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はっけんの水曜日
 
うまそうだけど、食べちゃだめ
MT5(まじで食べる5秒前)


世の中にはうまそうなのに食べてはいけないものがある。消しゴム、歯磨き粉、消臭剤なんかがその例だ。食べてはいけないのならばあんなにうまそうに作る必要ないのに、といつも思う。そんなストレスを抱えて生きていくよりも、逆に食べられるように作ってみたらどうだろう。

※くどいようですが、消しゴムも歯磨き粉も消臭剤もうまそうですが食べてはだめです

安藤 昌教


消臭剤を攻める

うまそうだけど食べられないものがある。毒キノコとかガソリンとかだ。しかしこれらに食べさせようとする意図のないことはわかる。だが逆に人に食べさせたいとしか思えないものもある。匂い付き消しゴムや消臭剤なんかがその例だ。食べてはだめなのにどうしてそんなにうまそうに作るのか。

今回は個人的に特にうまそうだと感じる消臭剤に注目することにした。まずは本当にうまそうかどうか市場調査だ。

※うまそうに見えるかどうかの調査です。本当に食べて調査したわけではありません


これは植物の給水剤。うまそう(たぶんレモン味)。 だけどもちろん食べてはだめ。
燃料もうまそう。イチゴ味。 飲むならいいのか。
口の中でぷちぷちしそうだ。 これもぷちぷち系。前歯で一個ずつ噛みたい。

やっぱりどれもうまそうだった。しかもご飯にかけてうまそう、というおかず的位置ではなく、そのまま吸ったらうまそう、という趣味的位置につけているように思う。もちろんここでいう「うまそう」というのは意識が遠のいていくいわゆるトリップ状態を目指すものではなく、単に「その味を楽しみたい」、「食べたい」という純粋な情熱の喚起を意味する。

※「うまそう」と思っているだけで「うまい」といっているわけではありません

かき氷にかけたらブルーハワイになる。  
これなんて。 たぶんこれだ。
今回もっともうまそうだった消臭剤がこちら。 お茶あじ。

こうしてたくさん集めるとそれだけで幸せになってしまう、一個も食べられないのに。ちなみに僕がもっとも消臭剤を食べたくなる瞬間はやはり酔っぱらってトイレに行ったときだ。男性用のトイレだと目の高さの小物置き場に消臭剤がおいてあることがあるのだが、エサかしらと思う。あとビール一杯よけいに飲んでたらたぶんいってたな、と帰り際に振り返る。

※そこで実際に食べない理性は常に保つべきです

食べたら医者に相談しろ、と書かれている。  

今回見てきた中でもっともうまそうに見えたやつを一つだけ買ってきた。においとか性能とかどうでもいい、うまそうなやつを買ってきた、それがこれだ。緑茶ぷるぷるゼリーと書かれているところからして、まさか食べられるのか!と意図的に誤解してしまう。

スプーンですくったり皿に出したりするともうおかしくなりそうだ。

※どんなにうまそうでも実際には食べないでください

皿に乗せたらますますうまそうだ。  
スプーンですくってみたら頭がおかしくなりそう。 皿に移したら意外とたくさんで驚いた。

食べられるやつを作ろう

衝動を震える理性で抑えつけて先に進む。つまり消臭効果のあるゼリーを作ってこのカップに納めたら、それはまさに僕の夢見ていた食える消臭剤ではないかと思うのだ。これならば誰にも気兼ねなく何個でも食べることが出来る。

消臭成分は見本となる消臭剤同様、カテキンを含んだお茶の粉を使うことにする。

※紛らわしいようですが市販の消臭剤を加工しているのではありません

成分はお茶で合わせよう。  
カテキンが消臭効果を発揮するはず。 器は本物(しっかり洗いました)。

カテキンがたっぷり入ったお茶の粉をさらに鮮やかな緑のゼリーで溶かして固める。夜中に作っていて思ったのだが、僕は単に毒々しい色の食べ物が好きなだけなのかもしれない。ペプシから毎年夏になると出る青とか緑とかのコーラ、駄菓子屋で売っていたビニールに入った原色の液体、青汁、どれも好きだ。

※すべて食べられる材料を使っています

同色のゼリーで固める。  
お湯を注いで。 ゼリー液ができたら。

ゼリーの溶液でカテキン茶の粉を溶かすと、ザリガニがいる池の色になった。あまり僕が望んでいたような鮮やかな緑ではないのだが、安心して食えるのならば辛抱だ。しかし香りは良い。香ばしいお茶の香りの上に、ゼリーに添加されていた科学的ないい匂いが加わったなんとも形容しがたい混合臭だ。しらない国のおみやげ袋を開けたときの匂いみたいだ。

これを冷蔵庫に入れて6時間冷やして固めた。

※これは消臭剤ではなくゼリーです

消臭剤のパッケージに入れてカテキンをプラス。  
やばい、あんまりうまそうじゃない。 6時間冷やすとぷりぷりに固まった。

食べられるのに完璧になじむ

固まった自作消臭剤は完璧に部屋になじんだ。一瞬すげえ、って思ったがそれはそうだ、パッケージしか見えていないのだから。でも中身を知っている僕ですらだまされるくらいだからたぶんよくできているのだろう。

※ここから先を市販の消臭剤でまねしないでください

違和感なし(あたりまえか)。  
どこにでもなじむ。 もちろん玄関にも。

いよいよおまちかね実食タイムだ。今回は酔っぱらって帰ってきたら玄関においてあった消臭剤がうまそうだった、という設定だ。

いつもならば我慢するところを、今日は我慢しなくてもよいのだ。蓄積された欲求が解放される瞬間だ。

※これは僕が作った消臭剤に似たゼリーです。市販の消臭剤は食べてはだめです

ただいまー。  
お。 う、うまそう。
匂いはお茶だな(スプーンどこから出てきた)。 ぱく。

自作消臭ゼリーは普通にうまかった。

普通にうまいと正直なんか興ざめだ。もっと毒みたいな味付けにしといたらよかったのか。やはり後ろに巨大なリスクがそびえていてこそ手を出したくなるものかもしれない。人間の心に潜む深い矛盾が見えた気がした。

※市販の消臭剤は絶対に食べないでください

普通にうまいよこれ。  

カテキンは底にたまっていました。

検討の余地はたくさんある

自作消臭ゼリーはやはりうまかった。しかも成分からしてちゃんと消臭効果も期待できる。

だけど玄関とかトイレとかにずっと置いて、ある程度匂いを吸収したゼリーがうまいかどうか、その前にそんな日の経ったゼリーが食べられる状態なのかどうか、それはわからない(たぶんだめだとわかっているが名言したくない)。

それから実験中妻に、子供がまねするからやめてくれ、と言われた。お子さんのいるご家庭で同じことをする場合にはくれぐれも注意が必要だ。

※本当にくれぐれもお願いします。


 
 
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