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フェティッシュの火曜日
 
美容師は自分で自分の髪を切っているのか


閉店後の美容室にお邪魔してきました

世の中には色んな職業がありますが、自分のためにもその技術を活用できる場合が多いです。

例えばwebデザイナーなら自分で自分のHPをかっこよく作れるだろうし、建築家なら自分の思い通りの家が作れます。

では美容師さんはどうなんだろう。
自分で自分の髪を切ったりできるものなのだろうか。

もしそんなことができるなら是非一度その様子を拝見したい、ということで、早速美容師さんに聞いてみることにしました。

(text by めもる



いきなり本題に入り、即撃沈

今回お話を伺ったのは美容室WILL piccyの店長竹内さん。
その道11年のプロです。
いつも私のくだらない話を聞いてくださる心の広い方です。
早速またくだらない話を切り出しました。

Q.突然なんですが、美容師さんは髪を切るプロですよね。やはり自分で自分の髪を切ったりしますか?
A.「え?いや絶対しないですよそんなこと。もどかしくてイライラします多分」

こうやってこうやって、こんな風に切るんですよ〜というリアクションを想像していたのですが、ばっさりと切り捨てられてしまいました。無念。

竹内さん(29歳)。いきなりの変な質問に「は?」と面食らった様子だった

しかしもどかしいとはどういうことなでしょうか。髪を切るプロなら自分で自分の髪の毛を切るくらいたやすいことなのでは?と思っていたのですが、そんな美容師はまずいないそうです。

普段お客さんの髪を見るときは当然肉眼で直接見ることになりますが、自分で髪の毛を切ろうとすると鏡越しになり、左右対称のものとして考えなくてはいけないことがとてもイライラするそうです。
言われてみれば納得の理由です。

――でも自分の髪の毛を切ってもらうには相当信頼してる人に頼みたいですよね。
「知り合いのスタイリストに切ってもらうことが多いですね。もしくはアシスタントの子の練習台になったりもしますよ」

胸を貸すならぬ髪を貸すわけですな。

楽しそうに掃除機をかけてたアシスタント男の子。期待のホープ。襟足が気になった

閉店後の美容室にお邪魔したため、アシスタントの方が掃除や片づけをしていたことと、丁度アシスタントのお話しが出てきたところで、いやらしい話しですがお給料のことが気になりました。
「カリスマ美容師」が流行した時代、スタイリストさんは相当稼いでいるんだろうなと思っていました。
華やかな職業ほど沢山お金が貰えるようなイメージがありましたが、それはアシスタント時代も他の業種より多いのでしょうか。

衝撃の初任給、パンの耳への怒り。

Q.初任給って今どのくらい貰えるんですか?
A.「お店によって違うと思いますが、14、15万くらいですかね。」

す、少ない…。手取りで15万といったら家賃を引かれてしまったら…。 ただし最近は社員寮を完備しているところも多く(このお店も然り)、このサロンの寮費は無料だそうで、そう考えるとまだ余裕はあるようです。
ちなみに竹内さんの初任給は11年前で7万円。社員寮ではなく、家賃は7万弱だったそうです。トントンではないか。

――副業でもしない限り生きていけないのでは?
「そんな時間はなかったですね。朝練があって終電で帰るのが日課でしたから。空いてる時間は技術を磨くために個人的に勉強したり練習したりする必要もありますからね。生活は常にギリギリでした。パンの耳を売っているパン屋に「なぜタダにしてくれないんだ」とイラっとしたこともありましたよ。」

ただでさえ安いパンの耳の値段にまで怒りを覚えるほどカツカツな生活だったようです。それにしても芸術系の職業でも「朝練」ってあるんですね。そこまで忙しくて苦しいと、体育会系の職業に属しても違和感なく思えます。

下積み時代はパンの耳を販売していることにすら怒りを覚えた竹内さん

片づけの最中に目に入った椅子の様子を見て、自分の体型を考えると、美容室でお世話になるときにどうしても気になっていたことがあったのでそれも伺いました。

 

美容室で気になる肥満ならではの疑問

シャンプー台で頭を支えてもらうとき「重くて持ち上がらなかったら恥ずかしいぞ」と腹筋を震わせたり、 椅子に座り高さを調整されるとき「上がらなかったらどうしよう」と、ちょっとつま先で支えてみたりと小細工をしている私なのですが。

Q.カットするときに座る椅子って足で踏んで上下させてますよね。物凄い重い人が座って上がらないこととかありますか?
A.「空気圧で持ち上げてるからさすがに上がらないってことはないですよ。多少力は入りますけど。」

頭も訓練しているので持ち上げ方は慣れているそうです。これで一安心だと思いましたが、椅子に関してはペダルを踏む時の感覚で重さの違いはわかるそうで。
やはり今後もつま先を駆使しなくてはいけないようです。

仕事を終えた椅子に掛けられたタオルが、試合後のボクサーのように見えた。やり遂げた感が漂う

個人的な不安も解消されたところで、次に美容師さんの道具について聞いてみることにしました。
美容師さんといえばハサミです。

謎めいた行商人、通称「ハサミ屋さん」

Q.ハサミはどこで購入するんですか?専門店があるんでしょうか。
A.「『ハサミ屋さん』と呼ばれる行商の人が来るんです。キャリーケースにハサミを沢山持ち歩いてお店を転々としてます。」

専門職の数だけ専門用品を扱う店があって当然なのかもしれませんが、刃物全般ではなく、ハサミだけで生計を立てている人がいることにびっくりしました。
当然、ハサミ屋さんの人数は少なく、色んな店が同じハサミ屋さんを贔屓にしているので、業界の情報通になるそうです。
なんでも知ってるハサミ屋さん。不思議で怪しげなイメージ、喪黒福造が浮かびました。ちょっと怖い。

話を聞いた後だとなぜか鈍く怪しげな光を放っているように見えるハサミ

 

美容師ならではの悩み、そして恐るべき職業病

どの職業でも職業柄の悩みや職業病があるのではないだろうかということで、この点についても聞いてみました。

Q.普段の生活で職業柄の悩みや、職業病だなって思うことはありますか?
A.「うーん悩みは特にないですね…あ、道を歩いていてカツラの人はすぐわかってしまいます。気まずいです。」

なんと、これは物凄い能力!カツラの人にとっては恐ろしい事実です。
普段から頭を見る癖がついているので、対向車線から運転席を一瞬見ただけでもわかるそうです。すごい。
芸能人も「多分そうだろうな」という人はテレビを見ていてもすぐわかるそうな。知らない人を紹介されたとき「あ!」と思った瞬間気まずいんだろうなあ。

さてここで美容室ならではの、ずっと間近で見てみたかった物と待ちに待った対面です。


 

 
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