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ひらめきの月曜日
 
蛇腹のエレベーターに萌えた日
蛇腹のエレベーター萌え〜


その昔、エレベーターのカゴには蛇腹が付いていた。右の写真のように。

僕はこの蛇腹にぐっとくるのだ。蛇腹って漢字もすごい。ヘビの腹と書いて蛇腹である。

ただ蛇腹が好きなだけなら個人宅の駐車スペースなんかを見ておけばいいような気もするがそうではない。

古いエレベーターにあるような蛇腹が好きなのだ。どこか高級感があり、かつ古さと洗練が交差するような感じが。

ああ、もう説明しきれない。本文読んでもらったほうが早いや。いざ、蛇腹のエレベーターの世界へ。

(text by 梅田カズヒコ



京都の老舗中華レストラン『東華菜館』へ

ここから一気に京都に飛びます。

京都の中心部、四条河原町の鴨川のほとりに建つ一軒のビル。東華菜館というレストランがあるのだ。それほど高くない価格で本格北京料理が味わえるということもあって、地元の人に人気らしい。

写真を見て分かるように建物の外観も素晴らしく、ヴォーリズという著名な建築家が建てたものらしい。
参照-W.M.ヴォーリズ(Wikipediaへのリンクです)

北京料理も建築も興味深いが、僕の一番の興味はそこじゃない。エレベーターだ。


1926年のオープン以来、お客さんを運び続けている現役のエレベーターがこの建物にはある。

東京で言えば奥野ビルのエレベーターも古いが、ここまで完璧に当時のまま残っていて、かつ現役で動いているものは少ないだろう。お店のオーナーによると、このエレベーターに乗るのが楽しみでここを訪れる人も少なからずいるようだ。僕のようなエレベーター好きがほかにも居ると思うと心強い気分になってくる。

じっと見ていると、この箱がどこか夢の世界に連れていってくれるような気分になるのは僕だけだろうか。テーマパークのアトラクションと同じ構造かもしれないが、大人を酔わす何かが蛇腹式エレベーターにはあると思わないか。いや、思う。(断定)

参照-奥野ビル(リンク先下部。サイト内の過去の記事へのリンク)

かごの中の赤いじゅうたん。
重量表示。LBS=ポンド。この頃のエレベーターは外国製なので単位がポンド表示なのだ。

そんなエレベーターに試乗させていただきました

管理者にお願いして、そんなエレベーターに試乗させていただきました。

まず見えたのは赤いじゅうたん。床に一か所、ぽつっと金色の丸い何かが見えると思うが、これを踏むとエレベーターの外の扉のロックが解除される仕組みだ。

四角形の角が取れているのも、合理性より優雅さが優先していた時代だということを物語っている。

注目は中にあった重量表示。2000LBSと書いてあるが、LBSというのはポンドのこと。この頃日本にはエレベーターを作る技術というものがなく、すべて外国の輸入品に頼っていた時代。

80年稼働してきたエレベーターはところどころに傷があったり擦り減ったりしている部分があるものの、古いもの特有の埃っぽい臭いは皆無。乗り心地も非常になめらか。管理者は言う

「最近はエレベーターの事故とか多いでしょう。古いものなので通常のエレベーターよりたくさんメンテナンスしてもらってます。おかげで事故はありません」

たぶん事故が起こってしまったら付け替えることになってしまうのだろう。いつまでもこのエレベーターを拝んでいられるように今後も無事故運転を続けてもらいたい。

本題の蛇腹です


2方向から開く構造になっているので、蛇腹も2辺に取り付けられている。まさに蛇腹のカーテン。

どうだろう、この写真。このページで僕が言いたいことは上の一枚の写真に集約されている気がする。素晴らしい。(僕が撮ったんじゃなく、同行のカメラマンが撮ったんですが。。)

80年の時を経て、今僕を乗せて動いている。蛇腹のカーテン越しに見えるのは、モザイクのように破片に別れた歴史ある建物の内部。

実にいいです。

 

5階の回数表示版。下向きの半円というのが珍しい

建物にも小技が効いてます

美しいエレベーターがあるところに、美しい建造物あり。

東華菜館はエレベーターだけにとどまらず、内装も凝っている。今回は蛇腹のエレベーターが主題なので、写真を掲載するのは控えておくが、5階建ての建物全体に余すことなく遊び心が駆使されている。

その遊び心はエレベーターの階数表示版にも生きていて、古い建物のエレベーターにはありがちな半円型の階数表示版だが、半円が下向きになっているのが珍しい。

現代の建物はよくいえば洗練、悪く言えば均一化されてしまって、建築者の微妙な遊び心というか、ふとした瞬間に見せるゆるい部分みたいなものがなくなってしまったのだ。今のビルはみんな同じ表情をしている。

東華菜館の建物を見ていてそんなことを考えた。


店内観(写真は4階大広間)

東華菜館

京都市下京区四条大橋西詰
阪急河原町駅、京阪四条駅徒歩3分程度

次のページも蛇腹です

 

 
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