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ひらめきの月曜日
 
駅の『そうだ 京都、行こう。』的な広告を見よう
こういう広告が駅にはたくさんありますよね。
写真はJRの「教えてください、山梨先生」

電車で通勤しているある日、駅に貼ってある大自然が写し出された広告のポスターにはっとしたことはないだろうか(写真右のような)。もう、こんなつらい仕事の日々を抜け出して、たまには旅行に行ってのんびりしたいと。

こういう広告はたいてい鉄道会社(JR)や地元の行政が町おこしのために貼っているものだが、通常の広告より、なんだか独特の視点があって面白い。例えば、右の写真のコピーはJRを使って山梨へ行こう、というキャンペーンの「教えてください、山梨先生」というものだが、なぜ山梨が“先生”なのか、よくわからない。ただ、ポスター全体から、意味じゃなくて情熱のようなものが伝わってくるような気がするのは僕だけだろうか。

こういったポスターのキャッチコピーとして有名なのは「そうだ 京都、行こう」だが、それから15年経た今、駅のポスターはどうなっているのか、気になったので見てきた。

(text by 梅田カズヒコ



もっとよく知ろう! 駅のポスター

調べると、駅のポスターは大まかに言って2種類に大別することができた。これらを分ける名称はないが、便宜上、AタイプとBタイプと名付けることにした。


Aタイプはこういうもの。同様のものが違う駅にも貼られていることが多い

一方のBタイプはその駅だけに見られることが多く、作者のパッションが伝わりやすい。ときにメジャー作品を食う完成度を誇るものも。

両者はまったく違うことを言っていると思いきや、意外に「鉄道をもっと使おう」「鉄道を使って遠くにレジャーに行こう」という点で共通しており、その点で志が同じだと言える。今日は駅の広告をめぐる2つの流派を中心に、それぞれを鑑賞してみた。

都合のいいAタイプ



水郷 潮来 あやめまつり大会、という大会のPRだ。大会の内容も気になるが、不思議なのは「花に包まれた1日をJRで!!」というコピー。JRと花はあまり関連性がないような気もするが。

このように随所で都合のよい解釈が見られるのがAタイプのいいところなのである。どんどん見ていこう。


メロン(イメージ)。イメージ画像ということを記しておかないと怒られるのだろうか。 東京湾クルーズシンフォニー。内容はとてもロマンチックなのに、セロテープで破れているところを補強しているのがかわいそうだ。誰か新品と取りかえてやってください。

かなり主張の強い広告。食べ放題30分間! もも狩りにいたってはギャル雑誌のようにキラキラ光りまくり。

キャラクターが大活躍するAタイプ


湯西川温泉の竹の宵まつり。

まずは日光の湯西川温泉が主催する「竹の宵まつり」の広告。画面からは伝わらないかもしれないが、竹を様々な形にカッティングして、その中に灯篭を入れて飾ると言う幻想的なイベントらしい。調べてみると、こんなイベント(外部リンク)のようだ。

一見、スキがなく、まっとうな広告のように思う。でも、化粧品や車の広告と違うところは細部に表れている。


ゆにしかわ温泉のロゴマーク

湯西川温泉で『しか』である。しかが温泉に入って手を振っている。動物はともかく、ほかのキツネなどの動物については説明されていない。地元で有名な動物なのだろうか。

このようなキャラクター(みうらじゅんさんの言葉を借りれば『ゆるキャラ』だろうか)が大活躍するのがAタイプである。ちょっと見ていこう。


岩手のキャラクターは、中央の『そばっち』(蕎麦)を含め『うにっち』(うに)など5つのおわんのキャラクターがあるのだが・・・。 県北の『こくっち』(穀物)だけはおおざっぱな分類。

大活躍の群馬のキャラクター『だるまる』

今回の調査の主演男優賞は群馬のキャラクター、だるまるである。首都圏の駅では彼の活躍を様々な場所で見ることができる。


この夏、群馬がオススメです、と語るポスター。なぜこの夏は群馬なのか、何の根拠もないが、だるまるはかわいい。 温泉につかるだるまる。

旬の野菜を味わうだるまる。 出世するだるまる。
(キャンペーンが派手になっている)

地図に注目してみよう

こういうポスターに必ずあるのが地図、路線図である。

どれも似たようなものかと思いきや、この地図にはそのポスターの主張が満載である。気になったものを選んでみた。


こちらは優等生。制作者はきっと地図や路線図が好きなのだろう。JR東日本の路線をほぼ網羅。分かりやすい。 縮尺や、位置関係は変なところがないが、関係のないところは白ヌキ。ほかの路線なんか乗るんじゃねーという気合いを感じる。

山形の広告。山形の沿海部の駅名は詳細に描かれているが、下のほうの駅名のはしょりっぷりがすごい。これでは東北新幹線は仙台に行かない路線、上越新幹線の途中駅は高崎だけになってしまう。こうなると、なぜ高崎が記されているのか謎。 山梨の広告だから、山梨の電車網が詳細に書かれているのはしかたがないとして、首都圏方面のてきとうぶりはなんだろう。中央線の立川→新宿→千葉が圧巻の飛ばしかただ。新宿から千葉までノンストップ!!


フリーダム! Bタイプ

ここからはさらに自由度があがるBタイプである。たいていは、駅の関係者が作成しているものが多いようで、駅員の個性が随所に現れる。


書いていることはまともなのに、なんでハートマーク!?

これはJR代々木駅にあるのだが、代々木の駅を利用している人の何人かが、『内容はともかくなんでハートなんだろう』と思っているのだと思う。代々木駅はそこそこの人数が利用していると思うので、こう思った人の数もそこそこいるのではないかと思う。いつもの日常に突如入り込んできて、そして意味なく過ぎ去っていくハートマーク。僕はこういうのが好きだ。こういうものに出会えるから、街の散策は止められない。

このように、フリーダムな魅力にあふれているBタイプの魅力を紹介しよう。


大人の休日倶楽部会員パスの告知だが、真ん中左より、吉野家の広告(早い安いうまい)にインスパイアされたのか、『早い』『便利』『席も取れる』と表記。ここまで自信満々にこられると、『席も取れる』かぁ、と納得せざるを得ない。 コース名が並んでいて、最後に『等人気コースはお早めに!』というコピー。最初の北東北は行き先がわかるが、あとはどこに行くのかよくわからない。

入会申し込みすると、の吹き出しが妙に気合いが入っている。きっと、吹き出しを作っているとき楽しかったはず。 海の時の中に潜水艦の窓のようなものと、ヨット。なるほど、これは確かにかわいい。

駅のポスターって奥が深いですね

こういうポスターってたいていの人は普段は何気なく見過ごしていると思うけど、今回の調査で想像以上にたくさんの種類のポスターがあり、しかも、想像以上に自由な方向に突き進んでいることが分かった。

このままでは駅の広告はゆるキャラだらけ、地図は自分の都合のよい方向にゆがめられてしまうかもしれない。

しかし、僕はどちらかと言えば、そういう“穴”のあるポスターのほうが大好きだ。ま、これでいっか、という制作者の心に共感してしまう。完璧なものなんてつまらない。いつも少しのゆがみを持ち続けていたい、と思ってしまう。

駅のポスターから飛躍して大きな話になってきてしまった。危ない危ない、今日はこの辺で筆を置くとしよう。

次回は駅の注意喚起を促す広告をお届けします。



 
 
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