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ひらめきの月曜日
 
勇者気分で胎内めぐり
こちらがそのお寺。ただの名刹ではない。


愛媛県出身の方々から、「RPG気分になれるお寺がある」という噂をかねがね聞いておりました。

などと知らないフリをしておりますが、実は2年前にそのお寺に観光で行きまして、非常にインパクトがあったため、再びそのお寺に行ってみました。

…勇者気分で。

なお今回は非常にゲームネタ、特にドラゴンクエストネタが多く、ご存知ない方、申し訳ありません

(text by 加藤 和美



■冒険の前には準備を忘れずに

以前、勇者気分で塔にのぼったり樹海に行ったりしていたが、今回はお寺である。

お寺といえば和風のイメージで、いわゆるRPGのような西洋風ファンタジーの世界とは相容れないように思えるかもしれないが、こちらのお寺には「胎内めぐり」がある。
胎内めぐりというのは、洞窟などを仏の胎内に見立てて、暗闇の中を歩くことによって参拝するという一種の霊場なのだそうだ。
暗闇の中を歩く…まさしくダンジョン!


また、ただ洞窟があるから来たというわけではない。
このお寺には、境内にさまざまな展示物や銅像が数多く設置されており、一種独特の雰囲気を持っていて、それがいちいちRPGっぽいのである。
それはおいおい、紹介していきたいと思う。


さてこのお寺、名前を石手寺(いしてじ)と言い、名刹である。
四国八十八ヶ所の51番所にあたり、開基は728年だというので、今年で1280年の長い歴史を持つのだ。

石手寺に着くと、四国八十八ヶ所の霊場でおなじみ、小坊主さんの立て看板が出迎えてくれた。

このあたりは、いわばRPGの城下町だ。
町の入口に立っている人に話しかければ、昼だろうが夜だろうが情報をを教えてくれる。
山門をくぐる前からRPG気分である。

どう見ても白魔道士みたいな格好ですが、いちおう勇者ということでお願いします。
「ここは いしてじ だよ」
2年前にもここで会った犬。もしかして犬の姿にされた、どこかの姫なんじゃないか。


■冒険の前には準備を忘れずに

入口付近には村人だけでなく、お土産物屋、仏具屋、食べ物屋などが並んでおり、このあたりもRPGの城マップのようだ。

冒険に出る前には、装備を整え、HP(体力)とMP(精神力)をじゅうぶんに回復しておきたい。 脇の仏具屋を見ると、装備品(お遍路に必要な装備)一式がすべて売られていた。
愛媛県や香川県では、サービスエリアやお土産物屋など、あちこちでお遍路セットが売られていた。
どこかで「あ、お遍路行こうかな」と、フッと思いついても、すぐ八十八ヶ所巡りを始められそうな、四国以外の人間からしたら想像以上のカジュアルさで売られている。 上から下までお遍路ルックになれたら、気持ちだけでもお遍路さんになれそうだなーとほしくなってしまい、お遍路ルックで固めたマネキンを眺める。 まるっきり、RPGで新しい町に着いたら自分が今持っている装備よりワンランク上の商品がズラリと売られていて、全部ほしくなってしまった勇者の気分である。
また仏具屋の近くでは、石手寺名物「焼餅(やきもち)」も売られていた。
アンコの入った薄皮のおもちを焼いたもので、焼いた皮がパリッとしておいしい。

さて焼餅でHPも回復したことだし、いざ境内へ。

寺に入ってすぐにある、防具屋さん。もとい、仏具屋さん。
「いらっしゃい なにを おさがしで?」
石手寺名物、焼餅。1個100ゴールド。10個で700ゴールド。 お店が並ぶエリアを抜けると、お寺の山門が見えてくる。さあいよいよ冒険の始まりだ…!

■まずマップ確認

石手寺の山門の前に、境内の大きな地図が貼り出されていた。
まず入る前に、地理を確認しておけということだろうか。
このあたり、RPGのセオリーっぽい。

貼り出されていた地図は筆で描かれており、独特の筆致だった。
それはいいのだが、現在地がどこだとか、それぞれの建物についての説明は一切なし。 ところどころが金色に塗られていて、不思議な光を発しているようだが、これは一体…。
すごい宝物でもあるんだろうか。
もしくは強いモンスターのいるダンジョンか。

地図を見たことにより、不安の方が募る。

こちらが石手寺の山門。なんと国宝。
立派な境内の地図を発見。さてどこに行こうかな…。 しかし、地図には何も文字が書いてなかった。見てもわからない…。あの光は何だ。


■オーラを放つ看板

RPGといえば、マップ上にある看板類も、見落とさずにチェックしておきたい。
ああいう看板には非常に重要な情報が書かれているものである。

ゲームのつくり手としても、何かプレイヤーに知ってほしいことがあったら、とりあえず看板か村人のセリフに言わせたりする。
とはいえ、必ずしもプレイヤーが看板を読むとは限らないのも悩みどころである。 しかし、石手寺にある看板に、「見てもらえないかもしれない」という心配は無用だ。

黒々とした墨で、力強いのを通り越して何らかのオーラすら感じる筆使いで書かれた看板は、否が応でも目に入るのだ。

石手寺内の看板や貼り紙に共通して言えるのは、とにかく文字が力強い。
横に小さく「はいられぬ」の文字。もし無断で立ち入ったら、どんなことに。 突如あらわれる「愛媛パゴダ」の案内。看板というか石碑。立派すぎるほど立派だ。
この墨の垂れ具合が怖いが、書いてあることはきわめてグローバル。 2年前に撮影した画像。やはり視点はグローバル。
4年前に撮影した画像をいただいた。常時、世界レベルで救済を主張。

■高いエンカウント率

地図や看板に、早々と圧倒されながらも境内を歩く。

境内は広く、さまざまな建物があるが、特筆すべきは銅像の多さである。
石手寺に置かれているのは個性的かつ、独特の迫力を持つ銅像ばかり。
ふっと顔を上げると、自分のすぐ側に、恐怖すら感じる造形の銅像がドーン。 少し歩けば銅像でドキッ、さらに歩けば銅像でドキッ、というこの感覚…まさしくRPGのマップ上での、敵とのエンカウント(遭遇)に近い。

しかも順を追ってザコから登場ではない。
いきなり中ボスクラスがゾロゾロいる、いや置いてあるのである。

コレどう見ても和風RPGに出てくる敵。
フッと見上げると、こんな顔だもの。 合体攻撃?
お約束の竜もいる。神々しいので、おそらく味方。冒険のヒントをくれるに違いない。「おろかな にんげんよ…」 「ゆうしゃよ このいずみで きずついたからだを いやしなさい」
冒険には仲間との出会いもある。MMOタイプのRPGで所持品ぜんぶ持っていかれたっぽい人と出会った。


■胎内めぐりの入口にたどりついた

さまざまな敵、もとい銅像とのエンカウントを経て、やってきました胎内めぐり。

入口はぽっかりと真っ黒で、中は本当に暗いようす。
この日は他に参拝客も少なく、境内は静かでより怖い。 さいわい、撮影のため同行者がいるので良いが、もし1人だったらかなり入るのを躊躇しただろうと思う。


よっしゃ、入るぞー!
と気合を入れて入口を見上げたら、こっちを見てる人(お地蔵様)がいてビックリ。
なぜそんなところに…!
まったくもって、油断ならない。

いよいよダンジョン、じゃなくて、胎内めぐりの入口が近づいてきた。
「ここに はいって かえってきたものは いないのじゃ…」 ザッザッザッ。

 

 
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