そのトンネルは何とも奇妙な空間だった。
トンネル内部は坂と平坦な道が交互に繰り返される構造なのだが、何度も坂と平坦な道が繰り返されていくうちに平行感覚がおかしくなり、今坂道を進んでいるのか、それとも平坦な道なのか、上り坂なのか下り坂なのか、さっぱり分からなくなってくる。
人間としての機能がじわじわ潰されていく感じだ。このトンネルを出たとき、私は違う生物になってしまうんじゃないだろうか。そんなバカなことを考えていた。
また、このトンネルは普通の公道ではないため舗装が簡素。デコボコが多くて車がかなり揺れる。壁もまるで掘った跡がそのまま残ってるような素朴なもので、飾り気は全く無い。
このいろんな意味でストイックすぎるトンネル、私は嫌いじゃぁない。 |