NASAが頼みに来る
作業が一段落してコンセントを作っていた男性にお話を伺うことができた。このかたがコンセント職人であり、ここの工場長、そして表札の主である和田さんだ。
−−−いま作っているコンセントは
「アメリカのロケットに乗せるやつだよ、なんだっけ、ほら、あ、NASAだ。あそこはうるさいんだよ、ロケットって電源が限られてるだろう。だからすべての部品で電気のロスが少なくなるようにしているんだ」
−−−作り方で電気のロスは違うんですか?
「第一は素材だね。それで90%は決まる。だけど残り10%は磨きにかかっている。」
磨きの方法について教えてもらったが正直、よくわからなかった。ただ和田さんはもともと刀鍛冶であり、かつての刀狩りで仕事を失ったときにこのコンセント製造に出会ったという。日本刀の技術が生きているのだと思うとそりゃNASAも飛びつくだろう。
−−−きれいなコンセントは感電しないって本当ですか?
「ははは。感電しないわけないよ。ただ、痛くない。感電したときの痛みはノイズなんだ。抵抗が少なくきれいに流れている電気は感電しても痛くない。きれいに研いである包丁で指を切るよりも、紙で切ったほうが痛いだろう。それといっしょだよ」
さすが元刀鍛冶の発言である。最後に写真をお願いしたところ、作業服ではなく着替えたいとのことで左の写真になった。和田さんの右奥にあるランプももちろん自身で作ったコンセントがついている。
「明かりのやわらかさが違うんだ」
と満足げであった。
差してわかるすごさ
できたてのコンセントをひとついただいた。差してみるとスムーズさが違う。スムーズにささり、奥でカチリというしっかりとした手応えを感じて止まる。
抜くときがすばらしい。コードをいたずらに引っ張っても全く抜ける気配がない。なにもロックしてないにもかかわらず、だ。だけどコードの根元をもってひっぱるとたやすく抜ける。「カチッ」という精密機械のような音が心地よい。 |