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ひらめきの月曜日
 
大人ってなんですか?
大人になりきれない思いを抱いたライター26歳。


皆さんは大人ですか? こどもですか?

僕は26歳だが、いまだに大人の自信がない。もちろんチケットを買うときは「おとなです」と答えるし、お酒も飲む。そういう意味で、こどもではない。街中で学生の集団を見ても、自分がその輪の中に入っていけない気がする。それは僕が大人だからにほかならない。

しかしだ。じゃあ『私は大人です』とはっきり言えるほどなのか、といわれると即答できる気がしない。

あの頃のぼんやりした“こども感”を引きずったまま大人になってしまった気がする。

今日の記事は100%の自信を持って『大人です』と即答できないし、『こどもです』ともとうてい答えられない。そんなアンニュイなおとなたちに向けて書きます。

(text by 梅田カズヒコ



大人はきっと、字を間違ってもぐちゅぐちゅってしない。
大人はきっと、無理をしない。

大人について考えてみた

というわけで今日は僕らの永遠の課題である『大人』にアプローチしてみます。

「あの人って大人だねー」

って誰かが誰かに言われていると、むしょうに悔しくなってしまう。特に発言主が異性ならなおさらである。なんで僕じゃだめなんだろう。でも、悔しがれば悔しがるほど、こどもっぽい。大人は決して悔しがらないのだ。いや、でも反論したい。いや、反論しないほうがいい。ジレンマ。

どうして「あの人って大人だねー」といわれると悔しいのか。
ちょっとまとめてみた。

1.この場合の「大人」は褒め言葉である。
2.この場合の「大人」には紳士的、気配りができる、器が大きいなど、前向きな意味を含んでいる。
3.暗に僕は大人じゃない、と言われているようである。

箇条書きにしてみたが、大人、大人、という文字が痛く僕に迫ってくるのみで何の解決にもならない。どうすりゃいいんだ。

ライターという仕事を始めて様々なことを学んだが、その中のひとつにとても役立ったことがある。それは、わからないことはわかってそうな人に聞いてみる、ということだ。シンプルだが、こういうときは誰かの力を借りる必要がある。

うーん、僕の周囲で大人について何か話してくれそうな人と言えば・・・




石原壮一郎さん(45歳)。少なくても僕より確実に大人。

石原さんはライター、コラムニストで様々な本を出していらっしゃるが、中でも有名なのが「大人」シリーズである。

『大人養成講座』、『大人の女養成講座』、『大人力検定』、『大人の超メール術』、『大人のホメ力』、『大人の解体新書』、etc・・・。どんな本を出されているかは石原さんのオフィシャルサイトを見ていただくとして、まあとにかく大人についての本をたくさん出されている人である。と、言うわけで石原さんに聞いてみることにした。

 

大人って言った時点で大人じゃない

梅田:成人したので、法的には大人じゃないですか。でも、いまいち大人に自信がなくて。それで、大人ってなんだろうって思いまして。
石原:なんでしょうね。僕もその答えを追い求めているんですけど。40代になっても、わかりません。
梅田:なんでしょうね、大人って。
石原:でも、僕はもう大人だ、って言ったりしている人がいたら、そうとう大人げない感じですよね。
梅田:確かに。


「はい、大人の皆さんはこっち向いてください〜」
「あ、僕のことですか?」


芸能人で突破口を見出してみる、(が、暗礁に乗り上げる )

梅田:石原さんの思う大人ってだれですか? 例えば芸能人で。
石原:大人になろうという欲を捨てた瞬間に大人になれるんじゃないかと思うんです。芸能人で言えば森繁久彌さんぐらいじゃないですか。
梅田:そうとう大人ですね、それは。石原さんと同じぐらいの人で言えばだれかいますか。
石原:40代ぐらいでですよね。最近テレビを点けると、三谷幸喜さんと佐藤浩市さんがよくテレビに出られていますけど、2人とも素敵な大人だなって思うんです。でも、じゃあそれが理想だとすると、2人ともタイプが違いますよね。それを大人というひとつの評価でくくっていいのか、って思うんです。
梅田:難しいですね。正解はないのかって気がします。

大人って何気なく使っているけど、ずいぶん曖昧な言葉なのかもしれないと思った。


どうしても大人に見られたくて、大事な日はジャケット。


大人は究極のラーメンである

石原:なんだろうな。大人って、究極のラーメンみたいなものじゃないかと思うんです。世界で一番完成されたラーメンは、まだ誰も食べたことがないと思うんですよ。で、完成されたラーメンがあったとしても、それが世界一かと思うとそうじゃない。答えは無数にあるということでしょうか。
梅田:なるほど。ラーメンのたとえ、分かりやすいですね。

つかみどころがない大人という表現をつかんだ比喩を石原さんが言ってくれた。大人の突破口が見えたかもしれん。

梅田:じゃあ、ラーメンだとしたら、大人に系統があるのは確かですね。
石原:塩ラーメンな人とか、味噌ラーメンな大人とか。
梅田:その分類によると、何種類ぐらい居ますかね。
石原:うーん、トッピングによっても変わってくるしなー(笑)。


僕の中で石原さんは王道を行く醤油味。鶏がらスープだろうか。トッピングは・・・いや、本当はよくわかってない。

 

シャツが出る大人。
あんかけパスタに興奮する大人。

大人道、渋滞中。

梅田:大人の理想がそれぞれあって、味もいろいろあることが分かったんですけど、では、石原さんの目指す大人ってなんでしょうか?

石原:ダジャレがうけなくても気にしないような人ですかね。

梅田:やっぱりダジャレがうけないと気にしちゃいますか?

石原:そうですね。やっぱり気にしちゃいますね(笑)。でも、まずダジャレを言う時点で大人じゃないと思うんですけど(笑)。で、大人じゃないことをやって、うけないからってへこむのはそうとう大人じゃないですよね。

梅田:大人は相手に過剰な期待をしないですよね。

石原:でも、だじゃれを言わなければいいのか、と思うとそうは思わないんですよ。それは何か欠けている気がする。大人と言うのは、いいたいことがあるときはちゃんと言うことだと思います。ふとんがふっとんだーって。

梅田:なるほど。

僕は時折、言いたいことが言えなくなります。注意したいけどなんて言っていいのかわからないとき。明らかにこちらのミスや不注意を報告しなければならないとき。

でも、確かにそういうことをちゃんと言える人って大人だよな。これからまずは言える人を目指していこう。

 


石原さんの新しく出る本「大人の合コン力検定」も大人がテーマ。

梅田:合コンは、やはり大人が試される場ですか。

石原:そうですね。あれだけ大人が真剣になる場もそうはないですからね。ビジネスの力としても使えるのではないかと。

梅田:コンパってチームプレイですしね。

石原:そうですね。

梅田:そうやって考えると、奥が深い。

石原:奥が深いとか言っておきながら、ただ行きたいだけ、というのが大人なんですけどね(笑)

 

大人になりきれないから、大人ネタが続くのかも

梅田:もう、大人と名の付く本を何十冊も出していると思うんですけど、ネタはつきないんですか?

石原:ネタがつきると思ったことは一度もないですね。大人と言うのは乗り越えても乗り越えても次の山があるんです。大人は険しい道のりですよ。

梅田:なるほど。だから楽しんでいられるのかもしれませんね。

石原:そうですね。山があるから楽しんでいられるのかも。


そう。大人というのは、目の前の険しい道を楽しむ余裕ですな。

梅田:「大人」というテーマで文章を書こうと思ったきっかけってなんですか?

石原:最初に書いた本は「大人養成講座」という本で、その頃はまだぎりぎり20代でした。で、大人って言う別の生き物がいるなーって思って、別の文化を持った人たちを面白い観察対象として見ていました。でも、よく考えたら人ごとじゃないって。自分もいつかそうならなきゃいけないはずなんで。で、大人をじっくり見ていたら、大人の知恵とか、面白いこととかが見えてきました。大人と言うものは捨てたもんじゃないんじゃないかと。


あなたが今こどもで、もし大人になりたくない、と思っていたとしても、大人の知恵を学ぶことじたいは決して無駄なことではない。

 

大人は未来を予測して行動するから、前掛けをかける。

大人に自信がない人へ

僕は会社に就職した経験がない。だから、ビジネスマナーとか、この歳になってもよくわかってない。大人という言葉に少し劣等感があるのだ。

石原:梅田さんが悩んでいるビジネスマナーとか、そういうことも大人としてのルールだと思うんですけど、それは単に覚えればいい話で、それを覚えていても覚えていなくても、そんなことはたいしたことじゃないですよ。

梅田:そうですよね。それに、ルールと聞くと反抗してみようかな、という気になるけど、ルールと言うよりもう少し・・・

石原:ルールって聞くと、自分をしばりつける窮屈なものというイメージがあるけど、そうじゃなくて、自分を守ってくれる武器みたいなもので、そこを乗り越えてから、はじめて勝負が始まるみたいなところがあると思うんですよ。

梅田:楽器も、まずは型どおりやって、それを学んだ上で自分のプレイを身につけるわけですからね。

石原:でも、ビジネスマナーって、策士策に溺れる、みたいなところがあると思うので、あまり気にしすぎないほうがいいかもしれませんね。大人をふりかざす人ほど迷惑な人もいませんからね。



レコーダーで撮っているから、メモを取る必要はないんだけど、一応メモを取って取材に挑む。相手を不安にさせないために。大人というより衝突を避ける防衛策なだけなのかも。

 

誰でも簡単にできる『大人チップス』はないか聞いてみた

大人と言う漠然としたものを捉えるのは難しい。でも、さっきみたいに「これをすれば大人に近づける」みたいなワンステップがあれば、ぜひ教わりたいところだ。聞いてみた。

梅田:虫がいいんですけど、これさえ守れば大人っぽく見えるみたいな、誰でも簡単にまねできる大人ってありますか? ちょっとしたコツはありますか。

石原:そうですね。形から入るというのも大人ですからね(笑)。

石原:大人にしかできないというのは、人を褒めるということじゃないですかね。若い時って、同い年ぐらいの人で、あの人すごいな、と思ってもなかなか褒められないんですよ。

梅田:悔しいですからね。

石原:悔しいというのもあるし、言わなくてもいいと思っているんですよ。

梅田:それは使えそうですね。

石原:あとはなんだろうな。大人は天気の話ですね。世間話がちゃんとできるのが大人だと思います。世間話に照れがあるというのはまだだめですよ。

梅田:自然な感じで「今日は肌寒いですね」と言ったりとか。

石原:世間話は意味なんてなくていいんですよ。相手に考えさせちゃいけない。それができるのは大人だと思うんですよ。

梅田:なるほど。

石原:デイリーポータルZの皆さんで、世間話大会をしても面白いかもしれないですよね。順番に世間話をしていく、というのも。


誰でも簡単に大人っぽくみせるチップス

・人をちゃんと褒める
・天気の話、世間話をする

 

石原壮一郎さん、ありがとうございました

4年越しに石原さんとの面会が実現しました

個人的な話。

実は4年ほど前、東京に出てきてすぐのころに石原さんと一度飲みに行ったことがある。いや、その表現は言いすぎで、たまたま石原さんがいらっしゃる飲み会に僕も参加していたのだ。

当時ライターとしてまだ駆け出しだった僕は石原さんにいろいろと聞いてみたかったが、何を話してよいか分からず、ただただ目の前の瓶ビールを
明かすのに専念していた。本当はまったく飲めないのに。

その後記憶をなくし、飲み屋で寝て、今は退職されたTさんという編集者に介抱されながら当時の住居だった笹塚までタクシーで帰った。
『飲めないビールを飲んで店で寝て、大人に多大な迷惑をかける』
大人力0点の行動である。今思い出しても恥ずかしい。

後日、名刺を交換した人全員にお礼のメールを送ったら、石原さんは『また飲みましょう。いつがいいですか。』と誘ってきてくださったのだ。でも、飲みの席で失敗したなーというのがずっと頭にあったので、僕は何と返答していいか分からず、迷っているうちに結局そのメールに当時の僕は返せなかった。

で、そんな僕に対し石原さんは「たいした失敗ではなかったし、それがあったおかげで梅田くんは印象的だった」と話してくださった。確かに4年経っても、あの日のことを覚えてくれているのだから印象的だったのだろう。

今思うと懐かしい。今日は4年越しで、石原さんともう一度面会できて楽しかったです。

来月の7月14日には、河出書房より新しい著書「ちょい大人力検定」という本が出るそうです。お楽しみに。


 
 
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