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はっけんの水曜日
 
ある写真家の苦悩(対高校生編)

寝てないそうだ。

 ある日、うちのお店で頭を抱えている男性がいた。写真家の中川さんだ。普段ならばこの人、おやじトーク爆発で同席した女性を黙らせている時間帯なのだが、いったいどうしたというのだろう。聞くと次の日、とある高校の写真部で高校生に写真を教えることになっているのだとか。それは悩む。

今回は中年初期を迎えた男性が、自分の意思とは関係なく(実は僕が紹介した)血気盛んな若者と対峙することになった際に抱える苦悩と、それを乗り越えることで芽生えた若者との心の交流の次第を追った。

要するに面白そうだったので高校までついていってみただけだ。

安藤 昌教



写真家、中川大祐さん。

写真家中川さん

今回講師として高校に招かれたのは写真家中川大祐さん(29歳)。最近女子高生をモデルとして作品撮りをした経験から今回の抜擢となった。

苦悶しながら原稿を考えていた昨日の夜に比べると幾分余裕の見られる表情での登場だ。集合時間にすこし遅れたのは昨日寝られなかったから。いつもは虎と竜の入ったガラの悪いアロハとか着ているのだが、この日はさすがにスーツだった。

こっち撮ってどうする。

学校の駐車場で担当の女子高生に迎えられ記念にさっそく撮影。僕にカメラを向けてくるあたり、おそらく照れ隠しだと思われる。しかしその気持ちもわかる。僕だって今女子高生と話をしろと言われても、何を話したらいいのかわからない。このあとしきりにギャグをとばしていたが、笑っていたのは僕だけだった。

背筋が伸びているのはシャツにアイロンがあてられているから。

校内に案内されるがままについて行く写真家。この時点ですでに静かになってしまっているが大丈夫だろうか。シャツは昨日の夜、自分でアイロンをかけてきた。

学校内はいかにも高校らしいアイテムに彩られていて僕には新鮮だったが、たぶん中川さんにはそれら一つ一つが重いプレッシャーとしてのしかかっていたことだろう。なんだか小声でぶつぶつと繰り返していた。

掲示板に向かいなにやらひとりごつ写真家。
学校っぽいアイテムがいっぱいだ。
顧問の先生も合流し、緊張感がさらに増す。
ここが写真部の部室だ。

 

おお、みんなこっち見てる。

そして緊張はピークを迎える

部室に案内され部員たちと対面した。今回出席したのは1年生、2年生から4名。少数ではあるが、よけいに一人一人の視線が直に向かってくる。完全アウェイのこの状況から、いかにして彼らを自分のフィールドにもっていくか、彼の手腕が問われるところだ。

それではいよいよ講義がはじまります。


 

 
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