■家の前にお茶の木があった
「ちょっと、圭司君、庭見てよ、庭!あんたからもらったバジルの種、撒いたんだけどどれが芽かわかんないのよ!どれがバジルか教えてちょうだい!」
朝からハイテンションな声に誘われて、庭に出た僕はまだお茶の木の事は知らなかった。
「えーと、これがバジルです。こっちは雑草ですね。抜いちゃいましょう。」
バジルの説明が終わると、今度は庭の案内が始まった。
「こっち来てごらんなさい、これは梅よ〜。こっちは三つ葉。三つ葉なんてそこらじゅうに生えてるんだから。」
庭には至る所に木や香草が生えていた。三つ葉は新芽の部分しか使わないそうで、それでもザル一杯取れてしまうのだとか。
「あれ、これアジサイですか?随分ちっちゃいですね。」
「そうなのよー、邪魔だったからこの家に来て全部切ってやったのよ!でもアジサイってしぶといわね。また生えてきて。そうそう、塀の向こうにはお茶の木もあるのよ。」
「へー。」
「ダジャレ?まぁいいわ、ほら、こっちよ、お茶の木。この木が邪魔でね〜、これも切ってやったわよ。でも切るのが大変で大変で、泣きながら切ったわよ!」
泣くくらいなら切らなきゃ良いじゃないですか、って言ったら「でも邪魔だったのよ!」と返ってきた。 |