大宮に到着
本来の目的駅である大宮に到着した。 都心に近いベッドタウンだけあって、通勤客がどどっと降りる。 ここで目を覚ませば何事もなく家に帰れるのだけれど、今日は乗り過ごしてしまおう。
いけないことをしている感覚
目的地であるはずの大宮駅を過ぎても、電車は変わらぬスピードでずんずん進んでゆく。 もし本当に寝込んでいたとしたら、この電車のスピ−ドは不幸へのスピードということになる。 そう思うと、なんだかどきどきはらはらしてしまう。 まずいよ、大宮はすぎちゃったよ、そろそろ起きろよ。
寝ている人も多い
車内は空いてきているが、中にはぐっすり寝込んでしまっている人もいる。 この人はだいじょうぶだろうか、乗り過ごしてないだろうかと心配になる。 また、手に缶ビールを持って乗車しているサラリーマンも多い。 通勤時間が長いので、家に帰る前にちょっと一息というところだろうか。
籠原ってどこだ
上野を出発してから1時間10分ほどたったところで、籠原という駅についた。 ここで籠原止まりの先頭から5両を切り離す作業が行なわれた。 ということは、先頭の5両に乗っていれば、終点まで乗り過ごさずに済む、ということだ。 これは貴重な情報だ。 ところで籠原ってどこだろう。 調べたら埼玉県熊谷市らしい。 終点まで行かなくて済んだとしても、よく知らないところで降ろされてしまっては途方にくれるだけだ。 どうせなら終点の大きな駅で降りたいという気もする。
それにしても遠い
かれこれ1時間以上電車に乗っている。 新幹線や特急電車の1時間はそれほど苦にならないが、普通列車の1時間はけっこう長い。 駅で停車するたびに扉から冷たい風がぴゅうっと吹き込んでくる。 酔って寝込んでしまっている人は、こんなに長い時間よく目が覚めないなと思う。
眠くなってきた
ふだんであれば、寝ちゃって乗り過ごしてしまわないようにがんばって起きているのだが、今日は乗り過ごすためにがんばって起きている。 いずれにしても、がんばって起きていなければならないのだ。 電車の揺れが心地よくて、眠くてたまらない。 終点はまだまだ先だ。
1時間半経過
上野からじっと揺られて、神保原という駅についた。 埼玉県最北端の駅だそうである。 車内は人がまばらになってきた。 いくら酔っているとはいえ、こんなガラガラの電車でこんな遠くの駅にきても気付かないで寝ていられるものだろうかと思ったが、自分を省みてみると、きっと寝ていられる。 お酒の力ってすごい。