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ひらめきの月曜日
 
勇者気分で胎内めぐり

■リアル・ダンジョン体験

胎内めぐりに足を踏み入れ、ドラクエのダンジョン曲を口ずさむ。

「デーデーデーデー、デーデーデーデデデー」

実はこの曲が怖くてダンジョンに入れず、ドラクエ1のクリアを断念した小学生の頃の私。
あれから約20年、とっくに大人になった私は、リアルダンジョンをクリアできるのであろうか。


胎内めぐりの中は、想像よりずっと暗かった。
ところどころ電球がついているので歩くことはできるが、まわりの様子はさっぱりわからない。
この暗さはまさしくドラクエ1である(注・ドラクエ1はダンジョンが暗い。要たいまつ)。


同行者にフラッシュをONにして写真を撮ってもらったら、あたりが一瞬明るくなった。

……!!

一瞬の光で見えたのは、私のすぐ横にお地蔵様がズラリと並び、壁一面に仏様の絵が描いてあったのだ。

フラッシュなしで撮影すると、こんなに暗い。 フラッシュありで撮影すると、すぐ横に仏画やお地蔵様が並んでいてビックリ。
なぜ私はレミーラ(明かり)の呪文をおぼえていないのに、ここに入ってしまったのか。 壁にたくさん描かれている仏画。タッチに味がありすぎる。

暗くて気づかなかっただけで、洞窟内にはお地蔵様がズラリ、壁にも仏画がズラリ。

フラッシュをたかないとまわりが見えないほど暗いのだが、フラッシュをたいたら、まわりのお地蔵様、仏像、仏画が見えてしまう。
暗くても怖いが、明るくても怖い。

 

 

■誰かいました

洞窟内を歩いていると、行き止まりにつきあたった。
少し広くなった空間の真ん中に、太い柱のようなものが立っている。

何だろうと思って、フラッシュをONにして写真を撮ってみると…。
「ひぃっ」

フラッシュの光に一瞬照らされたのは仏像だった。
大きな木彫りの仏様が立っていらっしゃった。
しかし、ご尊顔が大変怖くていらっしゃったため、小さく悲鳴を上げてしまった

何か大きな物が立ちふさがっているので、フラッシュをたいてみたら…。 これだけでMPが減る思いです。

まわりにも、サイズがバラバラの仏像が無造作に並んでいる。
しまった、囲まれた!?

つきあたりの正面には格子がはめこまれていて、格子の向こうにも無数の仏像が置かれており、オレンジ色の明かりがもれている。
その明かりが、居並んだ仏像の影を床に落とし、ユラユラと揺れている。
まるで仏像が動いているかのようで非常に落ち着かない。


無数の仏像の影が伸びる。今にも動き出しそう。 Aボタンで調べていったらキリがないほど、何かが並ぶ。
広い境内にたくさんあるこの手の仏画、タッチが同じなので誰か1人の作なんじゃないだろうか。


■出口を求めて

まっすぐ伸びるゆるやかな上り坂に出た。
遠い先に、明かりのようなものが見える。
もしかしたらこの先が出口なのではなかろうか。
希望を胸に、坂を上っていく。

しかし、この坂がけっこう長い。
重い勇者コートがジャマで疲れてきた。
何気なくかたわらの柵のようなものに手を伸ばすと、柔かい感触が…。

驚いて手元を見ると、並んでいるのは柵ではなくお地蔵様であった。
柔らかいのは、お地蔵様1体1体が、毛糸の帽子をかぶっていたから。
大変かわいらしいが、お地蔵様の頭をつかむわけにもいかないので、つかまるのはためらってしまう。

 

洞窟のような場所を進む。遠くに明かりのようなものが見えるのだが…。 フラッシュをたいて見たら柵ではなくお地蔵様である。あまり触りたくない。

 お地蔵様にびびりながらも、出口をめざして坂を上っていくと、洞窟の真ん中に少し広い空間があった。
天井からは無数の電球がぶら下がっており、その電球がすばやく明滅しているのである。

じっと見ていると、目がチカチカしてきて、熱心に見つめていると倒れてしまいそうな危険な演出である。
この電球の意図するところは何なのか…。 その真意ははかりかねるが、とりあえず写真撮っとこう…また仏像でもあるんだろうな…と半分覚悟してフラッシュをたいたら、見たことのないカラフルさにビクッ!

予想通り、仏像が並んでいたのだが、ここの仏様は彩色されており、表情や衣装まで凝っていらっしゃる。
少し困ったような表情をなさっているが、こっちの表情は半ベソだ。

とことん私の予想の上を行く胎内めぐりである。

洞窟の途中で、少し広くなっている場所に出た。激しく明滅を繰り返し、落ち着かない。 フラッシュ撮影してみたら、カラフルな仏像がズラリと並んでいた。表情が豊か。


■出たよー!

坂道をのぼりきると、まぶしい日光がもれてきている。
やったー!
胎内めぐりの外に出られたよー!

今写真を見ると、出口に置いてある石がとても摩訶不思議な形をしているが、この時の私はまったく気づかなかった。
無事、明るい場所に出られたという喜びで心がいっぱいである。
胎内めぐりは、想像以上に怖かった…。
実際のダンジョンに挑む勇者ってすごいなぁ。
そして、お日様の光って、素晴らしい。 そんな世の中の心理がわかってきた。
さすが胎内めぐり体験である。

胎内めぐりも終わったし、道路を歩いて戻るか…と思いきや、勇者の冒険はまだ続くのであった。

「ダンジョンから脱出!」心からホッとしたが、しかし。



 

 
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