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ひらめきの月曜日
 
うどんとパンの昔を想像する


歴史を遡ります。

うどんやパンを作る際、生地を「寝かせ」たり「発酵させ」たり、という工程があるのはご存知だろう。

さらにうどんの場合、強いコシを求めて足で踏んだり、パンに至っては一次発酵・二次発酵なんてものまである。実際に茹でたり焼いたりするまで、求められる作業のなんと多いことよ。

…あれ、なんとかならないか。

そもそも人類が最初からこういう知恵を身に付けていたとは思えない。何百年もの長きに渡り、工夫に工夫を重ねて編み出したのが、今のうどんでありパンなのだ。

先人には悪いが、今回はそういう面倒な工程を全部取っ払ってしまおう。果たして何が出来るんだろうか。

高瀬 克子



粉の違いが分からない

私は普段、うどんもパンも作らない。パンは子どもの頃に作ったことがあるが、その時も「発酵、めんどくせーなー」と思った記憶がある。

そんなわけで、いざ「うどんとパンを作るぞ!」と意気込んでみても「はて、どの粉を使えばいいんだっけ?」という段階から始めなければならない。


えーと、うどんは薄力粉でいいんだっけ?
いいようだ。

まずは、うどんから作ってみよう。袋の裏面に「手打ちうどんの調理例」なるものが載っていた。ふむふむ。やっぱり20〜30分よくこねるように書いてある。

でも、今回に限っては無視を決め込もう。とにかく「やりたいようにやる!」ことにしたのだ。


まずはボウルに粉を適当に出して、
塩くらいは入れておこうか。
水も適当にジョバーと。
あとは箸で混ぜるだけ。

もしも自分が古代に生きる人間と仮定して、この時点で入手した情報は「小麦粉と水を合わせてから茹でたり焼いたりすると、どうやらおいしい物が出来るらしいぞ」だけだとする。

ならば、私ならこうするね。


手に取って、
形を整える。このまま茹でようか。

話がうどん以前まで遡ってしまった。いかんいかん。
一応、麺の形にはしておきたい。

でも、一足飛びに生地を伸ばして包丁を持ち出すのは、ちょっと早いような気がしませんか。古代人として。


「生地を切る」という発想はまだないことにして、
手で伸ばすことにした。

「手で伸ばすことにした」と書いたが、気付いたらまな板の上で生地を転がしていたのだ。たぶん古代人たちも、知らず知らずのうちに生地を長くしていたに違いない。その方が茹で時間が短くて済む、という発見もあったはずだ。

それにしても、さっきから古代人古代人と連発しているが、それがいつの時代の人のことか、書いてる本人もさっぱり分かってません。


これが、面白いようにどんどん伸びるんですよ。
「まるで腸みたいだね」と古代人も言ったとか言わないとか
80グラムの小麦粉から、約1メートルの麺が完成。
これをそのまま沸騰するお湯の中へ。

もちろん「生地を休ませる」なんて発想は、この時点では当然ない。それは横着者の古代人Aが、こねた生地をほったらかしにした結果「あれ、こっちの方がおいしいぞ!」と気付くまで、しばし時を待たねばならない。

注:すべて想像で書いております。


あとは茹で上がりを待つばかり。

作り方はさておき、見た目は立派なうどんだ。立派すぎる、と言ってもいい。なんたって1本だもの。

しかしこれ、何分くらい茹でればいいんだろう。


加減がさっぱり分からない。とりあえず20分でいいか。
流水で表面のぬめりを取ります。

茹で上がった物を手で触ってみて「あらー」と思った。普通のうどんは柔らかいものだが、これは明らかに硬い。弾力性、ほぼゼロ。

曲がりくねっているので硬く見えないかもしれないが、実はほぼ最初に鍋に入れた時の形のままである。


せっかくなので大きな写真でどうぞ。表面のデコボコがご覧いただけますでしょうか。

てっきり、伊勢うどんのような柔らかい麺が出来るんだとばかり思っていた。というか、それを期待していた。「古代人はうどんのコシを知らなかったんだろうなー」などと書きたかった。

なのに、この硬さはどうしたことだ。


生醤油で食べてみよう。
通常、うどんを箸で持ってもこういう形にはならない。

口に入れると、非常にネッチリしている。何度も噛まないと飲み込めないくらいモッチモチだ。

これは明らかにうどんじゃない。いや麺でさえもない。「茹で時間の足りてない、伸びない餅」あたりが一番的確な表現だろう。

異様なまでにコシがありすぎる。…いや、これはコシうんぬんの話じゃないな。ただ「硬い」に尽きる。


あ、芯。

現代人である私は「混ぜが足りないうえに生地を休ませないとグルテンがうまく形成されず、このようにコシのない麺が出来る」という立派な仮説を用意していたのだが、実際は「茹で時間が足りないと硬いうどんが出来ますよ」な結果に終わった。

伊勢うどんも1時間くらい茹でるらしいし、もっと長時間茹でれば良かった。古代人もきっとそうしたに違いない。次はもっと気長に作ることにしよう。

さて、うどんのリベンジは日を改めることにして、次はパンを作ってみよう。もちろん古代(あくまで想像)の方法で。


 

 
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