■落とし物ウォッチングは楽しい
僕は基本的に下を向いて生きているので、よく落とし物を見つける。財布やカギの束なんかも拾ったことがあるが、もちろんそういうのは交番に届けている。笑えない落とし物にはそれなりの対処がある。
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上野公園に落ちていたネコ。死んでる様に見えるが寝てるだけ。 |
落とし物の種類を楽しむのも十分に楽しいのだが、なぜそれがそこに落ちているのか?それを考えるのはもっと楽しい。妄想がどんどん脹らみ、妄想特急は加速をやめない。
これからも落とし物プロファイリングは続けていきたいと思う。
そういえば、アキの続きを書いてなかった。
アキは大学にいつもそんな夏の格好をして通っていた。同級生達は、アキのいないところでアキの事を笑っていた。「アイツ、アキなのにいつも夏の格好してるよな、変なヤツ」。
ある日、アキが憧れてた先輩を学食で見かけた。アキは気付かれないように近くの席に座った。憧れの先輩と同じ空気が吸える幸せを楽しんだ。すると、先輩達の会話が聞こえてきた。
「2年にさ、真冬でも夏みたいな格好してる女いるじゃん。あいつ浮いてるよなー。なんなんだろうな。」
アキはしたたかショックを受けた。憧れの先輩が自分の事を知っていて、それは嬉しいんだけど、どう聞いても自分のことをバカにしている。アキは食べかけのカレーライスをテーブルに残し、走って大学も飛び出した。
走りにくいサンダルは脱げ、いつの間にか裸足になっていた。「夏のバカ野郎!!」、夏は悪くないのに、夏に当たるアキだった。
以後、アキは秋っぽい落ち着いた格好をするようになった。そんなアキを見初めたかつての憧れの先輩はアキに告白をした。アキは迷うことなく振った。
かつて名前のことで文句を言った母親には、「アキって名前にしてくれてありがとう。あたし、季節の中では秋が好き」と言った。すると母親は、
「ずっと言おうと思ってたんだけどね、お前の名前は八代亜紀のファンだったおじいちゃんが勝手に付けたの。お父さんもわたしも知らない間におじいちゃんが出生届出しちゃってね。当時は揉めたわよ。カタカナなのは、おじいちゃんが漢字を書けなかったからよ。」
と言った。世の中には知らない方が良いこともあるということ知った20歳のアキだった。
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