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ひらめきの月曜日
 
水が甘くなるたくあんを求めて

漬物のプロの見解

「それはもしかすると塩分じゃないでしょうか」
--塩分?
「今から40年ぐらい前までたくあんの塩分はだいたい13%〜14%ぐらいだったんです。それが塩分控えめというのが世間の主流になってきまして、現在では3.5%というのが市販のたくあんでは普通になってきてるんです」
--すごい! 知りませんでした。


近頃のたくあんは、低い温度で管理することで低塩化しているそう。そういえば、漬物って本来は冷蔵する必要ないんですよね

--個人的な話で申し訳ないですが、私が子どものころ、20年ぐらい前のたくあんだとどれぐらいの塩分でしょうか。
「20年前ですとたくあんの塩分は5%ぐらいです。うーん、そうですか……。5%の時代に食べたたくあんで甘く感じたということは、もしかすると原因は塩分じゃないかもしれませんねえ。となると、甘みかもしれません。今のたくあんあって甘いと思いませんか」
--あ! 甘いですね。昨日も9種類食べましたがどれもかなり甘かったです。
「糖しぼりっていって、糖につけて水分を抜く工程を加えている製品もあるくらいで、全体的にたくあんが甘くなってるんです。塩分か甘みか……それで違うとなると、ちょっと分からないですねえ。」
--参考になりました。ありがとうございます!


確かに前ページで試食したたくあんはどれも甘味料が添加されていた

お話をまとめるとこういうことになる。

甘くない仮説3)
今のたくあんは昔に比べて低塩化し、甘みが増しているため水に甘さを感じないのではないか

たくあんというものが時代に乗って変化しているとは。多少変わるのは分かるが、塩分がこの40年で10%ちかくも少なくなっているのは驚きだ。

私が子どもの頃売っていたたくあんを再現するのは難しいので、とりあえず「昔ながら」と銘打っているたくあんを買ってみた。

昭和30年代のたくあんならどうか

用意したのはこれまで試食したたくあんと違い、甘味料が入っていないものだ。


漬け材はぬか、塩、こぶ、唐辛子、渋柿の皮のみ

自然食品の店にあった右側の方は、「昭和30年代の味」と銘打っている。漬物協同組合の方のいう、変化がおこる前のたくあんということだ。

食べてみた。

……すっぱ!

そうなのだ。きちんとラベルを読むと「昔なつかしいすっぱい」と書いてあるとおり、かなりすっぱい。甘くなる前のたくあんてこんな酸っぱかったのか。食後の水は一転甘いのだろうか。


さあ、勝負!

……うがー。だめだった。水は甘くなかった。

もう一方のたくあんも試してみる。こちらは酸味がほとんどなくほんのり甘さもあるものだったのだが、こちらもハズレ。

甘くない仮説3・結果)
今のたくあんは昔に比べて低塩化し、甘みが増しているため水に甘さを感じないのではないか
→×とっても興味深い事実だったが、私の追う水の甘さとは関係ないようだ

よく考えてみれば、私は酸っぱいたくあんを多分始めて食べた。子どものころ食べて水を甘く感じていたたくあんはもっとケミカルなまっ黄色のたくあんだった気がするのだ。


甘い水をおくれよー! うおー!

味覚のプロからの情報が!

畳をたたくこぶしをじっと見つめる。もうたくあんと甘い水のことは忘れたほうがいいのだろうか……・。

と、そんなとき。一通のメールが届いた。日本味と匂学会という、味と匂いに関する研究者800名からなる会の、しかも会長の二ノ宮裕三先生からだ! 調査開始当初に協力をあおぐメールを送っていたのである。

口も徐々にたくあん風味でいっぱいになってきておりますが、いましばらく調査は続きます。


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