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はっけんの水曜日
 
満月の夜、城を撮りに

城、撮影中。


  知り合いのカメラマンから城を撮りに行くが一緒にどうかというお誘いをいただいた。正直僕はそういう固いものの撮影にはいまいち興味がなかったのだが、一つだけ気になった点があった。

夜なのだ。

なぜ城なのか、そしてなぜ夜なのか。疑問を解決すべく、ついて行ってみた。

安藤 昌教



まずはカメラマン海彦さんの作品を見てもらいたい。


海彦さんの作品。

 

フォトグラファー海彦さん。

沖縄の城とは

沖縄の城は「琉球王国のグスク及び関連遺産群」としてユネスコの世界遺産も登録されている。「グスク」というのは「城」の沖縄読みだ。大戦前後に破壊されてしまったものもあるが、今でも残る石積みはその美しい曲線と町を見下ろす誇り高き存在感とが相まって地元では現在でも信仰の対象となっている。

海彦さんの撮影した上の写真も城の一つなのだが、なんだかこの写真、どこかがおかしくないか。城跡と流れる雲が写しこまれているのだが、背景の町には灯がともっているのだ。つまりこれ、明るく写ってはいるが実は夜景なのだ。それにしても城には街灯もないはず。それがなぜこんなに明るく写るのか。

車は満月の光を浴びて、グスクへと向かう。

海彦さんの城撮影スタイルはかなり特殊だ。満月かもしくはそれに近い月齢の、しかもよく晴れた夜にしか撮りに行かない。そのような条件がそろった日でないと上のような写真は撮れないのだという。今回はたまたま満月の夜、天候が彼の取り決める撮影条件を満たしていたため、出動となった。

最初にこうやって夜の城を撮ろうとしたきっかけはなんだったんですか

「いろいろなことに思い悩んでいたんだよね。とにかく暗いところに行きたかった」

・・・そうすか。

「暗いでしょう」

暗いですね。しかしいくら満月だからって夜中だ。普通の人は写真撮りになんて行かないだろう。行き場をなくした彼のダークサイドが彼を夜の撮影へと借り出したわけだが、実際撮ってみると実に自分のスタイルに即した作品が出来上がっていたのだという。好きなものを撮るうちにその手法を極めていったと思われる大山さん(参考記事)とはすこしアプローチが異なるわけだ。

 

月の明るさに驚く

ほどなく今日のターゲットである座喜味(ざきみ)城跡に到着したのだが、車を降りてみて驚いた。予想外に明るいのだ。もちろん昼間の明るさではないが、街灯の類のまったくない城跡でも灯りなしに歩き回ることが出来るほどだ。ちなみにこのときの時刻は午前1時をすこしまわったところ。町の光に慣れていると月の光がこれほど強いということを実感することはほとんどないが、月光によって影さえできるのだ。


明るい月が僕らを照らす。
なんと影ができるほどだ。
どよーん。

さっそく海彦さんの指導の下、城へと向かう松並木を撮影してみた。撮っているときは何も感じなかったが、今見ると明らかに何か出そうな気配だ。

すかーん。

ちなみに昼間同じ場所を撮るとこんな感じ。底抜けに明るく感じる。たぶん海彦さんはその時この明るさに耐えられなかったのだろう。わからんけど、わからんでもない気がする。

きらきら。

松の並木を抜けると城壁が見えてくる。これもまた昼間に来ると光に溢れ、開放的で気持ちの良い空間なのだが。

どよどよ。

夜来ると死にたくなる。そういう中へ、彼は入っていく。今回は僕が一緒だが、普段は一人なのだ。大丈夫だろうか。後ろから着いていきながら一緒に来たこと自体が不安になってきた。

いい月、でてるね。

静けさを紛らわすため、撮影のコツを聞いてみた。

  • ある程度しっかりとした三脚が必要
  • シャッター速度とか感度とかは最初適当に設定してみて
  • 撮れた写真を見ながら調整したほうがよい
  • なのでデジタルカメラのほうが使いやすいと思うよ

このあたりまでは普段写真を撮っている人にはなんとなく想像できることだろう。ここからが夜の沖縄っぽい注意点だ。

  • やばいな、と思ったらやめたほうがいいね(何がやばいんすか)
  • 城に入るときには「おじゃまします」という気持ちを持って(誰に対してですか)
  • 同じく帰るときには「お騒がせしました」という気持ちを(だから誰に)
  • たとえ条件が良くてもあきらめる勇気も必要です(どうしたっていうんですか)
  • 塩とか持っていくよ(もう帰りましょうよ)

ご存知の方も多いかと思うが、沖縄のいわゆる「出る」と言われるスポットは本当に出る。これら城とよばれている場所はかなりの確率でそういうスポットに含まれているので笑えない。そして石垣好きの夜行性といえばハブも忘れてはならない。夜の撮影にはいろいろな要素が含まれてくるのだ。

これらを踏まえて二人で夜の城を撮影してみた。


 

 
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