セメント工場をちょっとしたオードブルにしつつ、メインディッシュへと急ぐ。
不動産屋ならば「駅近物件」と呼ぶであろう好立地条件のすてきな工場だ。山の斜面にびっしりと建て込んだレイアウト美は まさに「山に巣くう」といった趣き。工場というよりは山の神様といった方がよい。思わず手を合わせたくなる神々しさは工場好きのハートをがっちりと捉えて 放さない。
人気のマンガ「ハチミツとクローバー」で主人公が実家へ帰省した折に死んだ父親との思い出の象徴として亜鉛工場が登場するが、まずまちがいなくあれはこの東邦亜鉛がモデルだ。このマンガのヒットはこの工場を描いた御利益だと思う。
■炸裂する「工場鑑賞・自分流」
しかし、ここでも壁鑑賞家としての杉浦さんの自分流工場鑑賞プレイが思う存分発揮される。
この後も立て続けに見せつけられる壁鑑賞への情熱に筆者はタジタジであった。
しかし同じものを見ているのに、こうも見えているものが違うとは。「工場を鑑賞する」という行為自体がニッチなため、なんとなくみんな自分と同じように見ていると思いこんでいたが、実際は人の数だけ鑑賞スタイルがあるのだ。これはとても興味深いことだと思う。
「人それぞれの見方」といえばあの人はどんなだろう?