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はっけんの水曜日
 
食べごろモモタマナ

あの時は確かに木の皮食ってるみたいな感じだった。

 先週、街路樹の木の実を食べているのがコウモリだということが判明した(参考記事)。あの時「そんなのおいしいの?」と思い僕も同じ実を食べてみたわけだが、正直あまりおいしくなかった。やはりこれは人の食べるものではないのだ。

と、この話を地元の方にしたところ「いや食えますよ」という意見を複数いただいてしまった。どうやら僕が先週食べた果肉の部分ではなく、種が食べられるらしいのだ。

安藤 昌教



モモタマナはどこにでもあるし。

本当に食べられるのだろうか

モモタマナは今が盛りといわんばかりにみっしりと枝に実をつけている。それを狙って夜な夜なコウモリがやってくるわけだが、彼らは果肉の部分しか食べたないため道には食べ残しの種がごろごろ転がっているのだ。コウモリの食べ残し、という点だけ気になるところだが、もしこれが食べられるのならば食料自給率も少しだけ上がるはずだ。

種だってもう本当にごろごろある。

今回は人としてのプライドの壁を少し低くして、コウモリが食べ残したモモタマナの種を食べてみることにした。どういう状態の種が食べごろなのか、そして本当に食べられるのか、知っておいて損はないはずだ。

 

各段階の種を採取。

仁を取り出してみよう

モモタマナは花が終わると一斉に緑の実をつけ、黄色く熟してから落ちてくる。その各段階の実をサンプリングした。コウモリが食べているのは主に黄色く熟した実だ。

左から木に付いている状態のまだ緑のもの。熟して黄色くなったもの。誰にも食べられずに落ちて黒化したもの。コウモリが食べたあとのもの。これらの種をそれぞれ食べてみる。

しかしこの種、ものすごく固いのだった。

ハンマーで叩くと。
まず外の殻だけが壊れる。
これが種の中身。

まず必ずハンマーを用意したほうが良い。外側の殻を割ると中から同じような種が出てくるのだが、これが固いのだ。どのくらい固いかというと「石のように」固い。比喩ではなく、ハンマーでたたくとカチンと石みたいな音が出る。そんな植物あるのだ。

ちょっと見えにくいが、下の写真は縦にした種にハンマーを打ち下ろしたところ。割れずにそのまま歩道に突き刺さった。武器になる。

縦にして叩くと。
そのまま道に刺さる。

 

ちゃんと調べました

この固い中殻をがむしゃらに叩いて壊すと中から「仁」と呼ばれる部分が出てくるのだ。これが食べられるらしい。沖縄の植物をまとめた図鑑で調べてみるとモモタマナはトロピカル・アーモンドとも呼ばれるらしく、その固い種子の中にある仁は生でもローストしても食べることができ、アーモンドのような風味があるのだという。

ちょっと前の僕ならばまず食べてから、記事を書く段階で調べるというスタイルだったのだが、最近では知らないものを食べる前には必ず図書館やインターネットで調べることにしている。前にでかい豆を食べたときに(参考記事)友達の生物の先生に「安藤さん、ああいうことしてるといつか死ぬよ」と忠告されたのだ。なんでも食用になっていない野生植物にはびっくりするくらい(人にとって)強力な毒をもつ種類もあるのだとか。僕は成人病の入院保険しか入っていないので野草食べて死んだら後に何も残らない。


石みたいな殻を割ると。
中からこんなのが出てくる。これが「仁」。
緑のはぐしゃっと潰れる。

ともかくモモタマナの種の仁の部分は食用になる、と図鑑にも書かれていた。この木が「ニセモモタマナ」とかでなければ食べても安全なはずだ。

木の枝から直接取ってきた緑のやつは果肉に水分が残っていてハンマーで叩くとそのまま潰れてしまった。乾燥すると固い種子も、若い状態ではある程度軟らかいのだ。仁をつぶさないよう慎重に取り出すと、緑の実から取り出した仁は同じく薄緑色で若い匂いがした。

緑のやつは中身も若い。
各段階の実から取り出した仁たち。

 

不安げに噛んでみると。

いざ実食

かなり苦労して5つの仁を取り出した。一番左から、緑の実から取り出した若い仁、黄色く熟した実の仁、黒化した実の仁、それからコウモリが残した種から取り出した仁が二つ。はたして本当にモモタマナの仁はアーモンドの味なのか。食べてみる。

・・・

今回はローストせずに生で食べているからかもしれないが、モモタマナの仁は噛むとじゅわっと汁が出るほどジューシーだった。その汁にはえぐみも苦みもない。だけど味も匂いも、やっぱり特にないのだ。歯ざわりはカリカリとしていて確かにナッツ系なのだが、アーモンドから比べると風味的にかなり劣る。

うまいじゃん!

と思っていたのだが、飲み下してからふと思い出すと、そういえば鼻の奥にアーモンドの香りが引っかかっている。かすかに、本当にかすかにだが、モモタマナの仁は確かにアーモンドに似た香りを持っているようだ。

これは黄色く熟した状態の実、黒化した実、コウモリが食べ残した種、それぞれから取り出した仁で同じような味と香りが楽しめた。ただ、緑の実から取り出した仁は明らかに青臭く、渋みもあった。やはりコウモリが食べ残した実を拾って食べるくらいが時期的に最適なのかもしれない。

食べられました

モモタマナの「仁」は確かにアーモンドみたいな味がした。そして食べごろの実は常にコウモリが選び落としてくれるので僕たち人間はそれを拾って割って食べたらいいだけなのだ。これぞ共存、すばらしい。沖縄でかじられたモモタマナの実を見つけたらハンマー買ってきて叩いて仁を出して食べるべきだ。なんと後味がアーモンドだから。なら最初からアーモンド買ったほうが早いよ、なんていう人はここまで読んでくれていないと思うのでこれでまとめにしたいと思います。

仁なら食えるよ。

 
 
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