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ロマンの木曜日
 
素晴らしきジプニーアートの世界

これがフィリピン名物、ジプニー

 フィリピンにはジプニーという乗り物がある。

ジプニーは、決められた区間を往復する乗り合いタクシーというか、まぁバスみたいなものだ。どの乗り物よりも安く目的地へ運んでくれるため、庶民の足として活躍している。

そんなジプニーの車体には、個性ある派手なペイントがなされており、さながらデコトラのよう。見ていてとても面白い。

今回は、このジプニーの車体に描かれたペイント、すなわちジプニーアートを観察してみようと思う。

木村 岳人



そもそもジプニーってどんなもん?

ジプニーはアルファベットではJEEPNEYと書く。その名の通り、元は米軍から払い下げられたジープを改造し、客を乗せたことに始まるそうだ。

今でも一台一台、トラックをベースに職人が手作業で作っているらしく、そのボディにはなんともいえない味がある。


ほとんど塗装の無いプレーンなジプニー 正面から見るとこんな感じ

どうだろう、カッコ良くないだろうか。私はカッコ良いと思う。

この写真のジプニーは極めてシンプルなジプニー。特にコレといったペイントも無く、側面には行き先や経由地を示す文字など、事務的な表示しかないプレーンなジプニーだ。これを基本に見ていこう。

ちなみにジプニーに乗るには、タクシーのように手を上げて止め、後部から中に乗り込む。中には長ベンチが二台置かれており、客は「骨格の限界に挑戦!」と言わんばかりにそのベンチにとにかく詰めて座る。


好きな所で乗れ、好きな所で止めてくれる。便利で楽しい乗り物だ


カラーリングされたジプニーたち

ジプニーの特徴は、なんと言ってもカラフルなペイントにある。先ほどのようなシンプルなジプニーはむしろ稀。たいていのジプニーは様々な種類の図柄をそのボディに纏い、騒音と排ガスを撒き散らしながら町を疾走している。

それでは、そのようなカラーリングされたジプニーをご覧あれ。


ポップにペイントされたジプニー。おもちゃのような色使い
アメリカーンなカラーに彩られた派手派手ジプニー
こちらはグレートブリテンな感じ。サイドは銀に落ち着かせているのが良い

フィリピンの首都マニラには、もの凄い台数のジプニーが網の目を縫うように走っている。しかし驚くべきことに、それらはいずれもデザインが違い、同じものは無いという。

それはやはり、手作りであるということが大きいのだろう。車体を板金職人さんが手で作り、塗装職人がオーナーの趣味に応じたデザインの塗装を行う。その全てが一点モノ。あぁ、なんて贅沢なんだろうか。


これまた派手にペイントされたジプニー 意外と、アニメチックなデザインが多い
パステルカラーで描かれた抽象的な模様 左はキリスト、右は日本の漫画のキャラクター

しばらくジプニーを観察していると、そのデザインにはある種の傾向があることに気が付いた。

先ほど、同じデザインのジプニーは無いと言った。確かに全く同じデザインのジプニーは無いのだが、そのデザインの元となるモチーフには、いくつかの共通性があるようなのだ。塗装職人ごとに得意のジャンルがあるのだろうか。

次ページからは、ジプニーアートをモチーフ別に分類しながら少し詳しく見ていくとしよう。


 

 
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