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ひらめきの月曜日
 
古ビル探訪

続いてはちょいと有名な銀座のビルへ

古ビル愛好家でこのビルを知らない者は居ない。その名前は銀座・奥野ビルである。


奥野ビル

1932年(昭和7年)竣工
満75歳

1932年当時の出来事=五・一五事件が起こり、首相の犬飼毅が暗殺される


なんと今年で75歳のビルである。竣工当時の出来事を書いて歴史を感じてもらおうと思ったが、もはや歴史上の出来事と肩を並べる出来事である

ここは古いビルに興味を持って調べていくと、誰もが通過するビルであり、古ビル界の聖地だと言えるだろう。銀座の端っこに位置したことが幸いしたのかその後幾度となくやってきた再開発の波を乗り越え、今日にいたるまでずっと林立してきたビルだ。おつかれさまです。そして、ちょっとお邪魔しますよ! (ビルの管理人には了承済み)


 

ここの魅力はなんと言ってもエレベーターである。手動式で蛇腹を自分で開く。これがけっこう重たい。しかも、現在では解消されているが、長らく1階、6階、7階にしかエレベーターがとまらず、5階以下の人は階段を余儀なくされていた。さっそくエレベーターに乗って中を拝見させていただこう。


 

本当はすごくたくさんのテナントが入居しているビルである。場所が銀座なので、ギャラリー、アトリエ、法律事務所などの利用が多く、部屋はほぼ満室状態と言っていいだろう。しかし、撮影に辺り、テナントや住居などの表札や看板が入らないように撮影しているため、上のようにちょっと暗めの、怪しめの写真が多いが、非常に活気あふれるビルである。各階からは笑い声や話し声が聞こえ、すれ違う人々で頻繁に挨拶が交わされている。


 

このビルはちょっと変わった構造になっていて、中央部に階段が2箇所設置されている。それぞれの階段は出窓を通じて繋がっており、向こうの階段の様子が見える。かつてはここで、住民が醤油を貸しあったり、回覧板をまわしたりしたのかもしれない。


 

窓から天井を見上げる。こちらは建物の裏にあたり、非常に荒涼とした風景が僕らを魅了してやまない光景である。こういう街に生まれこういう街で育ったのだから、雑居ビルの裏手に郷愁を感じずには居られない。

銀座に原風景を見た昼下がり。

もういっちょ渋谷のビルをご紹介

次はペンキが塗り替えられているのであまり分かりづらいかもしれないが、渋谷のTOWAビル(ルデコビル)である。


TOWAビル

1963年ごろ(昭和7年)竣工
約43歳

1963年当時の出来事=ケネディ大統領暗殺。また64年は東京オリンピック。


今回登場する古ビルの中では若手の物件である。東京オリンピックの前の年なので、全国は建設ラッシュ。だからこのぐらいの年代のビルは東京中のいたるところで見かけることが出来るだろう。ただ、なぜこのビルを取り上げたかは理由がある。このビルの特筆すべき場所、それはエレベーターなのだ。このビル全体を使い、『ル・デコ』というギャラリーを営む島中さんに案内してもらいました。


うちの建物は古い以外はいいことないんですよ。と謙遜するオーナー。味のあるダンディな人でした。

これが件のエレベーター

ボタンは懐かしい形状のもの
これは乗車中の風景。ムキダシのコンクリがカッコイイ。

エレベーターだけでなく階段もカッコイイ。

 

TOWAビルのオーナーに聞いた

――古いビルですね

島中さん(以下敬称略)「そうですね。古いぐらいしかいいところがないんですよ(笑)」

――そんなことはないです。ギャラリーを経営されているようですが古いビルで良かったと思うことはありますか?

島中「アートというものは、立派な館で見るものではなく、もっと日常的に触れてほしい、という思惑があるんです。だから日常的に、決してありがたがらずにアートに触れ合うことができるのがメリットではないでしょうか」

――ありがとうございました

これは丸の内の明治生命館、ここは観覧自由。

古ビル萌え〜

古いビルのどこが魅力なのか、考えてみた。建物にも人間のように性格があると思う。例えば、六本木ヒルズはクラスのおしゃれな男子生徒である。運動神経もあって、勉強も出来る若い男だ。古いビルはどちらかと言えば地味で目立たないかもしれないが、頼りになるし、なんだかんだ言って皆に一番愛される存在だ。僕はそっちがいい。イケイケな社長より安泰な係長に憧れる。そうやって細く長く味わい深く、着実に世を渡っていきたいと思う。

そんな僕の話はさておき、表参道の同潤会アパートみたいに取り壊したりせずに、かと言って重要文化財とかになって変に祭り上げられることもなく、現状維持で居てほしいと思う。実はそれが建物にとって一番幸福なんじゃないだろうか。


 
 
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