作の端々に余裕というかある種卓越した感じがとれる。
「前の場所は家賃が高くてね、今はこうして自宅の一階でやってるわけ。結局これが一番落ち着くよね。」 |
そうか、やはりここは店主さんのお宅の一階部分を改造して作ったショップだったのだ。しかしこのお店、なんだかちょっと変わっている。ふつうCDショップというのは大音量で新譜を流していたりするのだが、この店は無音だ。カウンターの後ろにいかにも立派なステレオがあるのだが、音は出ていない。あれは山本さんが個人で楽しむための物のようだ。
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オリジナルTシャツは店頭のみの限定販売。 |
店内にはデビュー当時からのサザンのアルバムとシングルがずらっと並んでいる。中にはいまでは貴重なシングルレコードも普通に陳列されているのだが、いきなり70%オフなんて書かれているので驚きだ。
「本当はインターネットとか使っていろいろ売ったらもっといいアンプが買えるんじゃないかっておもうんだけどね、相手の顔が見えないってのは、どうもこう、気持ちいいもんじゃないよね。」
僕がお店にいる間にも近所のおばちゃんらしきお客さんがドアをちょっと開けて「あのさ、**の・・・って曲、あれすんごくいいのよー、取り寄せられる?」なんて具合に注文していった。大手のCDショップとは売っている物こそ同じでも、それ以外共通点が見あたらない。
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「好きな物ばかり集めてたらそりゃあ楽しいけどさ、そうなったら嫌な客が来たときに売る物がなくなっちゃうでしょう。」
そういう理屈で店内には**やら***なんかのCDも一応おかれている。たぶんこのあたりのCDを買いに来たお客さんとはこの人まったく話をしないんだろう。
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サザンが曲の中で使った「茅ヶ崎甚句」。 |
いとおしそうにオーディオを触ります。 |

幻のCHIYAMAインストアライブ。 |
予約、お願いします
こうなってくるとここでサザンのニューシングルを予約するというのはとても重要なことのように思えてきた。同じCDでも重みが違うだろう。山本さん、サザンの新譜、予約をお願いできますか!
「できないですね。」
できないのだ。
だめか、やっぱり僕はまだ店主山本さんの認められるところではないのだろうか
「いや、そうじゃなくて」
山本さんいわく、とにかく販売数が少ないうえに、各店舗に割り当てられる量は過去の販売実績に基づいてきまるのだとか。そうなると自ずとCHIYAMAさんのところのような「町のレコード屋さん」には入ってくる数が少なくなるのだ(伝説の場所CHIYAMAであろうと、例外は認められないのだ)。
「今は全国から電話で問い合わせをもらうんだけどね、泣く泣く断ってるの。だって期待させちゃって裏切るの辛いでしょう。もしかしたら余るかもしれないけど、お客さんをがっかりさせる可能性がある予約はね、取り付けられませんよ。」 |
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ということで新譜の予約は無理でした。その代わりになるのかどうかわかりませんがCHIYAMAの山本さんから特別に興味深いお話をたくさんうかがうことが出来ました。覚えているだけ書き出すと
・精米器買った方がいいよ
・つきたての米はうまいし、ぬかも使えるから
・漬け物はやっぱりほりたてがうまいよ(酵母が生きてるから)
・米をつくときには分つきがいいよ(ビタミンが豊富だから)
あとおっぱいの話とかもうかがいましたが載せません。 |
この袋、作ったんだよ(勝手に)。 |
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もちろん音楽の話もたくさんさせてもらいました。ジャズピアニストはなぜYAMAHAのピアノなのか、オールドJBLに真空管は本当に良いのか、などなど。伝説のCHIYAMA店主、山本さんは僕ごときではとうてい太刀打ちできない本物の音楽好きでした。
Tシャツとかネットで売ったらいいんじゃないですか、と軽く提案すると
「欲しい人には電話してもらいましょうか。で、僕が今みたいな話を延々して売るかどうか決めるの。」
と言っていた。売れない売れないといいながら儲ける気は特にないんだろうな、とちょっと安心しました。 |
3時間くらい話をしていました(気がつくと真っ暗だ!)。 |
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