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土曜ワイド工場
 
ヨットレースに参加して驚いた

ヨットだけれど最初はエンジンで進む

ヨットで出発といっても、湾内で帆を広げて、すぐに風に乗っていくのではなく、まずは帆を畳んだままの状態で、実はついているエンジンでゆっくりと進んでいく。

雪かき用のシャベルみたいな船の舵、目立たないところにこっそりとあるスロットルレバー、エンジンで進むとはいってもやっぱりヨット、私の知っている船とはインターフェイスがだいぶ違う。


出発進行! 右手に持っているでっかいシャベルみたいなのが舵。左手の小さいレバーがスロットルレバー。

ところで今日は風がまったくなく、海もとても穏やかなのだが、これでヨットレースは成り立つのだろうか。


お、釣り人発見!

 

港の外は荒れていた

港をでて、「あ、ちょっと風が出てきたかな?」と思ったら、すぐに「うお、なんだこの強風!」と、若干生命の危機を感じるような悪天候に変わった。


港をでたら、いきなり大荒れ。 ものすごい勢いでたなびく旗。

キャプテン曰く、油壺ヨットハーバーは山に囲まれていて、どんなに嵐の時でも穏やかな場所だから、港内と港外ではまったく天候が違う場合が多いらしい。海面が油の壺みたいに穏やかだから油壺という地名なのだそうだ。

油断した。

油壺と油断は文字が似ている。

 

セイルを張って海を疾走

私個人としては、この風だったら迷わず出船中止なのだが、今日はヨットレースなので、残念ながら「ちょっと風が強いから中止にしましょう」という訳にはいかない。

港からしばらく進んだ先のレースのスタート地点付近にきたところで、とうとうこのヨットに帆を掲げる時がやってきた。といっても私はボートの後方でしがみついているのがやっとなので、なにも手伝うことはできないのだが。


私に手伝えることはありません。 「よっこいしょーの庄助さん!」と、かけ声を心の中で掛けてみた。

さすがはヨット、セイルに風を受けると、急に海上を滑るように進んでいく。なるほどこれはおもしろい乗り物だ。

でもおもしろいんだけれど、船体が結構斜めになったままなのにビックリした。


斜めなのが伝わるでしょうか。

ヨットっていうのは曲がるときにだけ船体が斜めになる乗り物だと思っていたのだけれど、実は常に斜めになったままで進んでいく乗り物らしい。

まだレースも始まっていないというのに、強い風が吹いてきたらパタリと船が倒れそうな斜めっぷり。怖いです。

カービングスキーやスノーボードで雪上を板のエッジに乗ってカーブするような感じといえば伝わるだろうか。どっちもやったことがないので私がわかっていないのだが。とにかく、エッジに乗ったまま曲がらずに真っ直ぐ進んでいく感じなのだ。

 

タックという行動

このままずーっと走り続けると、スタート地点からだんだん離れてしまうなあと思っていたら、船長から「そろそろタックの練習をしましょう!」という声がかかった。

タックってなんだろうと思いながらヨットの手すりにしがみついていたら、右側にいたクルー達が全員一斉にブームをくぐって左側に走りだした。


それー!

左右反転したクルー達。一瞬なにが起こったのかまったくわからなかったのだが、どうやらボートの方向転換をすることを「タック」というらしい。みんなの動きがなんとなくドリフっぽい。

このタックという行為をどれだけスムーズかつ正確におこなうかで、レースの順位が大きく変わってくるのだという。

ところで風向きは一緒なのに、タックとやらをするとなぜヨットの進行方向を変えられるのかは素人にはまったくの謎だ。しかもこのヨットは風上に進んでいる。不思議だ。


タック終了!あらヨット!

このタックによってセイルが風を受ける面が逆になるのだが、その際に全盛期のスタン・ハンセン(帆船だけに)のラリアットを思い起こさせる勢いでブームがブーンと動く。

クルー達はその下をくぐってポジションチェンジをする訳だが、キャプテンが最初にいっていた「ブームに頭を打つと死ぬ」といった意味がよくわかった。これは確かにぶつかったら死ぬ。


タック、おっかないです。

タックの時に取り残されると、ヨットの低い側に身を置く事になるので、海面が目の前にきて何事かと焦る。そして濡れる。


水平線があり得ない角度に見えるよ。浅草の花屋敷にあるビックリハウスみたいな傾きっぷりだ。種も仕掛けもないのに。

何度かのタックを繰り返しているうちにスタート時間が迫ってきた。ここまででだいぶ疲れ切ってしまったが、レースはこれからが本番だ。


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