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ひらめきの月曜日
 
昭和通り商店街めぐり
 


今年は平成20年。つまりというか、当たり前のことなのだが、平成になって20年経ったというわけだ。

 平成になったのは、個人的には高校生の頃。元号が変わるという出来事はとても印象的で、それゆえなのか20年経った今も、平成という言葉には新鮮味を感じてしまう。

 ああ、ずいぶんおっさんくさい話になった。おっさんくささに追い討ちをかけると、先日たまたま通りかかった「昭和通り商店街」というのがずいぶん懐かしい感じがした。

 調べてみると、東京近郊には同じような名前の商店街がいくつかあるらしい。そういうわけで、めぐってみました。

小野法師丸



●ふとんカバー大会も開催中

  まず訪れたのは、先日何かの機会に通りかかってなんだか味わい深かった、江戸川区の小岩駅すぐそばにある「昭和通り商店街」。駅が近いということもあってか、取材時は雨にも関わらず、人通りはそこそこあった。


比較的近代的なゲート

 商店街の入り口付近は、にぎわう駅の喧噪をそのまま保っている。割と最近できたんだろうなと思わせる店も立ち並び、ただただひたすら昭和という感じの商店街ではない。

 ただ、足を踏み入れて少し歩くと、やはりその名に違わない雰囲気の店が見えてくる。


建物にがんばれと言いたくなるたたずまい
ラジオ商会という店名と字体が昭和

 「つるのや」の方は、店名を書いた軒の部分こそ、それなりに新しく感じられるものだが、木造の店舗は相当年季が入っている。建物にもつ焼の煙がしみこんで、この店自体がうまそうな感じもしてくる。

 「小岩ラジオ商会」は、すでに店名だけで年季を感じる。家電店の花形商品がパソコンや携帯電話になってもラジオ商会。平成生まれの人には意味がわからない名前かもしれない。


ここもいい字体
すごく狭い大会開催中

 「オオタニ」もたたずまいだけで入ってみたくなる雰囲気。必要がなくても鍋くらい買いたくなってしまいそうだ。

 別の寝具店ではふとんカバー大会を開催中。いろんなシーツや敷パット、カバーが品揃えされており、まさに大会の名にそぐわない様相。これでもかと選択肢を提示してくる勢いを感じる。


いろんなバランスが拮抗している丸正

 洋傘とショールの店「丸正」も、店が開いていないにも関わらず印象的だ。

 扱っている品物が洋傘とショールであるのに、この書体で「丸正」。今の感覚で言うとアンバランスであるようにも思えるが、それがかっこよくも感じる。そして看板全体のデザインのバランスが絶妙だと思う。

 JCBのカードが使えるらしいのもやや意外か。以上、小岩の昭和通り商店街より気になった店をピックアップしてみた。

●グランプリ受賞の商店街

 続いては来たのは中野駅。ここにも昭和の名を冠した商店街があるとのこと。駅から少し離れたところにあるらしいのだが、そこまで行くために別の商店街を通ることになる。


整頓された迫力
こうして並ぶとそれぞれゴミ箱とは思えないかわいさ

 早くも味わい深さを醸し出す。妙に整然と積まれた鮭の木箱には、道行く人も目を奪われていた。雑居ビルに入った店が使うためのゴミ箱も、こうして並ぶとクラスの集合写真のようで、それぞれがかわいらしく見えてみる。

 雑居ビルの名前は「ウケ島ビル」。カナ遣いや言葉の響きに、ディティールにもぬかりがないと思ってしまった。


昭和かつ今、といった趣きか

 木箱やゴミ箱の道を過ぎて歩くと、「昭和新道商店街」に着いた。道幅も小岩の商店街と比べるとかなり狭い、こぢんまりとした通りだ。

 さて、明朝体で「昭和新道商店街」と掲げた街灯の柱に、オレンジ色の看板が張られているのがわかるだろうか。


意図的なレトロ感を感じさせる
グランプリを受賞したらしい

 上部には「昭和と今が出会う街」とも書いてある。よくよく読むと、東京都商店街グランプリ受賞などともあるではないか。昭和であることに自覚的なのだ。

 こうした自覚は本来の味わいを過剰に演出してしまうことにもなりかねない。やや心配にもなったのだが…。


演出感なし
自然体で昭和

 商店街というよりは、飲み屋街という言葉がふさわしくも感じるこの商店街。昭和であることに自覚的ではあるようだが、実態には作為を感じることなく、あくまで自然体。「ジョークマン」というスナックの名前は、うがった見方を寄せ付けない。

 言われてみたらかなりの昭和だから昭和押しにはしておくけど、だからどうするというわけでもない。勝手にそんなスタンスを想像してみた。


ムーミンじゃないけど返事したくなる

 週末の昼間に訪れたので、その真の姿は確認できなかったかとは思う。それでも思いっきり昭和があふれ出していた中野の昭和新道商店街だった。

●ゆるい密度の昭和通り

 続いては目黒区の祐天寺にやってきた。ここにも駅から少し歩いたところに、昭和通り商店街がある。


晴れた日曜の昭和通りは穏やか

 密度の高い電線に絡まないようにするかのように、「昭和通り」と書かれた電灯がずっと奥まで続いている。

 この写真で見るとなんとなく凝縮感のある昭和通りだが、実際はこれまでふたつと比べるとゆったりとしていて、商店の密度もそれほど高くなく、のんびりとした雰囲気だ。


毅然とした印象も感じるエリート
こういうオリジナルマークの酒屋、あるある

 それゆえ昭和感の強く漂う物件はあまり見ることができず、濃密さを求める向きにはやや物足りないかも知れない。

 それでもぽつりぽつりとそれっぽさを感じる店は見受けられる。これくらいの密度の方が、どこの街にでもあるカジュアルな昭和を感じられるのかもしれない。

●炸裂する昭和

 最後に目指したのは、川崎市の川崎大師近くにある商店街。京急の川崎大師駅の隣にある東門前という駅で下車したのだが、降りてすぐにあった電柱広告も一体いつのなんだと感じさせるものだった。


内容はともかく、訴え方に味わいがある
改めてニューバランスやコンバースをかっこよさを感じる

 昭和の前半性すら漂わせている風情の広告。下部には「食品協会」と、メッセージの発信元が書かれているが、よくよく考えてみると「食品協会」というのは、ずいぶん大雑把な括りの協会だと思う。

 目指す商店街の道すがらにある店もいい味を出している。中学生のときに感じたようなニューバランスやコンバースのかっこよさがにじみ出ている。

 さて、もう少し歩いたところで目的地に着いた。


万国旗があるのは今回初めて

 川崎市川崎区の「昭和一丁目」にある、昭和通り商店街。地名からしても、間違いなく昭和商店街なのだ。

 ひと目見て特徴的に感じるのは万国旗だ。


密度の濃い万国旗だが
寂しい…

 万国旗の派手さと、シャッターが降りた店が多い商店街とのコントラストが高い。

 この様子は、今回訪れたのが日曜日だったこととも大いに関係しているだろう。閉まったシャッターには「日曜日定休」と書いてあるものも見られたので、これが普段のこの商店街の様子というわけではないのだと思う。

 そう言えばそうだ、今でこそ週末もにぎやかな商店街が多いが、子供のころは日曜日になると商店街はひっそりとしていたものだった。そうしたあたりも忠実に昭和なのだと言える。


字体のデザインが泣けるほどの味
空気感がすごい

 そんな中でも、思いっきり昭和を背負っていたのが「昭和マーケット」なるアーケード。白地に赤で書かれた看板、「昭和」まではともかく、「マーケット」の部分のセンスは現在ではなかなか見られないものだろう。

 こちらも日曜ゆえか、アーケード内の店舗は閉まっていて、しーんとした雰囲気。


昭和マーケット内で唯一営業中だった店
テレビゲームは一台だけ稼働

 そんな中でも、ひとつだけ開いている店があった。テレビゲーム機が並んだ奥に、駄菓子類が並べられている。

 お菓子を見ていると、お店の方が「日曜は静かねー」とつぶやく。「でも、平日だと子供たちでにぎわうんじゃないですか」と言ってみると、「いやー、最近はこういうゲーム、みんなしないわねえ。家にもっと面白いのがあるんでしょうねえ」と返事。

 確かにそうかも…。うまくフォローできなかったので、というのも変だが、何か買おう。


瓶入りジュースが70円
小さく書いてある字がかっこいい

 瓶ジュースが並んでいるのが懐かしい。いや、左のサントリーオレンジエードは懐かしいと言えるが、右の緑色のやつは記憶にない。地域性もあるだろうが、相当前から売っていそうな雰囲気のジュースだ。

 今回は緑色の方をチョイス。ちゃんと冷えているのを奥から出してきてくれた。

 パレードと英語で書いてある下の部分をよく見てみると、「JAPAN SUPER DRINK」とある。すごい、言ってることはシンプルながら、かなりの自信だ。


平日はちゃんと商品が並ぶんだと思います

 パレードの味は、メロン味のかき氷シロップを炭酸水で割ったとしか言いようのない味。果汁とかビタミンとか、そうしたものたちの存在とは一線を画したジュースだ。

 おいしかった、というだけでは全てを表せない味。ごちそうさまでした。

東京近郊の昭和通り商店街めぐり。平成生まれの人たちが今回の記事を読んだら、どんな風に思うのだろうか。そんな風に思っている自分を自覚して、おっさん化の波に少しでもあらがわなければと思う。

 全国にはまだ他にも昭和通り商店街を名乗るところはあるようだ。青年とおっさんとの間をたゆたいながら、機会があった訪れてみたい。


 
 
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